黙っていてもわかるさ
先日、小説家の朝井リョウさんの新作「正欲」を読みました。
作中では、3人の登場人物の視点からある事件が語られていきます。
一人一人が思慮深く、自分の考えをそう簡単には表に出さないので、時として、周りに誤解されることもあります。だからこそ、自分を理解してくれる人、似ている人と巡り会えた時の喜びはとても大きい。
人間の欲望が関係してくる小説で万人におすすめできる小説ではありませんが、自分が持っている他者への想像力や理解のリーチを考えさせられる小説でした。
自分は本当に相手の事を分かろうとしているか、想像できているだろうか。また、コミュニケーションについて諦めに似た感情を抱き続けていないかとも。
読み終えた後、好きなバンドの一つであるTHE BACK HORNの「キズナソング」という10年ほど前の曲を久しぶりに聴きました。
「そばに居るのに分からないことだらけで、何一つできないけど いつだってそばにいるよ」
文字にすると「そばに居るだけでは?」と思いそうですが、相手に寄り添いたいという思いが感じられます。
ふと、あるメンバーのことを思い出しました。
それは7期生でチームEの相川暖花です。
「誰とWセンターになりたいか?」という質問で自分ではなく、あゆうかの二人を挙げるぐらい控えめな彼女ですが、オモシロのセンスは抜群で、絶対に大喜利が強いタイプではないか、と密かに思っています。
今回は同じチームEのメンバーとの関係性に注目しながら、ほのの像を考えていきたいと思います。
2018年7月9日の倉島杏実ちゃんの生誕祭で読まれたほののからの手紙を読んでみましょう。
「杏実ちゃんへ
13歳のお誕生日おめでとう。
杏実ちゃんと初めて会った日、第一印象は細くてヘビみたいな子だなって思ったのを覚えてるよ。
ちっちゃくて、ダンスが凄い上手で、キッズダンサーみたいな子でした。
同じ研究生として劇場公演をやり始めた時、反省会で凄い反抗してきたり、ほんとに頑固で負けず嫌いで、最初はちょっと苦手だったよ。
でも今考えたら小学生の女の子がみんなの前で発言することって凄い勇気がいることだなって思います。
ほのは杏実ちゃんのこと、本当に尊敬しているよ。
急に任された公演の新しいポジションもすぐ完璧に出来たり、小学生だったのに全チームアンダー制覇をしたり、私には出来ないようなことを何でも出来ちゃうから凄いなって思います。
でも、杏実ちゃんが何でも出来るように見えるのは超能力を持ってるわけじゃなくて、時間をかけて努力した結果なんだろうなって思うよ。
でも、だからこそ頼られ過ぎちゃって大変な時もあるよね。たまには休憩してもいいと思うよ。
いつレッスン場に行っても杏実ちゃんがいて、練習してるから勝手に心配になってます。
あと、杏実ちゃんは悩み事とかないのかなって思ってます。
割と一緒にいる時間多いのに、1回も悩んでるところ見たことないから、一人で抱え込んじゃってないか心配だよ。
私じゃ頼りないかもしれないけど、小さなことでも嫌なこととか悩みとかあったら、いつでも言ってね。きっと解決してあげれるよ。
最初はあまり喋らなかったのに、最近は急に甘えてきたりして、本当に嬉しいよ。
『可愛くない』とか『うるさい』とか『嫌い』とかたまに言っちゃうけど、ほんとは杏実ちゃん可愛すぎるし、大好きだよー。
改めてお誕生日おめでとう。
杏実ちゃんの笑顔がたくさん見られる年になりますように。
相川暖花より」
ううむ、倉島先輩の第一印象がオモシロ過ぎるんですが、飾らない等身大の言葉で書かれた本当に良い手紙でしてね。いつレッスン場に行っても杏実ちゃんがいることを知っているってことは、ほののもレッスン場にいつもいるのでは、と読んでいるこちらが心配になってきます。
小さなことでも良いので自分に頼ってほしい、悩みを話して欲しいと書いた手紙には、気軽に口喧嘩も出来るけれど、倉島先輩のことをもっと理解したいという優しさがあるのでは、と思います。
次に2018年10月22日に行われた相川暖花生誕祭の手紙を読んでみましょう。
書いたのは、倉島杏実ちゃん!
