日常の中にいてくれるからこそ
皆さんは、哲学者であり思想家の柳宗悦が唱えた「民藝」という運動はご存じでしょうか?
「民衆的工藝」の略語なんですが、びっくりするぐらい雑に説明すると、食器や器を美術館の中に閉じ込めるのだけではなく、「用いる」ことで生活の中に浸透していき、「民藝」になっていくのだと説いています。時には生活の中で使うことで、器が欠けることもあるかもしれません。しかし、古くなったり修繕されたりするほど、そのものの固有性を強くしていく。
そして、時に「美」は見えにくくもなると「茶道を思う」の中で柳宗悦は書いています。
「美」を見えにくくするものは大きく分けると3つです。
①「思想」(〇〇主義とかですね)、②「嗜好」(好き嫌いですね)、③「習慣」(惰性や先入観も含まれるかと思います)の3つで、この3つを遠ざけるには「じかに」見ることが重要である、と柳は唱えます。ここでいう「じかに」とは「直に」と書くべきではないか、と批評家の若松英輔は指摘しています。「直に」「観る」こと、つまり「直観」という言葉の違う意味があるのではないかとも。認識的経験と認知的経験のどちらも「直観」の中には含まれます。
「知る」こと「識る」ことが交わることで、「知識」になる。
こういうぶろぐを書いていると、ついついメンバーのイメージを頭の中で固定しまいそうになるんですが、ふと自分の推しを見る時の視点はどうなんだろう、と反省しました。
それから、上記の「民藝」の本を何冊か読んでいるうちに、ふと思い浮かべたメンバーがいます。
3期生の須田亜香里です。
彼女は、テレビという私たちの日常の中に浸透しています。
そして、キャリアも長いのですっかり僕たちの中での須田亜香里像が固まっている状態という人も多いのではないでしょうか?
かくいう僕もかなりだーすー像については、自己啓発本や各種インタビューから固まっている状態ですが、本当にそうか、と思いましてね。
たとえば、テレビのバラエティ番組やワイドショーのコメンテーターとして登場する彼女は非常に雄弁です。それは、言葉だけではなく身体を張ることもあり、その際に彼女の鍛えた身体性でアトラクションをクリアーする。その光景は、彼女の身体自体が言葉になっている気がします。
柳宗悦は「白樺」の編集後記の中で、1924年に建てた朝鮮民族博物館という日本だけでなく、韓国の民藝品博物館設立について触れた時に、他の民族を理解する時に言葉ではなく物を言わない美術から知っていくことが出来るのではないか、と書いています。芸術が国を差別を越えて、人間の争いを止めるためのトリガーになるではないか、と(『未知の友』という言葉が印象的でした)。
「いや、理想論だろ」と言われればそれまでですが、美しいものは時に人を沈黙させじっくりとみせる力があると思います。芸術を通して遠くの他者を知るという意味では、僕個人の話で恐縮ですが世界文学を読んでいる時間や外国映画を観ている間の「沈黙」は、めまぐるしい時代の中でじっくりと考えさせられる時間だと思います。
話を須田亜香里に戻すと、彼女が公演の中で自分の言葉以外の「歌詞」という言葉の中で表現する時の表情。
写真集の中でキューバの美しい景色の中で、魅せる彼女の身体性。
SKE48のMVの中で魅せるシリアスな表情(個人的にはだーすーの演技だけで魅せるもので一番好きな曲はこれ!)。
彼女が日本だけでなく国境を越えて人気なのは、実はこういうところにもあるのではないか、と僕は感じています。
アイドル生活の長い須田亜香里のブログの中で、変化についてこんなことも書いています。
#須田亜香里 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
自分のことを見つけて、ずっと好きでいてくれる人へ。そして、かつて自分を好きだった人へのメッセージが非常に印象に残っていて、夢を語っていた頃の自分と自分の現在地について知って欲しいという思い。
#須田亜香里 須田亜香里のソーユートコあるよね | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
そして、自分を好きでいてくれる人への感謝も語っています。
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そして、須田亜香里の可能性を見つけてくれる人たちへの感謝も。
#須田亜香里 #2018年 #私を動かしたもの | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
今も須田亜香里は変わり続けていると思います。
何故なら、変化を躊躇うことは後退につながると彼女自身も書いているからです。
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個人的には、そろそろまた写真集や演技の仕事が来て、新しい須田亜香里像を発見できないかな、と願望しております。景色や誰か他の人の言葉と融合する彼女の身体や声が、今気になっています。
そして、「直に」メンバーのパフォーマンスやコミュニケーションに触れて、新しい魅力を発見できる場が増えてほしいとコロナ禍の今、改めて思っています。