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2021年12月29日水曜日

すてきなわたしたちをつくるもの

 おまかせとカスタム


 ワシントン大学で客員研究員をしている栗原一貴さんが日本とアメリカの西海岸の人々を比較しながら、彼の所属する消極性研究会(SIGSHY)の研究とからめた「理想の国アメリカで凡庸化する私」の中でアメリカのカスタマイズ文化について語っています。
 たとえば、スターバックスのコーヒーやサブウェイのサンドウィッチ。
 それぞれの好みを尊重するために、カスタマイズというものがあり、日本の「おまかせ」とは違うと語っています。
 そして、アメリカでは個人の自主性が重んじられ、社会的な上下関係よりも優先させれるのでは、自分の論を語っていきます。
 それは、なるべく多くの人が不快感を抱いたり、自粛をしたりしなくて良いようにする空気作りがされたデザインのコミュニティが多いことについてです。
 彼の言葉を借りるならば「アメリカは空気が薄い」。
 そう、誰かの為に空気を読むのではなく、自分の考えを外に出してきちんと話し合える文化が(少なくとも彼の周りには)あるそうです。


 先日、吉田恵輔監督の映画最新作「空白」を観ました。
 自分の正義を信じて疑わない強引な人間たちと、自分の心のうちにあるものが上手く伝えられなかったり、そもそも上下関係に萎縮していえなかったりする人間の対比が作品の中に描かれていました。
 劇中、主人公二人のうち二人は、社会的なバッシングを受けます。
 それに対して、身近な人物が「これは無罪だから、駅前とかでビラをまこう!」と宣言し、主人公が「いや、いいですから…」と言うにも関わらず、どんどん運動を始めてしまいます。先ほど挙げたアメリカの「カスタム」文化の真逆、「おまかせ」の物凄く悪い例として作中で機能してしまっているのではないか、と思います。
 「言いたいことがあるなら、ハッキリ言えばいい!」と観ていて思う方もいるかも知れませんが、社会的な上下関係や親子関係が絡んでくるとなかなか難しいところが、まだあるのかも知れません。

 SKE48では、どうでしょう?
 かつての先輩後輩間の上下関係は非常に大きいものがあったと僕は感じます。
 たとえば、1たす1たす1は3じゃないよの3期生集合回の動画なんかでは、当時の1期生たちの厳しさについて語られていました。
 この厳しさは、当時、AKB48に追いつき追い抜くためには、公演などのパフォーマンスで差別化をするという牧野アンナ先生の意図(映画「アイドルの涙」参照)があったからこそだと思います。
 ただ、これが悪く作用してしまった結果、一部の先輩メンバーが「怖い先輩」になってしまうことになりました。いや、引き受けてもらうことになったと書いた方が良いかもしれません。
 体育会系が好きな方は、それでも良いかも知れませんが、先輩が言うことは疑問が多少あっても守るというのは思考停止になって、完全に「おまかせ」状態なんじゃないかな、という疑問もわいてきます(繰り返し書きますが、そういうのが好きな方はごめんなさい)。
 かといって、反論を言うことも勇気がいりますし、関係が壊れるかも知れません。
 それなら、どういった環境づくりをしていけば良いでしょう?

 その答えを見せてくれたのは、SKE48の6期生、鎌田菜月さんでした。
 彼女は先日行われた6期生がリーダーを務めるユニット別の対抗戦で、セットリスト作りについてある工夫をしました。
 まずは、SKE48公式チャンネルに挙げられた「アフタートーク」動画の7分30秒頃から9分頃までを鎌田さんの発言に注目してご覧ください。


 動画内でユニットへの希望について、下記の2点を挙げています。

① みんなに耳をつけたい

② 1曲目はみんなで立ちたい

 さらに、「最後まで本人たちの意志をなるべく優先しました」と鎌田さんは語っていますね。
 実はTwitterのスペース機能を使って、公演が終わった翌日の夜ぐらいにユニット公演のセットリストについて熱く語ってくれていたんですが、アーカイブに残らないことを忘れていて、まあ、聴くだけ聴いておいてまたブログに書く時に聴き返せば良いや、とゆるーく聴いていたんですが、その中でも当初選んでいた曲よりも、メンバーたちの希望に沿って決めていったということを語っていましたね(もし、記録されている方がいらっしゃったら、是非、再度ご確認ください)。

 この鎌田さんの方針、後輩達はどう感じていたんでしょうか?
 まずは、平野桃菜さんのアメブロを読んでみましょう。

平野百菜♪ユニット公演 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 ううむ、まずはグループラインでみんなから意見を集め、そこで言いにくかったら、個人の方に連絡してくれても良いという二段階の意見方法で、発言への抵抗感を減らしてくれていますね。
 「みんなに気をつかって」と後輩が感じるぐらいですから、きっと言葉選びなどにも配慮があったのではないかと思います。
 そして、普段はチームも期も違うメンバーたちが、同じ目標に向けて進む時に、「おまかせ」ではなく「カスタマイズ」をみんなでしていくことで、素晴らしいセットリストとパフォーマンスが生まれたのではないか、と思っています。

 これまで鎌田さんはどちらかというとソロプレイヤー的に活躍していくタイプという見方を僕はしていました。しかし、今回のユニット曲特別公演を経て、僕の中で一つの価値転倒が起こりました。
 それは、ひょっとすると、彼女は新しいタイプのリーダー適正があるのではないかということです。


 丁度、今朝、文庫版の「ナナメの夕暮れ」(若林正恭著)を読み終わったんですが、文庫版のために書き下ろされた部分で、オードリーの若林さんは、自分より若い人たちに示しをつけるようなスタンスで仕事をしていたことが少しだけ触れられます。しかし、一緒に仕事をして成長するのは後輩ではなく自分だ、ということに気づき、人見知りで世の中で良いとされているものを疑っていた自分のような人が喋りやすくなる、楽しんでもらえる、そんな雰囲気を作っていきたい、考えを変えたるようになったと書いていました。
 そのスタンスの根本には、芸能界にうまく馴染めなかった昔の自分の傷があったとも書かれていました。

 完全にここからは、僕の推測ですが、鎌田さんにもかつて世の中やカギ括弧付きの「SKE48」から受けた傷があったのかも知れません。この連載の第1回で書きましたが、僕は鎌田さんが嫌いでした。何故なら、5期生までのSKE48メンバーとは、全く違う雰囲気を持ったメンバーだったからです。ひょっとすると、SKE48の文化と馴染めない部分もあったかも知れません。
 あくまで僕の推測です。繰り返し書いておきます。
 

 ただ、これからのSKE48を作っていく上で、彼女のような価値観のリーダーがいてくれたら、きっとより良い「カスタム」がセットリストだけでなく、グループにも生まれるのではないか、と思っています。
 2021年の最後に、鎌田さんの新しい魅力を感じることが出来ましたが、2022年はいったいどんな一面を見せてくれるのか、はたしてこの月一連載はいつまで続けるのか、僕にも分かりませんが、1年以上見ていても、新しい発見があるので、きっとまだ連載は続いていくと思います。


2021年12月26日日曜日

水を運べる人

また守ることと戦うことジレンマは終わらない

 元サッカー日本代表の鈴木啓太さんは、現在、アスリートの腸内環境を研究開発する企業の経営者をしています。恥ずかしながら、サッカーはあまり詳しくはないんですが、あるビジネスサイトで彼の紹介があってから、彼のことが気になり始めました。
 彼のyoutubeチャンネルをチェックしていると、中村俊輔選手との対談動画がありました。
 その中で、オシムジャパン時代の話が出てきまして、オシム監督が求めるものとして、「水を運べる人」という表現が登場します。
 簡単に言葉の意味を説明すると、「点を取るために献身的に守備に周って相手のボールを奪い、パスの出し手になる選手」であるということです。
 いや、そんなことかよ、と思われるかも知れませんが、鈴木啓太さんと中村俊輔選手の対談を聞いていると、一番フィールドで動かなければいけないし、ベンチでも選手を鼓舞できる存在、チームのカラー作りにも重要になってくるということが見えてきます(実際に中村俊輔選手の話を聞いていると後々のキャリアにも影響しているのではと感じます)。

 SKE48の歴史の中で「水を運べる人」と言うと、皆さんは誰を思い浮かべるでしょう?

 僕が思い浮かべたのは、7期生の片岡成美さんでした。
 彼女といえば、劇場公演でのスクランブル出演を思い浮かべる方が多いかも知れません。選抜メンバーたちが外のメディアで活躍する中、劇場公演という秋元康の言葉を借りるならば「戻れる場所」をずっと守ってきました。彼女がいるから安心して攻めていける。もし、トラブルがあっても彼女が助けてくれる。そんな頼もしさが彼女にはあったのかも知れません。
 しかし、それはまだ表層的な理解のような気がします。
 彼女のことを理解していく為に、公式ブログを洗おうと思ったんですが、残念なことにもう残っていません。
 そこで、メンバーの目から見た彼女の姿をヒントに考えていくことにしました。
 

 まずは、2018年3月16日の彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「なるぴーへ

 お誕生日おめでとう。

 まさか、私がお手紙を書かせてもらえるとは思ってなかったし、なるぴーもビックリすると思います。

 でも、きっとなるぴーのファンの皆さんがなるぴーのことを思いながら決めたことだと思うので、私も思いを込めてこの手紙を書きます。

 なるぴーは歌もダンスもしっかりできて、普段はとっても静かで、大人しくて、お利口な子の印象です。よく言う、手のかからない子って感じかな。
 
 急なアンダー出演にもよく遭遇してるけど、しっかりとパフォーマンスする姿は頼もしいなと思っています。

 ただ一つ、とても気になっていることがあります。なるぴーがチームK2に昇格してどんな思いでいるのか、凄く気になっています。

 大人しいし、人見知りなのかな。あまり自分から先輩に話しかけるタイプではないのは凄くわかるから、賑やかな先輩が多いチームK2でどんな風に輪に入ったらいいのかなって、もしかしたら思ったりするのかなって。

 よくファンの方にも『なるぴーをよろしく』『なるぴー大人しいからたくさん話しかけて』と声をかけられます。私が話しかけてみると、いつも返ってくる言葉は『はい』まだ遠慮がちなのかな?って思いました。

 でも、そんな『はい』しか言わないなるぴーが少し前に公演でちょっかいをかけたら無邪気な顔を見せてくれました。それからは目が合う度に思いっきり笑ってくれるようになった気がしてます。私にはそれが凄く嬉しいです。

 正直、私はあんまり自ら後輩に声をかけません。先輩から声をかけるのは簡単だけど、後輩自ら勇気を出して絡みに行くのがその子自身のためにもなるって思うの。私も先輩に話しかけられなくて、たくさん後悔したからこそ思うことです。

 だから、K2に昇格してきた後輩は基本、そんな感じで来るのを待ちます。こっちゃんやあやめろもそう。二人も最初大人しかったけど、今ではたくさん喋ってます。だから、なるぴーにも自分の殻を破って、頑張って先輩に自分から絡んでほしいと思う。

 いきなりは難しいと思う。

 そんななるぴーに朗報。

 チームK2はプライベートで遊ぶこともあるチームです。去年の春にはピクニックに行きました。だから、今年もピクニックに行こう!

 みんなで担当を振り分けたりして、ご飯持ち寄って、鬼ごっこしたり、ドッチボールしたりして1日を過ごすの。だから時間をみつけてみんなで行こうね。

 人数の多いチームK2は時には競争しなくちゃ勝ち取れない椅子があります。ポテンシャルが高いなるぴーには闘争心を持って頑張ってほしいです。

 自由に楽しむなるぴーの姿が見れるのを楽しみにしてます。

 お誕生日おめでとう。

 チームK2リーダー・大場美奈より」

 大場美奈という人は、本当に観察力や洞察力が高いなと思わされる手紙ですね。
 新しく来た仲間にウェルカムの態勢を作り、彼女が先輩たちにアプローチしやすい環境を作ろうとしているのが、手紙からも分かります。
 この大場美奈の姿勢は、すぐになるぴーにも浸透していきます。
 それが分かるのが、2018年11月8日に行われた8期生の大芝りんかへ送った手紙です。

「りんかたんへ

 お誕生日おめでとう。
 
 SKEに入ってから好きになった先輩や、どんな先輩になりたいかというMCのお題で私の名前を挙げてくれたことがあるりんかたん。こんなコミュ障代表みたいな私をフレンドリーな先輩だと言ってくれるのはりんかたんだけです。

 出会ってもうすぐ2年。入った時期は違うけど、一緒に研究生として活動してた時に仲良くなって、昇格した今、K2の中では一番一緒にいる時期が長いよね。
 
 何事にも積極的というわけではないけど、常に自分の考えを持っていて、周りに流されない、意外としっかりしてて、行動もある、まだちょっとよくわからない部分もあるけど、言葉では表しがたい魅力をたくさん持っているメンバーだと思っています。

 昇格したばっかりの時は絶対不安でいっぱいだったと思うけど、最近二人で「K2楽しいね」って話せるぐらいになったよね。

 先輩が可愛かった話とか『今日この先輩と写真撮った』とか『この曲で、ここでこの先輩と絡んだ』とかお互い報告し合う時間はとっても楽しいし、りんかたんが楽しそうにしている姿を見るのも私の人生の楽しみの一つです。

 昇格発表があった時は私は驚いたけど、今りんかたんが楽しめているのは他の何でもなく、りんかたんの努力の結果だと思うし、素直に尊敬しています。

 りんかたんは覚えているかわからないけど、まだ二人とも研究生だった時、『同期や先輩に言えないことなどもしあったら、よければ相談してください。答えが出ないこともあるかもしれないけど、りんかも一緒に悩みます』って連絡してくれたことがあったよね。私はそれが今でも忘れられません。

 私もりんかたんが困った時は支えたいです。
 もっと私を頼ってほしい。

 K2の8期生はもうすぐりんかたんだけになってしまうけど、私が同期のような一緒に安心できる存在になれるように頑張るね。

 今回お手紙を書かせてくださった生誕委員の皆さん、ありがとうございました。

 素敵な1年になりますように。

 片岡成美より」
 
 研究生時代に自分に苦楽を共にした後輩へ、今度は先輩として「もっと私を頼ってほしい」と語れる態勢が彼女の中に生まれていったのではないかと思います。
 そして、研究生だった8期の後輩たちからすれば、7期で研究生に残った先輩たちは、先輩という要素だけではなく、どんどん先にアンダーに出て結果を出していくロールモデルだったのではと僕は思います。
 もう一通、8期生の後輩になるぴーが送った手紙を読んでみましょう。
 2018年10月17日の石黒友月の生誕祭で読まれた手紙です。

「ゆづへ

 15歳のお誕生日おめでとう。

 ゆづにとってこの1年はどんな1年でしたか?