生誕委員会の方、なかなか粋なことをされますね。
「ほののさんへ
お誕生日おめでとうございます。
ほののさんと初めて会った時はひと言も喋らなかったですね。
何回かレッスンをしているうちにちょっとだけ話すようになりましたね。
最初は全然仲がいいって感じじゃなかったのに、今は前日に行きたいって決めて一緒に遊園地に行ったり、ご飯食べに行ったり、めちゃめちゃ仲いいですね。
今こうやってたくさん思い出があって、仲良くなれて嬉しいです。
最初の頃は全然ほののさんのことを知らなくて、年上の先輩って感じだったけど、一緒に研究生として活動をして、凄い新しいポジションとか振り付けを覚えるのが早くて、出演しないイベントのリハーサルのアンダーも頑張っていて、正規公演のアンダーと研究生公演で10日連続の公演とかやっていて、しかも10日間毎iD回ポジションが違うくて、その日の朝に覚えてたりして、ほんとに凄い先輩なんだなって思いました。
私が正規公演のアンダーに出るってなった時、ほののさんは優しく教えてくれました。これこそが先輩なんだな。カッコいい!って思いました。
だから、私も今は先輩なので、ほののさんみたいに優しく教えれたり、仲良くできる先輩になりたいなって思いました。
今は同じチームになれてめちゃくちゃ嬉しいです。
ほののさんは一緒にいて楽しいし、面白いし、可愛いし、好きなとこだらけです。
これからもたくさんお出かけして、たくさんお話しましょうね。
あと、この前カルボナーラについてた半熟卵をこっそり取って、自分のミートスパゲッティに入れてた件は許さないですよ(ここでほののが『許して』と杏実ちゃんの「カルボナーラがパサパサで食べるの大変だったんですよ」という会話があります)。
改めて本日はこんな私にほののさんの生誕祭のお手紙を任せてくださった生誕委員の皆さん、本当にありがとうございます。
こんなに素直にほののさんと話したのは初めてです。
あと、お手紙交換ができて嬉しかったです。いいきっかけをありがとうございました。
ほののさんが大好きな倉島杏実より」
10日連続で公演に出て、しかも、毎回ポジションが違うって凄すぎじゃないですか?
これが出来る現役メンバーって、何人ぐらいいるんでしょう?
ほのの自信が語るほのの像と、杏実ちゃんが語るほのの像では大きく違ってくるな、と感じます。めちゃくちゃ凄い先輩なのに、非常に控えめに振る舞っている気が僕にはします。
だからこそ、応援したいとファンの方は思うのかもしれません。
まずは、後輩メンバーとの関係から見ましたが、次は同期との視点の交差から見て行きましょう。
2019年10月24日に行われた、相川暖花生誕祭での手紙です。
「ほののへ
16歳のお誕生日おめでとう。
SKEに加入してあっという間に4年半経ったね。
私のほののの最初の印象は人見知りで全然話してくれない子でした。オーディションの最終審査終わりにほののに『合格しようね』って言ったら軽く無視されたのを覚えています。
最初はしょうもない喧嘩の繰り返しで、泣きながら仲直りしてたよね。
そんな私たちも少しは大人になったのかな?
でも、こんなに仲良くなれると思ってなかったです。いつもこんな私と仲良くしてくれてありがとう。
きっと、4年半SKEで活動してきて、楽しいことばかりじゃなくて、つらいこと、納得いかないこと、悔しいことたくさんあったと思います。
ほののはあまり正直になれなくて、ファンの方にもなかなか自分の思ってることを伝えられない性格だと思います。
それに人に求められると断れないし、無理してまでも人のためになるならっていつも動いてくれるよね。
きっと私が思っている以上に色んな悩みを抱えてると思うし、それなのにいつもなかなか聞き出せなくてごめんね。
頑張り過ぎちゃうところも、求められたら断れないところもほののいいところでもあります。
でも、無理しすぎちゃだめだよ。少しはちゃんと自分のことも考えてあげてね。
ほののを見てると何を考えているのかすぐわかります。だから、悩みがあったらすぐわかるんだよ。私で良かったらいつでも相談に乗るし、ほののの周りにはたくさんの頼れるメンバーや家族そしてファンの方がいるからいつでも頼ってね。みんないつでもほののの味方だよ。
最後になりますが、今回生誕祭の手紙をこうして任せてくださった生誕委員の皆さん、本当にありがとうございました。普段なかなか言えないことをこうしてほののに伝えられて良かったです。
そして、ほのの。いつでも仲良くしてくれてありがとう。私にとってほののは唯一の同期で、同い年で、同じチームの大切なパートナーです。またいつでも泊まりに行くからね。
あっ、これだけは言っておきたいです。ほのののことを一番知っていて、一番好きなのは私だけです。
改めてお誕生日おめでとう。願いが叶う素敵な1年になりますように。
SKE48チームE 浅井裕華より」
手紙の中にある「ファンの方にもなかなか自分の思ってることを伝えられない性格だと思います」というゆうかたんの言葉は、同じメンバーだからこその視点だと思います。もっと口にしても良いんだよ、というのは、ゆうかたん自身の成功経験から来ることかも知れません。そして、喧嘩しながらも一緒に成長してきた同期に、もっと報われてほしいという願いも手紙の文章からも感じられます。
この年のスピーチでは、「自分の目標は、近くにある目標は言えなくて、ほのじゃ無理だと言われそうで言えないんです。7D2で歌をもらうという目標を叶えたいと思います。もっと正直に色々言えるように頑張ります」とほののは語っています。
次に2019年11月13日の浅井裕華生誕祭で読まれた、ほののからの手紙を読んでみましょう。
「ゆうかたんへ
16歳のお誕生日おめでとう。
同い年になりましたね。
この前、私の生誕祭でお手紙を書いてくれてお返しみたいな感じかな?
