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2022年1月9日日曜日

きっかけ

それは言葉ではごまかせない世界

 慶応義塾大学特別招聘准教授であり、進化思考家の太刀川英輔さんの500ページ以上の大著「進化思考」が面白いです。
 生物が生き残るための進化のコンセプトを9つの「変異」と4つの「適応」に分けて、自分のアイディアをより良いものにするための応用方法が書かれています。
 9つの「変異」中に「転移」という項目があります。
 人でもモノでも、今までとは違うところに移すことで、新しい価値が生まれるのではというものです。
 たとえば、クマノミがイソギンチャクの中に安息の地を見つけるのは生物としての「転移」ですし、地上を走っていた電車を地下道に走らせるのはアイディアの「転移」です。
 人にも同じことが言えます。
 これまで活躍していた場とは違う場所に「転移」することで、新しい価値が生まれる。
 そういえば、2014年に行われた「大組閣」もそういうコンセプトだったなと思います。
 この本を読みながら、思い浮かべたメンバーがいます。


 SKE48のチームK2の荒井優希さんです。


 僕は荒井優希さんが嫌いでした。
 いや、大嫌いでした。
 顔も苦手でしたし、喋り方も苦手でした。
 その根底にあるのは、彼女が持つ得体の知れなさ、分からなさだったのでは、と僕は思います。かつて、オリエンタルラジオがかつてラジオ番組で彼女のことを面白がっていましたが、僕は全く分かろうとしませんでした。
 公式ブログを月末にアップしまくるのも、自分のブログで調べものをする時にも邪魔でした。
 さらに「SKEBINGO!」での「ゴシップ好き」というキャラクターも番組が分かりやすくデフォルメしたことを差し引いても、好きになれませんでした。
 そして、「おしゆき」動画に関しても、一応、付き合いでいくつか見てみたものの、面白さが理解できずに見るのをストップしました。

  そんな僕の荒井優希さんの見方が変ったのは、2022年のお正月でした。

 たまたま、youtubeで「あなたへのおススメ」で荒井優希さんの動画が登場しました。
 それは東京女子プロレスにチャレンジする彼女の様子をまとめたものでした。
 何故、「たまたま」出てきたかを補足しておくと、実はプレロスが好きでして、新日本プロレスとスターダムというブシロード系列の団体を追っているからです。
 逆にノアやDDT、東京女子プロレスというサイバーエージェント系はあまり観ていませんでした。
 どれどれ、と思って再生すると、そこには僕の知らない荒井優希さんがいました。
 

 プロレス新人の女性が、ベテランのアジャコングがいるタッグに挑んでいく。 
 闘いの中で化粧はとれていき、髪も乱れ、表情もアイドルの時とは違う。
 しかし、その目の輝きはアイドル時代の彼女よりも惹かれるものがありました。
 プロレスに関して、「八百長だろ?」とおっしゃる方がいると思います。
 世界最大のプロレス団体WWEはスポーツエンターテイメントと称して、ストーリーがありハリウッド映画に携わった脚本家チームを入れていることを公表しています。
 じゃあ、何故、多くの人が会場に足を運び、世界中の人が配信で熱くなるのか?
 そこにある「痛み」や「感情」は本当のものだからではないか、と思います。
 本当は避ければ良い相手の技をわざわざ受け、会社からのプッシュを受ける同期や後輩へのジェラシーを感じる。この辺りの「感情」は、どこかアイドルと通じるものもあるかも知れません。

 気づけば僕は、荒井優希さんを応援していました。
 

 それは不思議な感覚でした。
 プロレスを観ていれば観ているほど、選手の「格」を意識させられます。 
 この選手はベテランだから「格」を落とさない方が団体的にいいから、新人には負けさせないだろうな、とか、この選手が負けるんだろうなあ、という予想をしてしまいます(逆にこの予想ができない試合が面白いんじゃないかと考えています。過去の試合では『中邑真輔対桜庭和志』とかですかね)。
 おそらく、プロレス歴の浅い、荒井優希さんが勝つ見込みは低い、でも、彼女に負けて欲しくない。
 相手の打撃や投げ技に表情を歪めながらも立ち向かう、しかし、最終的には彼女のチームは負けてしまいます。

 試合はおそらく30分もなかったと思いますが、僕の心は大きく動かされていました。

 

 「SKE48」というパッケージの中では、嫌悪感すら抱いたメンバーに何故、心を動かされているのか?
 「プロレス」という場に移すことで浮き上がってきたものは何か。
 荒井優希とはどんな人なのか?

2021年6月8日の彼女のアメブロを読んでみましょう。

 荒井優希 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 プロレス界の注目度とプレッシャー、自分に任されていることと練習量、アイドルの自分とプロレスラーの自分、様々な葛藤を感じながら、彼女はチャレンジしていたんですね。
 特に練習に対する姿勢のところとか、まさにSKE48イズムを感じますし、こういうのが自分は好きだったなあ、としみじみ思いました。
 アイドルとしての自分についての考えとプロレスという新しい場についての考えは、まさに「進化思考」における「転移」だと思います。

 彼女の努力は身を結び、見事に東京スポーツのプロレス大賞の新人賞を受賞します。ノミネートされた現役のプロレスラーたちをなぎ倒してです。個人的にはスターダムの上村さん(元バイトAKB)が来るかと思っていたので衝撃でした。

 「アイドル」という物差しで荒井優希さんを拒んでいましたが、それはたった一つの尺度であり、新しい尺度で見ることで全く違う魅力が見えてきた気がします。

 ううむ、これは今まで彼女について考えることをしていなかったんですが、いよいよ彼女について深掘りしていくタイミングが来たかも知れません。
 というわけで、2022年は荒井優希さんについて考える連載も開始したいと思います(6期生鎌田さんを考える連載も続ける予定です)。

※僕が心を動かされた動画はこちら!



 ※苦手だった鎌田菜月さんについて考えていった連載はこちら!

月刊 鎌田菜月について考える|栄、覚えていてくれ|note