 ライバルでもあり、仲間でもあったメンバーの卒業が続き、きっと不安な気持ちでいっぱいだったよね。

 『青春ガールズ』公演の他に各公演のバックダンサーや一人MC、ときにはアンダーにも出演し、必死にポジションを覚えてる姿をよく見かけたので、チームSへの昇格が決まった時、私も自分のことのように嬉しかったです。

 でも最近はゆづを見て、色んなことを感じています。昇格したからには遠慮せず、でも初心を忘れず、正規メンバーとしての自覚をもっと持っていってほしいっていうのが本音です。

 ゆづはもっともっとできる。ずっと近くで見てきた私が言うんだから間違いないです。

 SKEに入って来たばかりの時、なかなか研究生公演に出れなくて悔しいはずなのに、毎回見学に来て、反省会では意見を言ってくれて、ケータリングは出演メンバーじゃないからってどれだけおかずが余っていても、みんなが何回も『食べなよ』って言っても白米だけを食べて帰って行ったゆづ。あの時のゆづがとってもかっこよくて、私は好きでした。

 先日行われたリバイバル公演や昇格してからのS公演でたくさんの先輩にアドバイスをもらったと思います。

 もし、今の自分に満足してるなら、それは間違ってるよ。同期も多くて公演に出れる機会も多いチームだからこそ難しいかもしれないけど、楽しんでるだけじゃ簡単に上には行けないと思う。

 選ばれたことに感謝することと、選ばれたことに満足するのは全く違うこと。ときにはキラキラスマイルを忘れることがあってもいいんじゃないかな。

 頑張ったかどうかは自分じゃなくて、他人が決めること。私もそうだけど、自分が思ってる以上にもっともっと努力しないといけないと思います。

 ライバルであり仲間。そう言えるようなメンバーがチームSでもたくさんできたらいいね。

 私もゆづに負けないように頑張ります。

 今回お手紙を書かせてくれた生誕員の皆さん、ありがとうございます。

 入ってくる時期も年も違って、一緒に研究生として活動する期間も短かったけど、今も気づけば一緒にいて、色んな話が出来る関係でいられてとても嬉しいです。

 改めてお誕生日おめでとう。素敵な1年になりますように。

 チームK2片岡成美」
 
 昔からSKE48を応援している方なら、ハッとする言葉が手紙の中に隠されていたんじゃないでしょうか?
 そう1期生のあのメンバーの言葉ですね。
 石黒友月という人のポテンシャルを傍で見ているからこそ、まだまだ共に頑張ってほしい、そんな思いが伝わってくる素敵な手紙です。
 後輩たちの活力になるようなメッセージを送れる彼女ですが、そんな彼女を見ていて、同じようにポテンシャルを感じ、「劇場」からその才能を飛び出して戦ってほしいと願うメンバーもいました。
 4期生、都築里佳です。
 2019年3月14日に行われた片岡成美生誕祭での手紙を読んでみましょう。

「片岡成美ちゃんへ

 まずは16歳のお誕生日おめでとう。

 そして15歳の1年はどんな1年でしたか?きっと今まで以上に色んなもどかしい思いをしてきたんじゃないかな。そんなたくさんの思いが溜まりに溜まって出た言葉。

 『何かきっかけがないと劇場だけの人から抜け出せない』

 なるぴーがそうブログで綴っていたのを見た時に昔の自分と何か重なる部分が見えました。

 正直なるぴーみたいに他のチームの公演のサポートメンバーとして出演し続けていたり、たくさんのスクランブルをこなしたりしてきたわけではないけれど、私もずっと劇場だけの人でした。

 歌って踊ることが好きで、SKEに入ったし、正直昔は1チーム16人制だったし、今よりチームでの公演も多かったからそれで満足してた時もあった。

 だけど、そんな中で他の同期や後輩が色々なことに選ばれたりしていて、それが本当に悔しいのにどうしたらいいのかわからなくて心の中でずっともがいているような日々でした。

 だけど、そんな中で他の同期や後輩が色々なことに選ばれたりしていて、それが本当に悔しいのにどうしたらいいのかわからなくて心の中でずっともがいているような日々でした。

 そんな過去の自分と重なるこそなるぴーに言いたいことがあります。なるぴーはSKEのメンバーとして何がしたいですか?将来こうなりたいという明確なビジョンはありますか?何かから抜け出すにはもちろんきっかけも必要だけど、自分が何をやりたいのか、そしてどうなりたいのか明確に意思を持って言葉にして行動することが大事なんじゃないかなと私は思います。

 劇場だけの人から抜け出したいなら劇場以外の物事で『片岡成美と言えば』というイメージを持たせられるようにしなくちゃいけない。私の場合はそれが声優で、何を言われようとも、何度叩かれようともずっと諦めずに『声優になりたい、声優のお仕事がしたい』という言葉にし続けていたから私は声優のお仕事のチャンスをファンの方と一緒に掴み取ることができた。1度だけじゃなく2度も。だから、なるぴーも『片岡成美=これ』っていうのをしっかりと見つけてほしい。

 そして、そのために何をするべきか、しっかり見極めて、見定めて、これからのSKE人生を歩んで欲しいです。

 簡単なことじゃないし、言ったところでって不安に思うかもしれない。けど、それをみつけること、行動に移すことが現状を打破するきっかけに必ずなるし、何よりもなるぴー推しのファンの方は絶対にばるぴーの言葉をちゃんと聞いてくれるし、ちゃんと見ているよ。

 だから、絶対に諦めないで。あなたはここで腐っていい人ではありません。今までしてきた努力、悔しい思い、そして何よりなるぴーのことを応援してくれているファンの方の声援やパワー全部をこれからの活動への原動力に変えて、16歳の1年気持ち新たに前を向いて突っ走って欲しいです。

 頼りにならないかもしれないけど、何かあったら話聞くからいつでも連絡してね。

 なるぴーが更に輝ける1年であることを祈っています。

 本当に大好きだよ!

 4期生なのになるぴーにいじられ呼び捨てにされるぴよすこと都築里佳より。

 P.S 
  
 今回私にお手紙を書く機会をくださった生誕実行委員会の皆様、本当にありがとうございました。

 なるぴーのこと、絶対に支えてあげてくださいね。」

 ぴよすが綴った「あなたはここで腐っていい人間ではありません」という言葉の重み。
 当時、同じことを僕も感じていました。
 どうか、彼女には報われて欲しい。
 その為にも選抜メンバーのように外で勝負するチャンスを、運営は彼女に与えて欲しいという思いもありました。個人的には、大喜利が強そうと思っていました。
 
 2019年12月15日、彼女はSKE48からの卒業を発表します。
 しかし、ここから運命の悪戯が彼女にふりかかってきます。
 そう、新型コロナウイルスによるSKE48自体の活動の休止です。

 ですが、彼女はこの停まっている時間も無駄にはしません。
 秘書検定の取得をめざします。

 
 決して止まらずに前に進み続ける姿勢。それは、他人の為に運んでいた水を少しずつ自分の為に運び続けてきたのもあるかも知れません。

 2021年1月19日に行われた彼女の卒業公演では3枚の手紙が読まれました(本来は2020年12月29日を予定していましたが、延期)。
 先輩、同期、後輩という3名からの手紙で、なるぴーが期を超えて愛されていることが分かります。
 
 まずは、後輩である坂本真凛ちゃんの手紙から。
「なるぴーさんへ

 私がなるぴーさんと初めて出会ったのは、まだお互いがSKEに加入していなかった6年前。趣味の話をするアプリで『SKE好きな人話しましょう』という話題に飛びついてきたのがなるぴーさんでした。
 
 その頃知り合っていたことはSKEに入ってから後に発覚したことだけど、こうしてなるぴーさんと出会えていたのは必然的なことだったのかなと思います。

 なるぴーさんは後輩のことを凄く気にかけてくれていて、一緒に研究生公演をしていた時に先輩だったほののさん、愛菜さんと3人で色々なことを教えてくれました。

 早々と昇格した同期もいたのに私はアンダーとしてなかなか公演に出演することができなかった頃、当時研究生だったメンバー数人に『スタッフさんからこう思われるてるからこうした方がいいよ、やればできるメンバーだと思うから伝えているんだよ』というようなことを連絡してくれた時がありましたよね。

 いつもただただ騒いで一緒に馬鹿なことばかりやっていたので、こんなに後輩のことを見てくれていたんだなって凄く嬉しかったし、公演にたくさん出演しているなるぴーさんからの言葉だからこそ凄く心に響くものがありました。

 それから一緒に公演に出演し、行動を共にする機会が増えるにつれどんどん仲良くなっていて、毎日メールを送ったり、電話をしたりしましたね。

 その話の内容は『映像倉庫のここを見て!』とか、ほとんどがSKEを中心としたAKBグループのことばっかり。今思うと6年前と何も変わってないね。
 
 今まで出会った人の中で私にとってなるぴーさんは一番何でも話したくなる存在で、なるぴーさんと出会えて私は本当に幸せです。

 なるぴーさんはグループを離れることになるけど、新しい道に進んでもなるぴーさんらしさを忘れずに真っすぐ頑張ってください。

 おばあちゃんになっても一緒に喫茶店でモーニング食べようね。

 卒業おめでとうございます。

 坂本真凛より」

 先ほどの8期生二人への手紙を含めて、後輩達へなるぴーが与えた影響は大きかったのではと思います。それは本当に表には出にくいメンバー間で共有されていることで、こうして手紙として残っていることで、僕らはその関係に間接的に触れることができます。
 きっと僕らが知らないなるぴーの活躍がまだまだ眠っているのではないか、と思います。

 次は、同じく2021年1月19日の彼女の卒業公演で読まれた末永桜花さんからの手紙を読んでみましょう。

「なるぴーへ

 約6年間本当にお疲れ様でした。

 一緒に活動を続けていく中でなるぴーからは本当にたくさんのことを学びました。

 加入当初のなるぴーは同期の中で当時中学生だったメンバーと若い子グループにいたのでほとんど接する機会はなかったけれど、数か月後に開催された選抜総選挙のリハーサル期間がきっかけで1日で驚くほどに心の距離が縮まり、お互いのホテルの部屋を行き来するぐらい仲良くなったことを今でも忘れません。こんなに仲良くなれるなんて想像もしてませんでした。

 なるぴーは加入当初から自分が今何をするべきなのかをしっかりと理解していて、同期の中でも早くからバックダンサーやアンダーとしてたくさん活躍をし、シアターの女神として劇場でキラキラと輝き、頑張っている姿はとても素敵で、『私も頑張ろう』といつも思わせてくれました。

 あの頃二人で一緒に公演に出演することがお互いの目標のひとつでしたね。

 なるぴーが私に『こことここを二人で覚えれば一緒に出られるかも』などと色々と考えて教えてくれて、どちらが年上かわからないぐらいしっかりとしていて、ある日私が困った時に颯爽と現れてスカッと解決してくれた日のことを一生忘れません。

 どんな時も変わらない態度で接してくれて、励ましてくれて、信じていてくれて、本当になるぴーは私の大切な恩人でもあります。

 7D2としてAKB48シアターにて出張公演が決まった時、そのステージに私たち二人は立つことができず、出張公演の当日に『今頃みんなAKBの劇場で公演をしているんだよね。私たちも出たかったね』と連絡を取っていましたね。

 あの時は本当に悔しくて、悲しくて、『二人でもっと頑張ろう』と励まし合いましたね。

 そして研究生公演の時も私たちは固定メンバーではなく、2回に1回しか出演ができない交代制のメンバーだったので、同期でのライブイベントにもどちらかが欠けていることが多く、なかなか一緒に出演することができなくて一緒に悔しい思いをしたけれど、でもなるぴーはそこで諦めず、頑張っていたのを私はずっとそばで見てきたからこそ私も一緒に諦めずに頑張る力をもらうことができました。

 どんな時でも自ら『やります!覚えます!』と挙手をしたり、様々なことに挑戦していく姿はとてもかっこよくて、一生懸命前に進もうとするなるぴーは本当に強くて素敵だと思ってました。

 本当に尊敬できる大好きななるぴー。あの頃の様々な経験は確実に私たちを強くし、今なら『あの頃の経験は無駄ではなかったね』と笑いながら話すことができるようになりましたね。

 そして、舞台AKB49の時、たくさんアンダーに出演させていただけて、その月1ヶ月全ての『ラムネの飲み方』公演に出演することができて、『全部一緒に出演できたね』と一緒に喜んだ日のこと、今でも素敵な思い出です。

