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2021年7月3日土曜日

他者と誠実に向かい合うこと

 さあやの視線


  

 先日、「三島由紀夫対東大全共闘 50年目の真実」というドキュメンタリー映画を観ました。


 こちらは、東大の900番教室で左翼的東大生1000人と右翼的天皇主義者であり文豪の三島由紀夫の議論と13人の当事者の証言を元に、作られた映画です。
 この映画の中でフランス文学者で神戸女学院大学名誉教授である内田樹さんは、「三島由紀夫は一言も相手に対して、困らせてやろうとか、相手を追い詰めてやろうとか論理的な矛盾をついてやろうとか言っていない、誠実に向き合おうとしていた」というところが印象的でした。
 人と人の間に存在する「言葉」が通じ合う関係の中で、次第に立場は違うものの目指すものは同じだったのではないか、と誠実に「言葉」を通してお互いを認め合うプロセスは、本当に勉強になりました。そして、それとは逆に自衛隊の駐屯地で彼が絶望した原因の一つとしては、東大で感じたような「言葉」による通じ合いがなかったからではないか、とこの映画を観ると感じました。
 僕自身も近頃のインターネット空間で広がっている「論破」という文化にうんざりしていて、論理的にきちんと道筋を立てて相手の論を上回る実証をしなくても、論破しているように見せる技術はあります。たとえば「おおまかにはAである」ということの議論をしている時に「Bという例外がある」ということを持ち出しても「おおまかにAである」立論を崩せないのに「B」を提示した方が頭がよく見えることもあります。そもそも論理の厳密性という観点にたった時、これは正しい「論破」なんでしょうか?僕は最近、こういう人をなるべく相手にしないようにしています(たとえそれが近しい人であっても)。むしろ、一緒にテーマについて悩んだり、間違っていても自分なりの考えを提案したりする人達と付き合っていきたいと思っています。


 さて、話を戻しましょう。
 この議論の中で、様々なテーマが飛び交います、個人的には「天皇とは何か?」とか「何故、国と自分を結び付けることに快感を覚える人がいるのか?」とか「何故、三島作品は一瞬の快楽を目指している人物が多いのか?」とか、書き出したらきりがないんですが、僕は全体を通じて、「誠実なコミュニケーションを通せば、全く違う他者との理解も成り立つ」ということでした。
 このドキュメンタリー映画の中では異なる立場の人間同士での理解でしたが、じゃあ、人間以外ではどうでしょう?

 SKE48の9期生、入内嶋涼がその答えを教えてくれます。
 彼女は、動物愛に溢れているメンバーで、飼っている猫ちゃんたちの可愛い写真も素敵なんですが、出会いまでのエピソードも素敵でしてね。詳しくはこちらのブログをチェック!

✓ 入内嶋 涼 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 「ハッピーさん」の名前の由来が素敵ですよね。ハッピーさんのお世話についてのことや、自分で働いたお金で生き物を飼うというのは、とても読み応えがあります。誠実に向き合うことで、相手も少しずつ分かってくれるというのも良いですね。
 さらに、彼女が飼っているカブトムシに関するブログとても素晴らしいです。

✓ 入内嶋 涼 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 猫と比べると、カブトムシの方が意志の疎通が難しそうですよね。
 それでも小学4年生の少女は、じっと見つめて自分とは全く違う時間軸を過ごす虫とのコミュニケーションをとっていきます。最初はうっかりストレスを感じるようなコミュニケーションを取る不器用さも良くて、そこから徐々に愛情を注いでいき、命の儚さや尊さを知って行くという体験が本当に素晴らしいです。

 さらに、彼女のカブトムシの幼虫ちゃんたちに関するブログも素晴らしいです。

✓ 入内嶋 涼 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 最初に出て来る写真を見したら、うわっ、と思われるかもしません。しかし、さあやが、幼虫ちゃんたちを世話する過程や、穴に潜った幼虫ちゃんたちへかける声を読んだ上で、もう一度同じ写真を見ると小さな価値転倒が起きた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。その背景には彼女の生き物と誠実に向き合う姿勢だと思います。人間と違う時間軸で生きるカブト虫たちは、きっと彼女に違う時間軸や価値観の持ち方を教えてくれるでしょう。それは、ひょっとすると、メンバーやファンの皆さんとのコミュニケ―ションにも反映されているのかも知れません。

 Twitterでたまに出て来る同居人たちに関するツイートも毎回、見る度に心がほっこりします。


 


 最後のツイートが印象的で、多分、虫によっては「キャー(怖い無理)」という見た目の種類の虫もいるでしょう。僕なんかも見た目が苦手な虫が居ます。でも、「キャー(可愛い)」と思える視点を持っている彼女の本質を見る素晴らしさは決して「カワイクナイ」ことはないと思います。むしろ、さあやのブログを読むことで、カブト虫の幼虫に対する価値を少し変えてもらえました。彼女のその視点はとても大切な視点だと思います。「怖い無理」ではそこで終わりの気がしてしまいます。
 そんな風に生き物の見方が変わる人が少しずつ増えて行くと面白いな、と思います。幸い、彼女の生き物好きが少しずつSKE48の外にいる人達にも知られるようになってきました。


 人間とは違う「他者」と触れ合うことで、普段の僕らの暮らしとは違うルールや時間軸を知る。それは、毎日を少しだけ豊かにしてくれるのではないか、と僕は思っています。
 もうすぐ、梅雨が明けます。
 カブト虫たちが夏の夜に元気に羽化して飛び立ち始める頃です。
  さあやもこの夏、さらに羽ばたいて欲しいなと思います。
 カブト虫たちの居る樹液の匂いがする森を思い出しながら、この記事を終えます。