なんだかんだゆうかたんにお手紙を書くのは初めてな気がして緊張しますが、普段伝えられないことをこの手紙に書きたいと思います。
ゆうかたんとはSKEのオーディションで出会ってからもうすぐ5年が経ちます。出会った時はお互い小学生だったのに、今はもう高校生で、時の流れの早さにビックリします。
5年前から凄いフレンドリーでしたね。
出会った時のことも、SKEに入ってくらたくさん喧嘩してたことのように思い出します。
何回喧嘩しても「気が合わない!もう嫌い!」って思ってもすぐ仲直りして、気付いたらいつも隣りにいました。
でも、最近ちょっとだけ遠くに行っちゃった気がして寂しいって思う時もありました。
ゆうかたんにとって15歳の1年は大忙しな1年だったと思います。きっと夢だった選抜メンバーに抜擢されたり、センターに立つ機会も増えて、去年よりも輝かしい1年になりましたね。
でも、その分大変で、つらいこともたくさんあったと思います。
活躍すればするほど、悩みは増えて行くと思うし、大変だと思います。
その悩みを私が少しでも解決してあげられたらいいなって思うけど、同じ立場でわかってあげられることができないから私にはわからない悩みもたくさんあるんだろうなって思います。それが悔しいし、寂しいので、私もゆうかたんに追いつけるように頑張らなきゃって思います。
ゆうかたんは負けず嫌いで、強がりで、努力家だからちょっと心配になる時もあります。皆どんなゆうかたんでも受け止めてくれると思うので、もっとわがままになってもいいと思います。たまに休憩することも大切だからね。
改めて、ゆうかたん、お誕生日おめでとう。
自慢話でもくだらない話でも何でも何時間でも聞くので、16歳の1年も隣にいてください。少しでも頼りになれたら嬉しいです。
あと、早く上村亜柚香と3人でお揃いの服着て遊園地行こうね。
大好きだよ。
楽しい1年になりますように。
相川暖花より」
もう、なんというか、ほののの誰かへの優しい言葉に読んでいて涙が出そうになります。
先に選抜になった同期への思い、相手のことが同じ立場で分かってあげられない悔しさや寂しさ。これは、相手のことを理解したい、力になりたいというほののの優しさを感じられる素晴らしい手紙だと思います。
そんな彼女の姿を見ている先輩はきちんといます。
たとえば、この人も。
相川暖花ですー! | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)
頑張っている姿は、ちゃんと見ている人は見ていると、こういうブログを読んでいると感じます。
理解してくれる人たちがいるから、自分も周りの人たちの力になりたくなる。
運営さんには、是非、ほののがこれからものびのびと活躍できる場を守りながら、新しい場も与えて欲しいと思います。
たとえば、コロナ禍でのTwitterでの「どや」シリーズの動画では、ほのののクリエイティビティを感じました。運営さんには是非、彼女にショートムービー系の売り出しをしてみてはどうかと思います。一言もしゃべらずに面白い動画を自力で作れる才能は、言語が必要ない分、世界的にも勝負できるのではと思います。
そして、今回ほのののことを調べながら感じたのは、静かに流れる誰かの夢や目標を冷笑する空気です。でも、ほののには、あなたも夢を語っていいんだよ、応援してくれる人、支えてくれる人は沢山いるんだよ、欲張ってもいいんだよ、君の番がちゃんと来るんだよ、ということを伝えたいです。
2022年もほののが笑顔にした人たちと同じ分、ほののにも笑顔になることが沢山ありますように。