 今も昔も変わらない態度で接してくれて、真夏の暑さや真冬の寒さも忘れるくらいひたすら二人で笑いながら、一緒に歩いて帰った時間は本当に楽しくて大好きな時間でした。

 そして、今年の初めに私のソロコンサートに出演してもらうことが決まった時、なるぴーの出番のレッスンは先に終わっていたにも関わらず、ずっと私のリハーサルが終わるまで夜遅くまで一人でそばで見守ってくれたこと、本当に嬉しくて心強かったです。

 一人でとても心細かっただけにその場にいてくれるだけでもそれだけでは終わらず、その日に泊まったホテルでもお部屋まで来てくれたたくさんお話をしてくれましたね。

 あの時期、なるぴーにはチームK2での大富豪ライブもあり覚えなくてはならないことが沢山あったのに、その大変さを私には一切見せずに私のことを支え続けてくれたなるぴーの大きな優しさは今でも感謝しかありません。

 なるぴーは私がどんな状況の時でも変わらずに仲良くしてくれた数少ない大切なメンバーです。

 ずっとそばで支えてくれたなるぴーには、一言で言い表せないくらい感謝の気持ちでいっぱいです。

 なるぴーと私はチームが違うため一緒に活動をする機会が減ってしまいましたが、それでも仲良くしてくれて、色々誘ってくれたり、連絡を取り続けて一緒にお出かけできる仲でいられて本当に私は幸せです。

 こんな私と仲良くしてくれて、たくさん支えてくれて、本当にありがとう。

 SKE48を卒業してもずっとずっと変わらず仲良しでいられたらとっても嬉しいです。

 今回私にお手紙を書く機会をくださったなるぴーぽーの皆様、本当にありがとうございました。

 なるぴー、約6年間本当にお疲れ様でした。なるぴーと同期として出会えたこと、一緒に活動できたこと、本当に幸せでした。
 
 なるぴーが卒業したこれからの未来が明るく幸せに満ちた人生でありますように。

 SKE48チームE・末永桜花より」

 ちなみに、この日のことを書いたおーちゃんのブログも良いのでこちらも合わせてどうぞ。

 どちらも読んで、僕は思わず号泣してしまいました。
 映画「アルプススタンドのはしの方」という野球のスタンドで行われる映画に登場するすぐには報われないとしても「しょうがない」と諦めずに、努力を続けることで未来は変わるということを思い出しました。
 そして、おーちゃんのソロコンサートを成功させる為によりそうなるぴーの姿勢が本当に素敵ですね。SKE48という青春を走り抜けた者同士だから分かる悔しさや嬉しさの積み重ねが、手紙に表されていて好きな手紙の一つです。

 最後に紹介するのは、最初に紹介した手紙を書いた大場美奈です。
 「手のかからい子」という印象だったなるぴーは、どう変化していったのか、どう成長したのか、みなるんの言葉で比べてみましょう。

「なるぴーへ

 卒業おめでとう。
 
 なるぴーが卒業を決めた時から随分と時間が経ってしまいました。

 でも、その間もなるぴーはSKE48のために率先してSKE48を支えてくれようとしていたこと、知ってます。私が言うのはおかしいけど、本当にありがとう。

 正直、卒業発表から時が経っているから、このままなるぴーはSKE48にいるんじゃないかなって途中から思い始めていたけど、卒業公演でこの手紙を読んでいるってことは本当に卒業する日が来たんだね。

 口数が多くないなるぴーだけど、楽しいことが大好きで、話すことも大好きで、いつも私たちがうるさくしている楽屋に一緒にいて、バカみたいなことをしている私たちを見て楽しそうに笑ってるなるぴーを見るとなんだか安心します。

 いつも挨拶を絶対しようって決めてるからか、江籠ちゃんに連れて来てもらって挨拶してきたり、不思議なタイミングで挨拶してくるけど、必ず挨拶しようっ思ってるんだなって伝わってくるから私は凄く嬉しかったよ。ありがとう。

 なるぴーといえば劇場公演。今までどれだけ助けてもらったか私たちメンバーはもちろん、スタッフさんにとってもなるぴーだからこそ任せられるって皆が頼りにしてました。

 でも、それってなるぴーにとっては負担だったかなって。どんなに先輩だってつらくて泣いたりするけど、なるぴーは泣いたり弱音を吐く姿を全然見せたことがないから大丈夫かなって。仲のいいメンバーには見せられていたのかな?どっちにしてもなるぴーがステージ裏で努力して頑張ってくれたからK2だけじゃなく、SKEの公演が支えてもらえていたなと思います。

 公演って凄く楽しい分、大変なこともいっぱいあります。それを1時間前に寝てたの起こされて呼ばれて新ポジ出たり、普通のメンバーじゃ怖くて絶対できないことを頑張ってくれてました。

 なるぴーが努力して積み上げてきた信頼は他の人が簡単に真似できるレベルじゃありません。なるぴーのような存在にはなりたくてもなれません。10年以上やっている私も絶対にかないません。

 この先、つらいことがあった時はここでのことを思いだしてみて欲しいです。1時間前に来て新ポジ覚えて、この劇場を満員のファンの人達を不安な思いにさせず楽しい思いにさせられることができる子が片岡成美です。今までやってきたことを誇りに思って、自信に変えてください。そしたら努力ができるなるぴーは何でもできると思います。

 離れるのは寂しいけど、なるぴーがやりたいことをやって、幸せだって思えることが一番です。

 SKE48に入って出会えた私たちは一生の仲間です。何か困ったことがあったら私たちを頼ってね。

 なるぴーがこれから先、幸せになれることを願ってます。

 そしてSKE48に来て、チームK2に入ってくれてありがとう。
 
 チームK2リーダー・大場美奈より」

 「信頼」、なるぴーを表す時にしっくりくる言葉があるとしたら、これかも知れません。
 彼女なら安心して任せられる、彼女なら挑戦してくれるはず、何故ならこれまで彼女が乗り越えてきたことを知っているから。
 しかし、それはみなるんの手紙にもあるように、彼女にとって「負担」にもきっとなっていたと思います。「信頼」があるからこそ、緊急時も任せられる。でも、それは運営の方にとっては安全ですが、彼女にとってはどうなのか?
 卒業公演で踊った「眼差しサヨナラ」や「それでも好きだよ」では、SKE48やファンの皆さんへの別れの気持ちと感謝が込められたセットリストだったのではないか、彼女なりの最後のメッセージではと僕は解釈しています。
 彼女が卒業した日、先輩、同期、後輩、様々なメンバーがSNSで彼女への感謝を綴りました。
 きっと、彼女が運んだ水が、多くのメンバーの心の渇きを潤していたんだと僕は思います。

 2021年12月26日現在、SKE48の劇場公演の人数は元の人数に戻りつつあります。
 研究生たちの昇格も決まり、11期生のオーディションも始まります。
 これから誰が「水を運ぶ人」になるでしょうか。
 そして、「水を運ぶ人」のまま、外に打って出られるように運営の方々がシステムづくりをしていけるでしょうか?
 我々はそんなメンバーに何を返してあげられるでしょうか?

 SKE48に変革が起き、劇場が再び動きだした年の最後の週末。なるぴーのことを思い出しながら、過ごしたいと思います。

2021年12月20日月曜日

SKE48 新世代コンサート2021の感想

さあ、はじめよう僕らの未来を勝ち取る為に


はじめに


 本日、2021年12月19日は中野サンプラザホールでSKE48の8期生、ドラフト3期生、9期生、10期生による新世代コンサートが行われました。
 思えば今年の4月に乃木坂46の4期生のみライブが(5月には3期生ライブ)、8月にNMB48の次世代コンサートが行われ、SKE48にもそろそろそういう試みが来てほしいところでした。
 
 いつものコンサートの感想でしたら、1曲1曲の感想を書いて行くところなんですが、僕のライブ中のメモを見ると、ひたすら「301スゲエ!」とか「るーちゃん、ひな乃、301の3すくみ」とかばっかりなので、少しカメラを引いて書いていきたいと思います。


① セットリストが素晴らしかった


 ライブのセットリストに関しては、過去の良いライブの良いところを抽出して、今のメンバーでアップデートしていく感じで良かったですね。
 特に対決ブロックが凄く良くて、2018年春のガイシコンサートの対決ブロックを思い出す演出でしてね。僕はあのライブの対決ブロックが凄く好きだったので、まさか、若手コンで見られるとは、という嬉しさがありました(1曲目から4曲目が爽やかな曲多めで始まったので、より対決ブロックが際立つ感じがしました)。
 板の上で白黒つけようじゃないか、という演出がSKE48っぽくて好きです。
 しかも、選曲も良くてですね。
 まさかの「根も葉もRumor」のイントロがかかった時は、鳥肌が出ましたよ。
 この曲がAKB48からリリースされた時、「これをSKE48で見たかったんだよなあ」という思いがあったので、まさか若手メンバーたちで見られるとは!
 センターを務めた林美澪ちゃんのパフォーマンスが凄まじく、思わず「こういうのが観たかったんだよ!」とモニター越しに叫んでいました。
 これに対抗する形でUZAを踊る青海さんたちもカッコ良かったですね。こちらの赤堀さんが抜群に似合っていて、「らしくないね」を踊りたかったエピソードを含めて良かったです。
 あと、五十嵐早香推しの僕としては、パフォーマンス中に応援してる早香先生の荒ぶる感じが「ダンケシェーン」の松井玲奈を彷彿とさせて良かったです。

② なーやんが光る


 メンバーで一番印象に残っているのが、なーやんこと、竹内ななみさんの「スルー・ザ・ナイト」衣装とパフォーマンスです。もう彼女は向こう30年ぐらい免税してあげて欲しいです。
 いや、真面目に他の曲のパフォーマンスを観ても、目を惹きつけられました。
 爽やかも色気のある曲もどっちもいける、彼女のポテンシャルをガンガンに感じました。
 MCで2列目に居る時も、メンバーの話に頷いたり、みんなが「アイドル頑張ろう」みたいな時の表情も良かったです。

③ 佐藤佳穂というファンタジスタ


 かつて「16人姉妹」の歌でも自分のキャラクター性について自己分析的に表現していましたが、ファンが期待しているさとかほと、表現者としてのさとかほ、どちらも楽しめるコンサートだと思いましてね。
 「長い夢のラビリンス」での普段の彼女とは違う感じの表情のギャップに持っていかれそうになりました。ううむ、彼女の沼は、底が見えているかと思って足をつっこむと一気に飲み込まれそうだと改めて思いました。
 

④ ユニットブロックも名曲ぞろい


 ライブの見所の一つとしてユニットブロックがあるんですが、今回はメンバーがいつもより限定されるからこそ、「この曲のテイストならこのメンバー」というのが固定しない形で選曲ができるのではないか、と思います。
 先ほど挙げた「スルー・ザ・ナイト」はもう、NHKプレミアム「新・映像の世紀」に残していくとして、僕が惹かれたのは10期生の青木莉樺と伊藤実希コンビの「渚のイメージ」です。
 波の音がし始めた時は、「そうか、次は水着曲だな、ワクワク」と思っていたんですが、アコギのメロディーが。そう青木さんが演奏するギターです。いやあ、だーすーのソロコンサートの時に「渚のイメージ」のアコギ版が聴いてみたかったなあ、と思っていたんですが、青木さんなら出来るということを忘れていました。
 伊藤さんの歌声も良くてですね。「渚のイメージ」の世界観とも非常にあっていたなあ、と思います。
 そして、バキバキに踊れる林美澪さんが、あえて「静」の表現に挑んだ前田敦子さんソロ曲の「Flower」。1歩1歩進みながら歌うところが凄く良かったですね。こういう競技でもちゃんと得点を出しますよ、というところが凄かったです。
 あと、「奇跡は間に合わない」の4人は、衣装ともばっちり合っていましたね。
 しかも一人一人の王子様の個性が違っていて、衣装や身のこなしに差が出て来てそれがまた面白いんですよね。個人的には荒野さんの王子が素敵でした。

⑤ 最近ブログで書いたメンバーがどうしても気になる。


 たとえば、ももたんの元気いっぱいな詩人ダンスや、いとみきちゃんのクリスマス仕様のパレオでのメリハリが効いたダンス。怒った演技が新鮮なよこにゃん、ユニットブロック以外でも大事なポジションを沢山あたえられていた青木さん。昇格のスピーチでも笑顔を絶やさなかった澤田奏音さん(青空の時も笑顔がちょっと離れたポジションからも光ってましたね)。あと、西井さんも凄くダンスが光っていて気になりました。中坂さんのポニーテールを振り乱して踊る躍動感も素晴らしかったです。


⑥ 「SKE48」とは何か?


 個人的に今回は、若手コンサートということで、ニコニコ笑顔の公演になるかと思いきや「ダンスのSKE」を連想させられるコンサートでした。他のグループの曲をやるからこそ、個性が見えて来るなあと対決ブロックでは感じました。
 その個性が、やはり板の上のSKE48は「ダンスのSKE」で勝負してきたし、これからも勝負できるのでは、と思いました。
 長い歴史は時に足かせになるかもしれませんが、「思い出が味方になる」ではないですが、先輩たちの背中で見えなかった最前列から見える大会場の景色を経験したことで、また先輩たちの偉大さを実感するでしょうし、自分たちがどう受け継いでいくかを感じたかも知れません。
 幸い、SKE48には長い歴史があります。アンコールブロックでは、SKE48の名曲たちが彼女たちの背中を押してくれます。すっかり忘れていましたが、SKE48には「12月のカンガルー」という素晴らしい冬曲があるのを忘れていました。
 「SKE48」というグループの歴史を大事にしながらも、新しい価値を彼女たちに作っていってほしいなと思っています。そういう意味ではアンコールブロックは名曲だらけで「温故知新」という言葉を感じました。これからどんどん新しいメンバーたちが歌いながら、文脈を生み出して行って欲しいなあ、とも思っています。


おわりに


 まだまだ書きたいメンバーは沢山います。出来るのが当たり前状態で、実は今回のコンサートの縦軸を進める大役を務めていた青海さんや8期の中で王道曲をさせたら負けなしのるーちゃん。みよまるの安定感、倉島先輩のいきいきとしたダンスとMC。
 10期生たちが昇格し、11期生のオーディションの発表がありました。
 SKE48の物語は進んでいきます。
 できれば半年後ぐらいに今度は11期生たちと一緒に、もっと大きい会場でコンサートをしながら、新しい目的地や価値を見つけていってほしいなあ、と最後の「道はなぜ続くのか?」を聴きながら思いました。どんなコンセプトで未来へ歩いていくのか、誰がその青写真を描くのか、この日がSKE48の新世代の歴史が始まったビギンズナイトになることを祈りながら、この記事を終えます。

   

2021年12月13日月曜日

夢をガラス瓶の中に①

 波が伝えるもの

 本日、2021年12月13日、STU48の派生ユニット「勝手に!四国観光大使」の新曲「夢をガラス瓶の中に」のMVが公開されました。
 まずは観てみましょう。


 ううむ、海を思わせる巨大モニターの映像美とメンバーの躍動感が良い掛け算になってますね。それでは歌詞の世界をじっくりと見て行きましょう。
 
 いきなり主人公の気づきから歌詞は始まります。
 何かが「海流」を通して必ず届くことに。
 曲が始まった時点では、いったい何のことかまだ分かりません。
 
 1番のAメロでは、人間というのは時間の経過と共に情熱やその為に熱く語った日々を忘れて「日常」に埋没してしまうことが語られます。それはとても「大切なこと」なのに。
 次に曲の主人公である「僕」が登場し、自分の無力さに負けて心が折れそうになります。
 情熱的な思いや時間はもう消えてしまうかもしれない状況です。
 
 サビでは、「日常」に埋もれそうな「夢」をガラス瓶に入れて海に流すことで、いつか叶うのではないか、と主人公は考えます。海の流れ、つまり「海流」が少しずつ運んで自分のもとに戻すのではないかと。
 そのリーチは地球一周分にも匹敵するのでは、と考えます。
 色々なところを「夢」が巡った距離が、「願いの強さ」になっていく。
 ガラス瓶の中を流れて行くのは、「純粋な気持ち」。ただし、「遠いあの頃」とあるので、やはり主人公の「僕」は日常の中で「夢」への情熱や「純粋な気持ち」を失いつつあったのかも知れません。
 
 2番のAメロでは、主人公が自分の夢を「海流」に流した様子が描かれます。
 世界の涯はここから見えなくても、「海流」というものはどこかへと必ず流れています。
 そして、「海流」を司る「自然」は人間のように諦めというものを知りません。
 
 主人公の「僕」は自然を尊敬します。人間のように「当たり前の毎日」に対して飽きるということも知りません。
 2番のサビでは、夢が自分のところに帰ってくる前に沈んでしまわないか、と不安な気持ちを抱きつつも、海流は良い方に流れていると信じます。自分が忘れてしまった「楽天的な日々」を思い出そうとするわけです。
 
 大サビ前では、波を数えては絶え間なく続く「永遠」を意識します。
 自分が望むものは簡単に手には入らない、やるだけやったらじたばたせずに待つしかない、と考え始めます。
 そして、今の自分に出来ることを「潮騒」という「波」や「海流」を連想する言葉の中から意識します。「夢」が届くかどうかは、じたばたしてもしょうがない、今は「日常」の中で待つしかない、と。
 そして、大サビなんですが、最後の部分が1番のサビとは違います。
 「遠いあの頃」に抱いていた純粋な気持ちだけではなく、「祈り」も入れています。
 「不安」だけではなく、信じる気持ち、願う気持ちである「祈り」も「ガラス瓶」の中に入るのです。
 つまり、歌詞の中で主人公は瓶から離れた立場に居ながら、瓶の内容物を増やし精神的にも成長しています。それを教えてくれるのは、「波」であり「海流」でした。
 そして、最初の歌詞に戻ってみてください。
 「僕」の夢はどうなるでしょう?

 初めてこの歌詞を読んだ時に、完成度の高さに震えました。
 前々からSTU48の歌詞を書く時に秋元康は何度も海というモチーフを使っていますが、歴代でも最高クラスの使い方ではないでしょうか?
 「川」が超えていくべきものとして「RIVER」で描かれたのに対して、「海」はまるで心情の交差点のように描かれています。
 
 さて、曲に関してなんですが、前向きになれる明るい曲調ですよね。 
 初めて聴いた時は、良い意味で「日向坂に行く予定の曲だったんじゃ?」と疑いたくなるぐらい誰かの背中を押していくような徐々に盛り上がっていく構成になっています。
 これから色々な場面で聴きたくなる素晴らしいメロディだと思います。
 僕は、Aメロのメロディが特に好きです。

 それでは、全体の構成をより掘り下げていきましょう。
 自然の代表格として「海流」を設定し、人間の代表格として「僕」を設定し、対比しています。
 自然の代表格である「海流」はいつまでも絶えることなく流れつづけます、我々人間側には「波」として伝わってきます。その行為は「あきない」、「諦めない」と「永遠」を連想させられます。それに対して人間の「僕」は「忘れる」、「負ける」と「無力」感を連想させられます。だからこそ、自然をリスペクトするのかもしれません。
 自然というものの大きさや時間的なリーチの長さを感じられます。
 永遠に続いていくものの中には「日常」や「当たり前の日々」も含まれていくかもしれません。でも、僕は「ガラス瓶」という人工物の中に「大切なもの」を入れます。自分が忘れてもどこかに残るようにと。
 上記のことを元に、ここから僕は三つの解釈をしてみます。

① 「海流」を人生とみる解釈
 人生というどこまでも続く時間の中で、「僕」は情熱的で楽天的だった若さを連想させられる時代は終わってしまった、あるいは終わろうとしているのかも知れません。でも、「ガラス瓶」という何らかの装置の中に思い出だけは入れて、いつか人生の中でもう一度情熱を取り戻す時間が来ると信じている。

② 「海流」をネットとみる解釈
 よく「ネットの海」という表現があります。また、「ネットサーフィン」という言葉もあります。ネットの海に自分の「夢」を流すというのは、今なら「クラウドファンディング」を連想させられます。特に「願いの強さ」あたりの歌詞は、ぴったりではないかと思っています。
 そして、いつまでもネットの海の中には自分の書いたものや作ったものが残ります。
 情熱的な思いをサイトという「ガラス瓶」に残しておくという解釈も可能かも知れません。

③ 「海流」をアイドル人生とみる解釈
 アイドル人生を続けていると、うまくいかないこともあります。特にコロナ禍以降は、不安に思うことも多いと思います。でも、昔の情熱や楽天的な気持ちを思い出せ、そう簡単にはセンターや選抜にはなれないし、時間もかかるかも知れないが、やることをやっていれば信じられるはずだろう、というメッセージにも感じます。

 さて、色々と書いてきましたが、皆さんはどの解釈がしっくりくるでしょう。
 年の終わりに今年のベスト級の曲が来ましたねえ。
 今日は何度もMVを楽しみたいと思います。
 
【ここからは先は、僕個人の話なのでもう読み飛ばしていただいて、結構ですが、興味がある方はどうぞ!】

 今、わりと僕の解釈でいうと①と②の両方みたいな状態になってましてね。
 今年の春に田舎に帰ってきて、日常」とか「当たり前の日々」にげんなりして、「情熱」を忘れてしまいそう日々を過ごしていました。でも、少しずつやりたいことが見つかってきて、それは来年本格的に動きだすことになるんですが、この曲の世界観で言えば、まさに毎日海流を想像しています。僕が作るものがどれぐらい受け入れてもらえるだろう、どこまで届くだろうと。
 だから、本当に人生の時間の中で、今、出会えて良かったし、来年何度も聞く曲になると思います。
 ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。 
 いつか、あなたにとって出会えて良かった曲も教えてください。

 
 

2021年12月12日日曜日

スケアクロウ

 誓いもなく信じあえた

 真っすぐな努力や誠実さというものは、いつまで持ち続けることが出来るんでしょう。
 僕の好きなバンドにthe pillowsというバンドがあります。
 有名な曲として「Funny Bunny」という曲があります。
 名前は知らなくてもサビの部分はCMソングやアニメの曲としても使われたことがあるので、聴き覚えのある方もいらっしゃるかも知れません。
※the pillows公式サイトより


 サビで歌われる「君の夢が叶うのは誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで走ってきた」というフレーズは、とても多くの夢を追いかける人々を励ます言葉ではないか、と思います。
 the pillowsが「音楽と人」とのインタビューを中心にまとめた自伝「ハイブリッド・レインボウ」を読むと、同期がどんどん売れていく中、彼らは取り残されていたそうです。メンバーもこれからどうしていこうか、という悩みを抱えつつも自分たち好きな音楽を時代に流されずに続けていきました。ボーカルの山中さわおは、自分たちをパン屋に例えて「おいしいパンがあるよって言っているのに、誰も足を止めてくれなかった。去っていくお客さんの方ばかり見ていて、買ってくれているお客さんのことを忘れていた」と当時のことを語ります。それは彼らが作っていたオルタナティブロック自体が時代の空気とあっていなかったからかもしれません。
 しかし、時代とは関係なく真っすぐに好きなことを続けていった彼らは、多くのミュージシャンたちからカバーされ、対バンを組まれるようになり、結成20年目にして武道館公演を成功させます。
 僕も何度かコンサートに足を運んだことがあります。
 直接彼が、僕らに語り掛けた言葉でこんな言葉があります(多分、PIDEPIPERツアーのZEEP OSAKAのアンコールだったはずです)。
「すぐに理解されなくても良い。明日のことは誰にも分からない。君たちから見たら、俺たちなんて僕らはもう終わってる人間かもしれない。でもさ、10年前の僕らはこんな未来予想してなかったんだ。自分の好きなものを信じて明日も生きて行こうぜ!」という叫びから演奏された「Funny Bunny」は忘れられません。
 自分たちの信じたものを持って武道館まで行った、彼らが歌うからこその説得力がありました。

 SKE48にも「Funny Bummy」が似合うメンバーは沢山いると思います。
 けれど、2021年12月現在の僕が似合いそうだと思うのは、8期生のよこにゃんこと北川愛乃さんです。
 彼女については、様々な才能の持ち主だと思っています。
 まずは、アイドルとしての魅力。
 努力家で研究生時代のアンダー出演も沢山し、昇格してからは切れのある動きで我々を魅了します。しかし、喋ってみると意外と天然というか愛すべきポンコツ感も少しあって、またその魅力がファンの方には魅力だと僕は思っています。
 同期の目からはどんな風に見えているんでしょう?

 2018年1月25日に行われた彼女の生誕祭で読まれた手紙を読んでみましょう。

「よこにゃんへ
 

 よっしー!17歳のお誕生日おめでとう!


 よっしーと初めて話したのはSKE48・8期生の最終審査の時。第1印象は髪が長くてツインテールしてる子でした。


 まだ初めての頃は8期生のみんなのことをそんなに知らなかったけど、髪が長いよっしーはすぐ見つけられて、それに話してみるとおっとりで、優しくて、話しやすくて一気に仲良くなれました。

 よっしーは8期生の中でも一番にアンダーに出て、3チームすぐに制覇してるのを見て、私はよっしーに追いつくのが精いっぱいでした。

 でも、よっしーは自分に厳しく、レッスン場に行くといつも練習してて、人一倍努力家で、そんなよっしーに凄く刺激を受けていました。そして、そういうよっしーを尊敬しています。


 研究生の頃、みんながうまくまとまらず、話し合いをした時がありました。その時、いつも何もいわないよっしーが関西弁で泣きながらスバっと自分の溜めてた気持ちを離してくれた時、凄くビックリしました。


 でも、よっしーが言うと説得力があるし、本当にみんなのこと、そしてSKE48のことを考えて言ってるんだなと思います。

 よっしーは内に溜め込んでしまうタイプかなと思うところがあるので、これから同期で同じ時期に昇格した私、実代ちゃんにも色々話してね。そしてたくさん頼ってほしい。


 お互いを刺激い合いながらチームSを下から盛り上げていきましょう。

 

 最後にSKE48に入って1か月ぐらい経った頃、アンケートでライバルは誰ですか?っていう質問に私は北川愛乃ちゃんと書きました。そしたらよっしーも私の名前を挙げてくれていました。ライバルって思ってくれていたことが嬉しかったです。


 今も私にとってよっしーはライバルです。そして最高な仲間。いつも一緒に帰ってくれてありがとう。

 素敵な17歳になりますように。

 改めてよっしーお誕生日おめでとう。

 真面目だけど実は天然で、ちょびっと抜けてるよっしーのことが大好きな井上瑠夏より」

 この年のスピーチで彼女は4つの目標を挙げます。
 ① SKE48シングルの選抜メンバーに入ること。
 ② チームSのセンターになること。
 ③ 総選挙で45位になること。
 ④ SHOWROOM、Instagramのフォロワーを1万人に増やすこと。

 この4つです。

 ストイックな努力家の彼女が言うからこそ、説得力があり心に響くものがある。
 そして、彼女がいることが同期やチームの刺激にもなっていく。
 それは何もメンバーだけでなく、僕らファンもそうかも知れません。
 僕は、2度彼女の舞台を観ました。
 「猩獸」と「BlackSmith」です。
 いずれも舞台の上で演じるよこにゃんの姿に、毎回会場を出る時には生きる力をもらっていました。特に「BlackSmith」は本当に力をもらいました。

 そう、よこにゃんには女優としての魅力もあります。
 翌年の2019年2月8日の生誕祭で読まれた彼女への手紙では、女優としての彼女について語られています。


「よこにゃんへ


 18歳のお誕生日おめでとう。


 お手紙の依頼をいただいたのは握手会。よこにゃんのファンの方がわざわざ私のレーンに足を運び、頭を下げて頼みに来てくれて『うっそだー。なんで私?』って言ったら『委員の満場一致だったんです』って。ほんなら委員全員連れてこいや!

 とそれは、まぁ冗談なんですけど、とは言えなかなか直接お祝いするタイミングがなく、お手紙という形にはなりましたが、こうした機会をいただけて嬉しいです。

 去年の生誕祭では一緒に昇格した同期のメンバーとの差について悩んでることを明かし、4つの目標を挙げ、そして加入前にNMB劇場で観た『会いたかった』公演についても話してくれました。

 実はその公演では私はステージの上に立っていて、私たちを観てSKEに入ろうと決めた、そう言ってくれたこと、大阪在住で身近に他のグループが存在しながらもSKEがいいと選んでくれたことが本当に嬉しかったです。


 どこまでも熱い気持ちを持ってくれているよこにゃん。その熱さをひしひしと肌に感じたのが私と綾巴のレギュラー番組『K'zStation』でした。

 一度の出演依頼、なんとびっちりと内容のある企画書を制作してくれて、私たちだけでなくケーズスタッフもみんなよこにゃんにメロメロです。

 それからというもの隙あらば『よこにゃん、よこにゃん、よこにゃん』とオファーの連続。着々と数を重ね、当然最多出演です。

 メンバーの熱さを伝えるこの番組には相応しすぎました。本当にいつもありがとうね。これからもいつでもお待ちしています。

 そして、なんといってもよこにゃんとの距離がぐっと縮まったのは舞台の出演。実は去年2作よこにゃんと同じ板の上に立ちました。1つ目はロミオとジュリエット。ロミジュリは組が違ってなかなか接点がなかったけれど、稽古場で見るよこにゃんの演技に度肝を抜かれました。

 17歳という年齢でいながらも年の離れた『ばあや役』を自分のものにしていた姿に『化けもんだ!』って思いました。何を参考にしてそんな演技ができるんだろう?この子の頭の中はどうなっているんだろう?疑問でいっぱいだった。同時に、これが実力なんだって思い知らされました。本当に衝撃だった。

 そして、その芝居が結果を結んだ『ネギま!』の舞台は予定が合わずに見には行けなかったんだけど、稽古の様子を嬉しそうに話してくれて嬉しかったなー。芝居が好きなんだなって、私まで嬉しくなったよ。

 そして、『刀使ノ巫女』主要キャストにSKEから5人選んでいただき、約1か月の毎日を一緒に過ごし、アイドル活動ではなかなか感じられない貴重な経験が私たちをたくさん成長させてくれたね。本当に楽しかった。

 でも、素直なことを言うと正直複雑で、申し訳ない思いもありました。

 でも、柳瀬舞衣ちゃんとして生きるよこにゃんの背中がいつも頼もしくて、まっすぐな瞳に吸い込まれそうになるくらい毎日たくさんの刺激を受けました。本当に本当に感謝しています。ありがとう。

 よこにゃんの芝居へのストイックなところ、座組の誰も認めていたし、礼儀正しく真面目で謙虚な姿勢が稽古中はもちろん、本番での空気を引き締めてくれていました。

 谷、綾巴、彩姫、私と先輩ばかりの中、ときどき見せる不器用な甘え方や変わらないザ・ポンコツなところ。私たちは可愛い妹ができたようで、5人でいることの心地よさや安心感、芝居のことになるとライバルのように出るバチバチ感も全部全部が大切な宝物です。


 17歳のよこにゃんの人生にたくさん携われて良かった。もちろん私の1年にもよこにゃんがたくさんだったよ。

 18歳も素敵な実りのある1年になりますように。演劇の世界でも、アイドルとしてのステージでもキラキラと輝き続けるあなたを応援しています。

 お誕生日おめでとう。

 斉藤真木子より。

 PS

 先日、彩姫からよこにゃんにいつか握手会で刀使ノ巫女メンバーでコスプレがしたいと言っていると聞きました。チャイナドレスとタクシードライバーとメイドとナース以外だったら何でもいいです。ご検討よろしくお願いします。」

 女優としての彼女の想像力のリーチの長さとそれをアウトプットする演技力が彼女の凄さだと思います。
 そして、忘れてはならないのが、番組からまた呼びたいと思わせてくれる真摯な姿勢。
 どんな仕事でも全力で取り組むという姿は、今メディアに沢山出ている須田亜香里とも通じるところがあると思いますし、これから後輩たちがメディアに出ていく際に参考になるのでは、と思います。
 この年のスピーチで彼女は「4つの目標を叶えることができなく申し訳ないなって思っていて」と語ります。目指していたアイドル像との違いや泥臭くチャレンジしていくことへの迷い、努力が必ずしも報われなかった時の悔しさも語ります。それでも彼女はくじけず、進学という選択肢をせずにSKE48のみで進むことを語ります。
 

 それから、次の生誕祭までの1年で彼女は、見事にSKE48の選抜に選ばれます。
 現在のSKE48のシングル選抜には、握手会の売り上げが大きく影響するのではと語られています。この握手会の売り上げが大きく影響するシステム自体は、僕はあまり賛成派ではありません。ファンへの握手対応以外にもアイドルの魅力は沢山あるので、そちらを評価する枠も欲しいと思っているからです。また、握手会の会場には行けないファンの貢献度が低くなってしまう可能性もありますしね。
 ただ、よこにゃんに関しては、握手会の売り上げも勿論なんですが、ネット上でのファンの方への向き合い方も非常に素晴らしいです。
 皆さんは、よこにゃんのアメブロを読んだことはあるでしょうか?
 毎回、ファンの方々のコメントを拾ってその答えを返しています。
 それはなかなか真似のできないことですし(この記事を書くためにいつもアメブロを読んで行ったんですが、いつもの倍時間がかかりました)、それを続けていられることもなかなか出来ることではないと思っています。
 会える人にもこれから会うかも知れない人にも、きちんと言葉を届けていく姿勢は、忙しいだろうに本当に頭が下がります。
 ファンサービスや公演だけではなく、外仕事も舞い込んできます。
 その外仕事とも誠実に向き合います。
 結果、彼女のメディア出演は徐々に増えて行きます。
 努力が実を結んで行きます。
 

 今度は2020年1月26日の彼女の生誕祭で読まれた手紙を読んでみましょう。

「よこにゃんへ

 お誕生日おめでとう。

 お手紙を書かせていただけることをとても嬉しく思います。

 どうも!SKE48のニューシングル『ソーユートコあるよね?』のセンターの人でーす。パチパチパチ。

 よこにゃんとは同じチームってわけじゃないけど、デビュー当初から目を引く、気になる存在でした。

 いつも一生懸命なパフォーマンスで優等生のタイプかと思いきや、全力で描いた絵は型に嵌ってなさすぎて、凄まじくて、中毒性が半端ないよね。

 どんなことも周りよりも一ひねり二ひねりしていて、他の誰にも真似できないものばかり。見ている人を飽きさせない工夫の一つ一つに私はいつも感動しています。

 かと思えば一生懸命喋っている時はだいたい天然発言が飛び出しちゃうところなんかは本当に面白くて、愛おしくて、もう最高!ずっと見ていられる人です。

 でもそんなよこにゃんに期待をしつつも少し心配しながらいつも見ています。

 頑張るぞってスイッチが入った時にまっすぐ突っ走る姿が素敵。でも少し頑張り過ぎちゃうところが危なっかしくてソワソワしながら見守らせています。

 でもね、やっぱり頑張りすぎたらどんな人だって疲れちゃうし、長くは頑張れない。それにファンの皆も私も頑張るよこにゃんも好きだけど、頑張ってるからこそよこにゃんが笑顔でいられるように支えてあげたいし、時には頑張ってないよこにゃんに甘えてもらうことも楽しみたい生き物なんです。

 だから大変だなと思う時ほど更に頑張るんじゃなくて、頑張るよこにゃんの隣のスペースを少し開けてみてね。ちゃんと隣で支えるからさ。くれぐれも一人で頑張らないように、だよ。

 だからね、最近は何か困ったことがあると時々私にも頼って連絡をくれたり、相談をしてくれることがあるのも凄く嬉しいです。でももっと甘えてもいいよ、って言ってあげようとしたんだけど、この前は逆に私を支えてくれた日もあったね。本当に頼もしくて凄く凄く嬉しかったよ。ありがとうね。

 よこにゃんは『私なんか…』ってよく言うけど、そろそろ胸を張ってもらわないと困ります。ここぞという時は『私に任せて』って言ってくれたら皆喜んでついて行くからね。もちろん私も。

 全力でアイドル頑張ることの素晴らしさ、努力って報われるんだよってことを一緒に皆に伝えられたら嬉しいです。

 努力っていつどんな形でかわからないけど必ず報われるって思ってる。もちろん望んだ形で叶うとは限らない。それは芸能界に限らないこと。

 でも頑張った分だけスタッフさんやメンバーだったり、そしてもちろんファンの方だったり、人と思いを重ねる分だけその時の自分にピッタリな形で報われるって私は信じてるよ。頑張ろうね。でもそれ以上に楽しもうね。

 よこにゃんは本当にファン思いだから今後もファンの方を思うが故に、行動や考え方で考えたり悩むこともあるかもしれないけど、私が思うのはよこにゃんとファンの皆は人間的な芯の部分でつながってると思うんだ。だからよこにゃんが前さえ向いていれば絶対に応援してくれると思う。

 髪の長さのおかげだけじゃない。目を引く魅力の一つ一つは本当に努力の賜物です。北川愛乃そのものです。

 これからも色んなよこにゃんを見せてね。

 いつも刺激をくれて本当にありがとう。

 そして、最後になりますが、SKE48シングル『ソーユートコあるよね?』選抜おめでとうございます。

 よこにゃんがいる選抜、私好きです。

 以上、SKE48チームE 須田亜香里でした。

 お手紙一緒に聞いてくださった皆様、読んでくれたメンバー様、ありがとうございました」

 もうね、SKE48のベテランメンバーは、みんな良い手紙書きますよね。
 よこにゃんの熱さが刺激になる、そして、そんなよこにゃんだからこそ、応援したくなるし、時には頼って欲しくなる彼女の人間としての魅力が伝わる素敵な手紙だと思います。
 ちなみに、よこにゃんはこの1年をアメブロではこんな風に振り返っています。

♡よこにゃん♡ 生誕祭のコメント No.39 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 このブログの中に出て来る「生きがい」という言葉が凄く心に残っていましてね。
 自分の頑張りが誰かの元気になる。
 自分が頑張る意味を見つけた彼女は、より強くなります。
 怪我で止まっても、応援してくれる人たちが待っている。
 だから新しい夢を持てる。
 ちなみに、この生誕祭の時の写真展も凄く良いので気になった方は、生誕祭から2月4日までのアメブロをチェックしてみてください。

 真木子の手紙にもありましたが、彼女の熱さは外仕事にも繋がって行きます。
 たとえば絵の仕事です。

 ちょっと彼女のアメブロを連続して2つ読んでみましょう。

♡よこにゃん♡ キャラクター紹介『ぴちこスター』ちゃん NO.92 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)


 ♡よこにゃん♡プレバトさんのお絵かき動画③ No.545 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 1つめのブログでは、彼女の絵の奥行が伝わってきます。
 よこにゃんの絵をみると、アート思考で描いている絵だなあ、と毎回思います。
 アート思考というのは、上手に模写するということではなく「①自分だけのものの見方で世界をみつめ、②自分なりの答えを生み出し、③それによって新たな問いを生み出す」ものだと、「13歳からのアート思考」の著者である末永幸歩さんは定義しています。
 よこにゃんの絵には上記の3つが全てあると僕は思っています。ピカソの「アビニヨンの娘たち」のように「模倣ではなく再構成」という視点が近いのではとも思っています。
 2つ目のブログでは、彼女のストイックさと彼女の夢に寄り添うご家族の温かさが伝わってきます。
 その結果、アーティストとしての彼女の素晴らしさは、いまやテレビのゴールデンタイムにまで届いています。
 今、ご家族について書きましたが、よこにゃんの真っすぐさの根源には、ご家族も関係しているのではないか、と思います。
 彼女のアメブロと極真空手のサイトでのインタビューを読んでみましょう。

♡よこにゃん♡ まんまんばあちゃん NO.80 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

大山倍達極真会館 | 極み人| KITAGAWA (mas-oyama.com)


 一つ目のアメブロは、初めて読んだ時に涙したのを覚えています。
 後悔しないように、今を全力で生きる。
 そして、2つ目のインタビューで両親が提案してくれた空手の道。試練に負けずに向き合うところと、笑顔で向き合えることの強さ。
 どちらも今のよこにゃんを作る重要なものだと思っています。
 

 いきなり話は飛びますが、先日、遅いインターネット会議という対談で評論家の宇野常寛さんと「平成のヒット曲」を上梓した音楽ジャーナリストの柴那典さんの対談が、渋谷SAAIで行われました。その中で、48グループの総括になった時に、美空ひばりの「川の流れのように」のアンサーソングとして「RIVER」があり、その延長線上に指原の歌である「恋するフォーチュンクッキー」があるという話になりました。
 指原は、48のファン参加型システムのボトムアップであり、旧世代的なワイドショーの文脈をハックした存在でもあると語られます。新しさと古さのどちらも持っているプレイヤーながら「結果として指原莉乃というワイドショーのコメンテーターを生み出す装置になってしまった」と総括し、指原莉乃の限界の方に報復されたのが今の48だと思っていると宇野さんは語っています。
 既存のシステムとは違うシステムを作れば川に流されず運命を信じられるはずが、象徴である川に指原も行ったのではと更に付け加えています。
 僕はこの対談を全て見終えた後、暗澹とした気持ちになりました。
 確かにそうなんだよなあ、と。
 でも、何かその閉塞感や限界のカウンターになるメンバーはいないか、と考えました。
 残念ながら、その時には見つからずに暗澹たる気分で過ごしました。
 それから週末に向けてよこにゃんの芸術性について書こうかと過去のブログを順番に読んだり動画を探していました。

 そんな時、よこにゃんのあるブログを読みました。


♡よこにゃん♡生誕祭  No.401 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 彼女の手紙を読んだ時に、こんなにまっすぐに自分の、そしてグループの夢を語ってくれるメンバーがこの2021年にいるんだ、と感動しました。
 いつからか、語ることが少なくなってきた紅白やドームでの公演、僕がしる限りでは同じような夢を語っていたのは倉島杏実だけではないか、と思います(もし、いらっしゃったら是非、教えてほしいです)。
 そこから、改めてよこにゃんについて違う角度からブログや手紙を集め直してたら、こんな時間になりました(本来は日曜日の8時に更新予定が今は22時になろうとしています)。
 なんというか、正統派のワクワク感が彼女の手紙にはあるんです。
 彼女が演じる姿や踊って歌う姿、生み出す絵画も素敵なんですが、それ以上に彼女が作る「希望」が今はとても貴重だと思います。

  the pillowsの曲に「スケアクロウ」という曲があります。
 「スケアクロウ」というバディものの映画を元にした曲なんですが、そのAメロでこんな一節があります。

「夢の向こうまで僕は旅を続けるつもりだよ 君を連れて 誰かが語った現実という物語が答えじゃないぜ」

 


 この曲の「僕」はファンの皆さんかも知れませんし、よこにゃんかも知れません。
 来週に行われる8期生から10期生たちによるコンサート。
 きっとここから、新しい物語が始まる、それは多分、「風の強い日」になるかも知れません。でも、よこにゃんなら、きっと進んでくれる。だって、彼女には夢がちゃんと見えているから。そう信じてこのブログを終えたいと思います。

 ※本当はよこにゃんと「モノ」との向き合い方とその豊さについても考えていたので、またチャンスを見つけて書きたいと思います。


2021年12月5日日曜日

熱量とインタラクティブ

 熱量が伝播していく


 SHOWROOMを立ち上げた前田裕二は、SHOWROOMを立ち上げた際、何か一つのカテゴリーに特化しないと他の配信アプリとの差別化ができないと考えたそうです(詳しくは彼の著作『人生の勝算』をチェック!)。様々な選択肢がある中で、アイドルに特化したものでまずは勝負しようと前田さんが考えた最大の理由を、「熱量」と彼は書いています。
 それまで投資銀行マンでアメリカに住んでいた彼は、SHOWROOMを立ち上げ、広げる為に様々な場所に営業へ行っていました。その中で、秋葉原の地下アイドルの現場に営業に行った時、現場の熱量に刺激を受けたそうです。「ニッチではあるが、こんな熱量のあるコンテンツは見たことはない」と。
 前田さんは、「人を動かすもの、惹きつけるものは熱量である」と確信します。
 SHOWROOMにおいては、「クオリティ」というものの価値観が少しずつ、変化が起きていると同じく著作「人生の勝算」の中で語っています。完成度よりは面白さと送り手側と受け手側の関係が重要であると。インタラクティブ(双方向性)があり、配信を面白くするのは、送り手側だけでなく受け手側も担っているそうです。コメントの面白さや「前向き課金」としてのギフティング等、「この部屋面白いな」と思う部屋の質は送り手だけでなく受け手も良いそうです。配信者の笑顔が自分の笑顔にもなる。幸福な関係ですね。
 

 SKE48で僕が一番に思い浮かべたのが、平野百菜です。



 

 僕はそこまで48グループのSHOWROOM配信をチェックしているわけではないので、断言はできませんが、それでも彼女のルームは48グループトップクラスの「クオリティ」を確保していると思います。
 一例を挙げると、「風船トランポリン」や「ボーリングボクシング」等、思わず僕の大好きなお笑いコンビ「金属バット」の「三味線弓道」のネタを思い出すぐらいの奇想天外な思考で彼女は配信をします。

 「AKB映像倉庫」のアーカイブには、アバターの様子までは残っていませんが、ルームの方々がももたん好みのアバターに統一されているのも面白いですね(ほら、お食事中に読んでくださっている方もいるかも知れませんしね)。
 さてさて、少しだけ話をSHOWROOMに戻すと、前田さんは著作の中でファンビジネスを4象限に分類しています。縦軸は偶像(更新が少なく、低密度)と身近(更新が多く、高密度)。横軸はファンの数の多さと少なさ。彼は秋元康は4象限のうちの縦軸の下のゾーンをターゲットにしていて、SHOWROOMはこの層との相性の良さも挙げています。まるで、スナックや床屋のように毎日やっていて、気軽に入れると。そして、努力や工夫次第で一気に人気が出る土壌があるそうです(逆に手抜きだとすぐにバレてしまう怖さもあると)。
 そう考えると、SHOWROOMを900日も続けられる彼女とファンの方々の熱量は本当に素晴らしいと思います。
 ちょっと彼女のアメブロを読んでみましょう。

平野百菜♪900日 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 ただの900日のお祝いにせずに「9」にかけたアイディアで盛り上げる彼女の頭の柔らかさを感じます。
 思えばももたんは、SHOWROOMの様々なイベントで結果を残しています。

 フルーツやテーマパーク、様々なものをゲットしています。
※詳しくはこちらのブログをご確認あれ!

 平野百菜♪フルーツ | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 平野百菜♪イベント | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 平野百菜♪ショールームイベント | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 ただ、嬉しいことばかりではありませんでした。
 bis出演をかけたイベントでは残念ながら、落選しました。
 しかし、この時読んだ手紙が素晴らしいので、2020年4月26日の配信をちょっと確認してみましょう。 

「応援してくれたみんなへ

 イベントが始まって今日まで、応援ありがとうございました。
 イベントが始まる前は、不安の(方)が大きかったです。
 毎日アイドルをやってるけど、1日3時間も配信したことないし、立候補した先輩・同期・後輩をみたら、もものことを応援してくれる(涙をふきながら)…。応援してくれる人いるのかな、って心配に…(涙をふくために一旦中座)。立候補したのに凄く…(再び涙をふく)。弱気になっていました。
 でも、イベントが始まると、初日から沢山の人が応援してくれて、配信のスケジュールをみんな真剣に考えてくれて。それだけでも、嬉しかったのに、『頑張ろう』ってみんなでみんなに言ってもらえて、ももはファンの方と一緒に頑張っていくぞっていう気持ちが、更にパワーアップしました。
 もものファンの方、ファンじゃない方も朝早くから生で配信見に来てくれて、星投げ、カウントギフト、ありがとうございました。嬉しかったです。

 朝はみんなお仕事で忙しかったり眠かったりするのに、面白いコメントをして、ももを笑わしてくれて、ありがとうございます。夜も変わらずみんなコメント面白くて楽しかったです。ももは毎回笑ってばかりだったような気がします。カラオケやダンスをすると、コールをしてくれたり、みんな優しくて毎日感謝しかありませんでした。
 結果は、みんなが一生懸命応援してくれたのに、期待に応えられなくて、ごめんなさい。
 でも、今回イベントに参加して、それ以上にファンの方と気持ちが一つになって、凄く嬉しかったです。
 

 ももにとって…(涙で手紙が読めなくなる)。
 みんな応援してくれる気持ちが嬉しかったです。
 4位との差が大きくなっても、みんな諦めずに毎日ももの順位を上げようとしてくれて、本当に嬉しかったです。このイベントで初めて「#ももたんをbisまでお届け」で拡散してくださいってお願いしました。
 今までももは「#〇〇」でお返事してください、拡散してくださいって言ったことがなかったので、今回お願いしてみて、SHOWROOMは面白い楽しいコメントをしてくれてるのに、「#」では、みんな真面目にもものことを考えてくれて、善意を上げたいっていう気持ちが凄く伝わって、嬉しかったです。
 ファンの方ってこんなにもものことを思ってくれてんだなって、分かりました。
 毎日ありがとうなんだけど、このイベントの一週間、ほんとにありがとうございました。
 本当に本当にありがとうございました。
 直接ありがとうを伝えたいけど、今は無理だから、また握手会・劇場が再開されたら、直接御礼を言います。
 本当に一週間ありがとうございました。
 明日からもまた、毎日アイドルは続くので、応援よろしくお願いします。
 みんな大好きです。

 ももより」

 この手紙を読みながら、平野さんとファンの方々の関係って本当に素晴らしいなと感じました。前田さんが考える「熱量」を感じる関係だと思います。
 しかし、ももたんの「熱量」は徐々に運営にも伝わっていきます。
 そう、若手で作られた青空片想い選抜です。
 あまり、ももたんを意識してなかった僕のような、はぐれSKE48ファンでもパフォーマンスで、「爽やか~」と目を細めながら惹きつけられたものです。

平野百菜♪発売日 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 そして、「熱量」の関係で言えば、忘れてはならないのが「大富豪は終わらない」のイベントです。
 平野百菜♪大富豪 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 これまでも何度かCMに出ていましたが、ドラマの出演権をかけてのこのイベントでは、ファンの皆さんとももたんが「熱量」と共に進みます。
 そして、彼女は見事に1位を獲得します。連続でどうぞ。

平野百菜♪大富豪 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 平野百菜♪1位 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
 

 いよいよドラマの収録。

 平野百菜♪名探偵 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 完成版は今でもyoutubeで観られます。



 本人の性格とは少し違うかも知れませんが、そこが演じることの面白さ。
 正直に書くと、ショートフィルムで果たしてどこまで8人の良さを引き出せるかと心配だったんですが、これが良くてですね。
 特にももたんが静かに証拠を突き付けていく彼女の演技に引き込まれました。
 「熱量」は先輩メンバーにも伝わっています。
 須田亜香里が書いた生誕祭の手紙を読んでみましょう。
 
「大好きなももたんへ
 
 15歳のお誕生日おめでとう。
  
 私はあなたの初恋の人です。誰か分かったかな?
 お手紙かけて嬉しいです。

 出会ったのはもももたんがまだ小学生の頃。ももたんがSKE48に入ってくれたから出会えたね。

 SKE48に入ってくれてありがとう。

 ももたんは若さが武器になる一方で、デビューしてからも劇場公演に立てる時間が限られていて、悔しい思いをしたり、我慢しなきゃいけないことがあったよね。
 
 でも、だからこそももたんは当時も今も変わらずにできることには『これでもか!』ってぐらい全力で挑戦しているのだと思います。

 その姿が本当にかっこよくて、可愛くって、最高にアイドルだと思います。
 
 ももたんのファンの皆は絶対幸せだと思う。私ももたんを見ていると本当に幸せだから。いつも頑張り屋さんなももたんが大好き。泣いてるところも、はしゃぎすぎてうるさい時も、うんちが大好きなところも全部全部大好き。
 
 でも、もう私も身長を抜かされたし、そのうちうんち好きじゃなくなったり、大人になっていくのかな?と思うと少し寂しい気もするけど、結局私はどんなももたんも大好きな自信がある。ももたんのハートが大好きだから。

 これからも成長していく姿を日々見られることが楽しみです。

 ファン思いで頑張り屋さんなももたんは『もっと頑張らなきゃ』とか『これ以上どうしていいかわからない』と不安になることもあると思うけど、悲しい気持ちにならないでね。迷ったり悩んだり苦しかったりするのは、自分がそれだけ本気で向き合っている証拠だから、ちゃんと自分の頑張りを認めてあげてね。

 ダメだから悩むんじゃないよ。がんばれているから悩むんだよ。
 
 答えはひとつじゃないから色んな人に相談して、ワクワクしながら探していこう。
 
 私にもまたいつでも頼ってね。両思いなんだから遠慮しちゃダメだよ。

 そしていつかももたんにたくさんの後輩ができた時、悩んでいる後輩がいたら同じように助けてあげてね。ももたんはきっと背中を見せてくれる先輩になれると思うよ。

 ももたん自身がアイドルでいることを楽しんで、心から笑顔でいてくれたらそれがももたんの大切な人の笑顔になるよ。
 
 これからも嬉しいことに悔しいことに色んな気持ちに正直でいられるももたんでいてね。

 ももたんの夢は皆の夢、私の夢でもあります。
 
 これからもアイドルとして色んな形で私たちを楽しませてね。

 これからもずっと好きだよ~。

 SKE48チームEリーダー、須田会・須田亜香里より 」
 
 初めてこの手紙を読んだ時は、「だーすー、卒業するのか!」と心配になるぐらいすごい未来へのリーチがある手紙で、ももたんとファンの方との関係や「熱量」が伝わってくる素敵な手紙でした。
 握手会というアイドルとファンのインタラクティブを加速させた場で、アイドルとしてのアイデンティティを獲得していった(あくまで広義の意味での)須田亜香里が、SHOWROOMという同じくインタラクティブの場で人気を獲得していったももたんへと送るメッセージと考えると、これは凄く深いものがあるのではと思います。
 ファン思いであり、悩みながらも成長していく。
 そんな誠実で熱量のある彼女の笑顔は、やっぱり見ていてこちらも笑顔になります。
 
 アイドルの身近さが10年代よりも加速していく20年代。果たしてももたんは、次にどんな展開を見せて行くのか。勿論、遠い視点だけではないです、明日の配信を楽しみにできる存在、ももたんが持つ「熱量」は20年代のアイドルのスタンダードになっていくかも知れません。彼女が作る新しい文体こそが「握手会2.0」へのヒントかも知れません。
 

2021年11月30日火曜日

誰かのための言葉たち

 君を知れば見えて来るもの


 近頃、批評家の小林秀雄の著作で読んでいないものをどんどん読んでいます。なかでも数学者の岡潔と対談した「人間の建設」がなかなか面白くて、様々なことを見つめる時のヒントがあります。
 その対談の中で小林は知り合いの骨董屋の親父のエピソードを語ります。骨董屋の親父が李朝のいい徳利を持っていて、小林は何度もこの徳利をねだりますが、なかなかもらえません。やがて、小林は親父と知り合って28年目に徳利をポケットに入れて持って帰ってしまいます。そして、「お前が危篤になったら電報をよこせ」と言うんですね。すっごいエピソードですが、これには続きがあって、親父は結局小林に電報を送らずに死んでしまいます。そして、彼の息子が親父が書き続けていた俳句集があったことを小林に明かします。その句は詞書きとして「小林秀雄に」とあり、「毒舌を逆らわず聞く老の春」、「友来る嬉しからずや春の杯」という上記のエピソードを連想させられる句もあります。
 小林は俳句としては駄句だが、親父の人間性を知っている自分にはとても面白い、と語ります。
 そして、松尾芭蕉の句が名句として残っているが、もし、松尾芭蕉の人間性を知っていたら、生きている時に付き合っていたら、もっと名句として味わえていたのでは、と語ります(だから、芭蕉の弟子たちの)。芭蕉と付き合った人達だけにわかる味わいがあるのではないかと。

 僕はここまで読んで、ふと松井珠理奈のことを思い浮かべました。
 彼女はアイドルとして、48グループの最前線を体験し、プレイヤーとして活躍しながら、徐々に作詞に目覚めていきます。
 そこには、小学生の頃から芸能の世界に身を置き、プロデュースされる側だった彼女が、徐々に、誰かの言葉ではなく自分の言葉で伝えたい、という一人の人間としての成長を僕は感じます。
 彼女が書く歌詞(特にソロアルバムの曲)は暗に示すというよりは、直接的な表現が多いです。悪く書くと余白が少ないと感じる方もいるかもしれません。それを浅いと読みとるのは簡単ですが、本当にそうでしょうか?
 松井珠理奈という人を含めて歌詞を読み取っていくと、小林秀雄の言葉を借りれば「面白さ」が生じてきます。
 では、具体的にどんな曲が挙げられるでしょう?
 

 まずは、彼女の卒業曲である、「Memories~いつの日か会える日まで~」です。


 

 この曲は、卒業曲という対象を連想させられやすい曲ということもありますが、彼女の歩みを連想させられる歌詞がたくさん登場します。
 「あの階段」は、「大声ダイヤモンド」のロケ地やマジすか学園の階段を連想させられますし、「オレンジ色をしたあたたかさ」は、SKE48カラーを連想させられますね。
 自分の卒業曲を自分で書いたというのは、48グループでも初ではないでしょうか?
 彼女のドラマを知っていればこそ、この曲の味わいは変わってくると思います。自分のアイドル人生を終える曲の言葉たちを誰かの言葉ではなく、自分の言葉で彩る。それは、彼女ならではの挑戦だと思います。

 次に挙げたいのが、Black Pearlに書いた「Change Your World」です。
  

 

 まるで後輩達に向けて呼びかけるようなサビの歌詞が印象的です。
 自分がこれまで居た芸能界やSKE48で生き残る厳しさを語りつつも、それを乗り越える行動力を語るこの歌詞は、松井珠理奈を知っているからこその説得力があるのでは、と思います。これまで、様々な困難を乗り越えてきた、だからこその説得力。勿論、この歌詞を書いている自分に言い聞かせているのでは、という読み取り方も出来ると思いますが、卒業シングルだったことを考えると、後輩へのメッセージを込めたという解釈の方がしっくり来るのでは、と思っています。

 卒業と関連した曲が続きますが、SKE48に最後に残した「オレンジのバス」も松井珠理奈を知っていれば味わいが変ってきます。
※動画の2分20秒頃に流れています。 

 この曲は「オレンジのバス」という「SKE48」に居た日々のことを書いていると思います。出だしのバスに乗ってから「もう何年経つのかな」という部分からも、ただバスに乗っているというではない、ということが分かります。
 彼女が描いたSKE48でのアイドル活動やグループ像が見えてきます。
 中でも松井珠理奈を意識させられる歌詞が「心無い人に傷けられたら」のところが凄く印象的で、思えば彼女ほど「心無い人に傷つけられ」てきたメンバーもいないのでは、と思います。
 少し話がそれますが、先日ネットフリックスでテニスの大阪なおみ選手のドキュメンタリーをまとめて観ました。その中で、全米を制覇して一躍スターになった彼女は、「勝つのが当たり前」という感じになり、負けた時には、インタビューでわざわざ「誰に負けたのか教えて?」というような嫌がらせも受けます。結果、彼女はどんどん眠れなくなり、ストレスと戦いながら再生していきます(他にも理解者の死や自分よりも若い才能の台頭など、試練だらけです)。
 この映像を観た時に2018年総選挙の松井珠理奈を思い出しました。あの時の48グループには、もう指原莉乃も渡辺麻友もいませんでした。おそらく宮脇咲良との一騎打ち。そして、過去の順位を比較した時に多くのファンから「勝つのが当たり前」と思われていたのではないでしょうか?
 それでも1位を勝ち取った彼女を待っていたのは、残酷なぐらい大きくなった批判の声でした。これに関しては、以前にも書きましたが、価値観と育ちの違いだったのではないかと僕は考えています。
 AKB48との差別化の為に全力のダンスに特化し、一時期は完全にカウンターとして機能していたグループと、アイドルが持つ楽しさや自由さに特化していったグループ。大きな48グループという幹から分かれて行った二つの枝ですが、気付けば遠く離れてしまったのかも知れません。そこから休養を経て復帰した彼女は、もう総選挙で戦わなくてよくなったというところもあるかも知れませんが、優しさや柔らかさを感じる場面が増えたように感じます。
 今でも「心無い人たち」はいます。なんならこの記事を書く為に色々と調べている時にも、わざわざ珠理奈を悪者にしようと一生懸命な動画があったので、悪質なものとして報告しておきました(恐ろしいぐらい創作されたものでした)。
 総選挙という闘いが終わっても、世間やアンチとの闘いは今も続いているのかも知れません。だからこそ、「オレンジのバス」の中に出てくる「味方」という言葉が響いてきます。
 そして、このSKE48についた「オレンジ」という色に対して沢山の色を「自由につければいい」と語り、この曲は感謝と共に終わります。
 この辺りは、SKE48のセンターとして自分が作ってきた価値観に囚われずに新しい価値観を生み出して欲しいというメッセージのようにも読めます。いずれにせよ、メッセージソングとしての要素が強いのではと僕は考えています。

 さて、先にシングルのカップリング曲を挙げましたが、ソロアルバムである「Privacy」に関しては、実は松井珠理奈という人物を外しても成立するような歌詞が多いです。勿論「あの日交わした約束」や「KMTダンス」なんかは、松井珠理奈を知っていると、より味わい深くなるんでしょうが、松井珠理奈という固有名詞を外して20代の女性の物語としたとしても、十分に成立するような気がします。
 どちらかというと、誰かに向けて創った歌詞の方が、彼女の要素が強くなるし、説得力が増すのは何故でしょう?
 それは彼女の誠実な優しさから来るのでは、と歌詞を読んでいると思います。誰かの背中を押したい、自分と同じ試練に立ち向かう人たちを応援したい。そんな気が僕はしています。
 もうアイドル松井珠理奈はいませんが、彼女が書いた歌詞の中には生きています。
 彼女の次回作が公に発表されるのがいつか分かりませんが、彼女の面白さをじっくりと味わうために、誰かのための曲をまた書いてほしいなと僕は期待しています。

 時が流れて松井珠理奈を知らない世代の子たちが、「オレンジのバス」をどんな気持ちで歌うのか、どんな風に心に響くのか、ずっと先のことですが、どうか未来の世代の支えにもなるといいなと思っています。

2021年11月24日水曜日

祝!ブログ3周年!!

 役に立たない美しいもの


 2021年11月22日、この「栄、覚えて行くれ」という弱小ブログがついに3周年を迎えました。めでたい!
 同じく、2021年11月22日に、僕の大好きなバンドドレスコードの曲がyoutubeの公式チャンネルにアップされました。
 「不要不急」という曲です。ちょっと聴いてみましょう。


 

 名盤「バイエル」に収められている1曲です。
 僕はこの曲が好きで、よく一人ぼっちで夜に散歩する時に歌っていました。
 曲中で歌われているのは、社会から求められていないかもしれないし、すぐに必要ではないかもしれない、けれど、とても美しいものと時間があるという曲だと僕は解釈しています。

 思えば、このブログも何の役にも立たないし、誰かに頼まれて書いているわけでもありません。だいたい長いのですぐに読めるものでもないです。
 でも、大好きな48グループの曲について書いている時、魅力的なメンバーについて書いている時、すっごく楽しいんです。もし、それを読んで誰かも同じように楽しくなったり、心が震えてくれたら、ちょっと面倒かも知れませんが、じっくり読んでくれたら、もっと嬉しいです。

 批評家の小林秀雄と数学者の岡潔の対談が収められた「人間の建設」という対談集を今日読みました。その中で数学者の岡が「正倉院展を3時間ほど観た後に、外へ出ると周辺の松のいい枝ぶりに気づいた。それまではいい松は滅多にないと思っていたのに」という体験を語ります。正倉院に所蔵された国宝たち、岡の言葉を借りるなら「丹念に長い間取り扱ってきたもの」を観ることで、余計なものが消えて「ほしいものに気づけた」そうです(この場合は松ですね)。

 この1年、ブログを書く時にアイドルとは関係ない分野の思想や物事を持ってきて、繋ぎ合わせる試みを何度もしました。それは、引用した方が自分の考えの解像度が上がるということもあるんですが、上記の「ほしいものに気づけた」経験が沢山あったからです。僕のブログも同じように誰かの「ほしいもの」に気づくきっかけになっていると嬉しいです。

 メイキング的なことを書くと、この1年は試行錯誤の1年だったかと思います。
 2年目から導入したnoteのラジオ機能による「ラジオ配信」、フォロワーの方との「雑談」企画(楽しかったので、また連休とかにやってみたいです)、皆さんの体験を集める「体験企画」。閲覧数でいえば、「体験企画」は色々なファンの方の体験が聞けて、民俗学のフィールドワークのようで、凄く楽しかったです。とっておきのエピソードを語ってくださった沢山の方々に感謝です。ただ、この企画、集まる時は集まるんですが、集まらない時は清々しいくらい集まらないんですよね。この課題をどうクリアーするかですね。

 課題といえば、「Aというメンバーについて書きました」という記事があった時、Aファンの方は読んでくださるんですが、翌週に「Bというメンバーについて書きました」と書いた時は、Aというメンバーのファンの方は、ほとんど読んでもらえていない、という課題があります(あくまでSNSへの『いいね』や『リツイート』の反応からしか分かりませんが)。
 もっと横断的に読んでもらうには、どうしたら良いのかというのかを最近は考えています。
 この答えは2022年に形にしようと思うのでお楽しみに。

 2022年といえば、noteの方で連載している「2022年への相談シリーズ」で書いているんですが、一人のファンがどれだけのモノを作ることができるのか、という勝負になってくるかと思います。その時に、味方になってくれたら嬉しいです。

 味方といえば、書き始めた時からブログを読んでくださっている方も、今日、読み始めた方も、皆さんありがとうございます。いつもSNSに「いいね」や「リツイート」してくださる方々もありがとうございます。コメントまでくださる方々もありがとうございます。「面白かった」の一言だけでも書いている当人としては、物凄く励みになっています。
 また、noteでサポート機能を使ってくださった方も本当に感謝しています。全部2022年の勝負で使うつもりです。

 そして、3年目も面白い記事やちょっとだけ価値観が変わる記事を書いていきたいと思っています。面倒なことばかりですが、これからもつきあってくださったら嬉しいです。


2021年11月21日日曜日

継続と工夫が生み出す特別さ

ぶーはいつも不意打ちで来る


 近頃、家でぼんやりしている時に思想家の吉本隆明さんの公演を聴いています(『共同幻想論』は2020年代の今も多くの社会学者たちが引用する強度の高いものです)。
 こちらは、糸井重里さんが運営している「ほぼ日」のサイトで無料公開されていて、183にも及ぶ公演をその日の気分で聞いています。
※凄く面白いのでリンクを貼っておきます。 

 公演名を失念したんですが、文学作品の名作について、吉本さんはこんなことを語っていました(著作もいくつか読んでいるんですが、おそらく公演だったと思います。吉本研究をされて)。
「この作品の良さが分かるのは自分だけではないか、読者にそう思わせられる。それが多くの人に時には錯覚させられる作品が名作になるのではないか」と語っていました。
 
 歌手の小沢健二が長い活動休止期間を経て、日本で久々にコンサートをした時、「シッカショ節」という曲を披露する前に「笑い」についてのMCをしました。
 アメリカでも日本でも「笑い」は、「ああ、これって自分たちには分かるなあ」というものが受けるとう共通点があるそうです。思えば、彼がこの後披露した「シッカショ節」は彼の代表作である「今夜はブギーバック」や「愛し愛されていきるのさ」とは、全く違うアプローチで、日本の民謡のようでした。



 僕の経験になってしまって恐縮ですが、上記の2つの感覚は、自ら求めて行って得られることは少なく、むしろ不意打ちで来ることが多いです。

 SKE48でも、僕にこの体験をさせてくれたメンバーがいます。
 それが中坂美祐さんでした。
 まずは、こちらのブログをご一読ください。

 こちらのブログで登場するトートバックの画像。
 この豚さんの絵を見た時に、僕は何故か郷愁のような感慨を受けました。上手いとか下手とかいう物差しではなくて、もっと別の愛おしさがありました。「民藝」は美術館に陶芸品を置くのではなく、身近な生活の中に置くことでその「モノ」たちが活きてくることを柳宗悦は語っていましたが、何かその感覚に似た身近さを僕は感じました。
 何度も何度もこの画像の豚さんを見ながら、この感覚を抱かせてくれたこの子は何物なんだろう、と動画やアメブロを読んで行きました。
 
 彼女のアメブロから感じるのは、「構成」が意識されているということです。
 まず、オープニングのトークがあり、本題があり、動画があり(ここ数か月は俳句というか川柳があり)、お知らせで終わるという構成になっています。
 この構成は、常に彼女が自分のブログを更新する際の工夫の元に出来ています。
 こちらのブログを確認してみましょう。


 この時に今我々が読んでいるブログの構成の元になるものがあるんですね。
 ちなみに、生活に関しては、こちらのアメブロでも書かれています。

 アイドルでいる日々をだらっと過ごさずに、自分の毎日を豊かにしていく工夫が本当に尊敬できます。
 工夫といえば、オンライン2ショットでも彼女の工夫が感じられます。

 何故、彼女はこんなにアイドルである毎日を大事にして過ごしているのでしょう。
 ちょっと彼女の生誕祭で読まれたお母さまからの手紙を読んでみましょう。


「美祐へ
 
 14歳の誕生日おめでとう。
 
 SKE48のことが大好きで、生誕祭にも何度か足を運び、客席から観ていたその舞台に立って、沢山の人にお祝いしてもらえる日が来るなんて夢のようですね。
 
 今どんな景色が見えていますか?

 きっかけは、アイドルと一緒に写真を撮ることなんてきっとないからと出かけた写メ会。その出会いがあなたの人生を変えました。

 色んなイベントに出かけて行くたびにどんどんSKE48が好きになって、いつの頃からなんだろ、SKE48に入ることを夢見るようになったのは。

 ちっちゃい頃から歌って踊るのは好きだったけど、『人前でやって』と言うと『無理』って言う子だったのにね。
 
 11歳の誕生日が過ぎた頃に初めて『SKE48になりたい』と聞いた時は正直ビックリしました。

 そして『アイドルになりたいの?』と尋ねると『違う。SKE48になりたいの』と言ったのを覚えていますか?
 
 いつの間にかSKE48が美祐の中で特別な存在になっていることを実感しました。
 
 8期オーディションを経て挑戦した48グループの第3回ドラフト会議では、ドラフト候補生として残ることができましたが、レッスンは全て東京。今まで電車やバスに一人で乗った美祐を東京に一人で通わすことにしたのも、『ただいま』の声を聞くまでは気が気でない毎日でした。

 最終的には福岡まで一人で行って、その時の感想が『福岡遠いね。座りっぱなしで足が伸びないよ』と笑わせてくれました。

 でも、それができたのもその当時担当してくださったマネージャーさんや同じ方向に帰る年上の候補生さんが助けてくれたおかげです。本当に感謝しています。

 ドラフト会議は残念な結果でした。SKE48のすべてのチームが指名を終了した時に舞台裏で頬を伝った一筋の涙は今でも忘れることができません。

 ドラフト会議の直後から同じような経験を持つ先輩や応援してくださっていたファンの方々が色んな方法で発信してくれた温かい言葉に励まされながら必死に前を向こうとしているようでしたね。

 そして、ドラフト会議直後に参加した握手会はドラフト3期生のお披露目。舞台に立つ元仲間に目一杯の笑顔でおめでとうと伝えた美祐は凄いと思いました。

 その直後から丈夫なだけが取り柄の美祐が謎の高熱で一週間寝込んだことはかなり心配しました。

 でも、今となって思うと、心も体も疲れきっていて、あの時の美祐には一週間の休養が必要だったんだと思います。だってその後はずっと元気娘ですから。

 そして、9期オーディション。合格してSKE48の一員として舞台に立つことができました。おめでとう。

 自分で夢への扉を開けたね。でもその先の道のほうが長いし、大変だけど自分で選んだ道です。納得するまで突き進んでください。

 周りからはよく『しっかりしてるね』って言われるけど、全然そんなことなくて、本当は甘えん坊のかまってちゃんだし、頑固で負けず嫌い。不器用で人見知り。かなり面倒な性格だけど、とっても優しい。そんな美祐が母は大好きです。

 人との距離感をつかむのが苦手で、人間関係で悩むことが多いけど、美祐の良さをわかってくれる人が必ずいるからそのまま真っすぐに育ってくれればと思います。

 『表現力でどうすれば大人っぽく、色っぽくなる?』って聞かれたけど、半年前まで男の子に混じって真っ黒になってボールを追いかけていた人間だから難しいなって思う。

 でも、それはSKE48での経験でいつか身につくと思うから今はスタッフさん、マネージャーさんや先輩の言うことに素直に耳を傾け、日々努力してどんな場所でも輝ける自分を目指してね。

 最近やることが多すぎて一杯一杯の美優についつい先に口出してしまう母だから、これからは信じて見守りたいと思います。

 今のこの時を楽しみながら、つらいこと大変なことを乗り越えてくれればと思います。

 経験と出会いは宝物ですよ。この経験と出会いを大切にしてね。いつも近くで厳しく見守っています。

 美祐の周りには応援してくれる人がいることを忘れないでください。
 
 最後になりましたが、株式会社SKEの皆様、マネージャーさん、スタッフの方々、SKE48のメンバーの皆さん、9期生の皆さん、いつも娘がお世話になりありがとうございます。

 この生誕祭を開いてくださったファンの皆さん、いつも娘を応援していただき、そして今日はこんな素敵な生誕祭を開いていただきありがとうございます。

 まだまだ未熟で目に余ることもたくさんあると思いますが、大好きなSKE48の一員として活動できることを大変喜んでおります。これからもよろしくお願い申し上げます。

2019年6月30日 母より 」

 ううむ、SKE48になるまでの道のりが決してストレートなものではなく、挑戦を続けながら勝ち取ったものだったんですね。
 恥ずかしながら、8期生やドラフト3期生のオーディションに挑んでいたことは、初めて知りました。お披露目で舞台に立つドラフト3期生のメンバーたちに「おめでとう」が言えた彼女は素晴らしいと思います、しかし、その後に1週間の静養があったというのも決して心が全て受け入れていたわけではなく、苦しかったことが伝わってきます。
 そして、アイドルではなくSKE48になりたい、この言葉は本当に嬉しい言葉ですね。
 これから同じことを思ってくれる方をどれぐらい生み出せるかが、SKE48が発展していく上で重要ではないか、とふと思いました。
 
 さて、生誕祭の手紙にちらっと出てきましたが、彼女はもともとスポーツ少女で、人との距離については得意ではない、ということが語られていました。
 そのあたりのことを彼女はどうとらえているのか、アメブロで読んでみましょう。


 正直、ティーンズユニットに関しては、「身内同士で戦わなくても…」という気持ちもあったんですが、成長へのトリガーの役割もあったんですね。そして、コロナ禍の自粛期間で生まれた離れ離れの日々。ここで彼女はSHOWROOMの配信を続けていくことで、トーク力を成長させていきます。
 こちらのアメブロも読んでみましょう。

 そういえば、SHOWROOMの社長である前田裕二さんの著作「人生の勝算」の中で、コミュニティが深まる要素として、①「余白があること」、②「クローズドの空間で常連客ができること」、③「仮想敵を作ること」、④「秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること」、⑤「共通目的やベクトルを持つこと」を挙げていましたが、中坂さんの配信でも①の要素を中心に⑤の要素が生まれていたのでは、と思います(ちなみに、この説明のすぐ後にAKBビジネスは何故強いのかを③と総選挙、④とアバターを挙げていました)。
 更に、ファンビジネスの4象限として更新が多い/少ない、ファンの数が多い/少ないという4象限の中で、更新を多くすることでより身近になっていき、ファンの数も少しずつ増えて行く、配信が多い人ほどSHOWROOMではスターになれる、何故なら努力と継続から生まれる物語があるそうです。
 その物語は、ずっと見ているよりそっているからこそ特別になっていくのかも知れません。
 
 幸いアメブロのルールも彼女に味方します。

 読んでくれるファンの方々がいるから続けられる。
 この辺りは、普段弱小ブログを書いている僕なんかも共感してしまいます。
 アイディア募集もしていましたが、僕としてはSKE48に関する「衣・食・住」や思い入れのある曲に関するエピソードや公演曲を1曲1曲語るアメブロとかどうでしょう?
 あとは定期的なふりかえりブログが好きなので、続けてほしいですね。
 
 さて、配信やアメブロを継続することで、我々ファンは彼女の工夫の豊かさや価値観の面白さに触れて行くことになります。

 もう、SKE48ファンなら盛り上がれること間違いなしのセットリストですよね。

 たとえば、俳句。
 本文の内容とリンクしていて味わい深くて好きのは、こちらです。

 空耳でも声が聴こえたというエピソードも良いですし、公演という空間の大切さを感じました。
 
 さて、話を戻すと、彼女はティーンズユニットに挑戦します。
 残念ながら悔しい思いをすることになりましたが、この時に絆が生まれたことをブログの中で語っています。


 悔しかったティーンズユニットを経て、「大富豪は終わらない」で行われた「大とくさん」のイベントにチャレンジしていきます。
 そして、見事2位にランクイン。
 嬉しさあふれるブログを読んでみましょう。
 ☆中坂美祐☆ありがとう!! | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 「本番で爪痕が残せるように」と書いていましたが、彼女は爪痕を残す役でしたねえ。


 そして、この成功体験は彼女の中での自信となります。

 自信が生まれたからこそ、やってみたいこと、チャレンジしてみたいことをする実行力にもつながる。ファンの方々との絆があるから、チャレンジできると思います。
 
 
 いったいこれから彼女はどうなっていくのか。
 このブログを読んで終わりにしましょう。

 もしかすると、彼女の物語にはいきなりのジャンプアップは無いのかも知れません。
 でも、毎回悔しい思いをした後に、必ず報われる時がやってきます。
 継続と工夫の日々。
 その物語は身近でありながら、我々の中で特別になっていくのではないかと思います。
 自信を身に着けた彼女の次のチャレンジを楽しみにしながら、この記事を終えたいと思います。サビがなんとなく今の中坂さんとファンの方々の関係に似合いそうな小沢健二の「アルペジオ」を聴きながら。


 ※記事に入れられなかったですが、動物に関する価値観も面白いのでおすすめですよ。

2021年11月14日日曜日

心に火をつけて

受け継がれていく理解

 文具メーカーであるコクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として、社内や様々な企業の働き方改革の推進をしてきた坂本崇博さんの著書『意識が高くない僕たちのためのゼロからはじめる働き方改革』が先日発売されました。
 ヲタクである坂本さんが、いかに円滑に仕事を終わらせて家でアニメを観るか、という目標を達成するために、様々な働き方の工夫(個人的には営業の部分と自分の好きなものを仕事の中にうまく入れて行って『志事』にするところが勉強になりました)をご自身でされている様子は、刺激的でした。今月のおすすめ本の一つです。
 さて、そんな坂本さんの言葉の中で凄く気になる言葉がありました。
 それは、仕事の行動力を喩えた「可燃性」という言葉です。
 驚くぐらい雑に紹介すると、会社や組織に入りたての頃は、組織の改革アイディアが沢山出てきます。心が燃えている状態ですね、「可燃性が高い」わけです。
 しかし、なかなかアイディアを行動に移すのは難しいです。
 たとえば、人やモノや金や情報が欠けているという状態ですね。
 この状態が続くと、徐々に燃えにくくなります。 
 坂本さんは「難燃性」の状態に喩えています。
 この状態になると、行動せずに飲み屋で愚痴を言うだけで終わったり、時には周囲の「可燃性の高い」状態の人に水を差すような言葉を言ったりして、相手の炎まで消そうとしてしまいます。ううむ、僕が働いてた会社にもこういう人いたなあ。
 勿論、アイディアをみんながみんな出す必要はないんですが、誰かが設定したテストで高い点数を取る「イチニンマエ主義」とは違うアプローチが必要であると坂本さんは語っています。

 皆さんのいる組織や会社は「可燃性が高い」人はどれぐらいいるでしょう?
 いまのSKE48はどうでしょう?
 鎌田菜月さんがいた頃、彼女の心を燃やしてくれる魅力的な先輩的な先輩たちが沢山いました。
 たとえば、この人。
 かおたんこと、松村香織さん。
 「干されていた」研究生時代から、「人・金・モノ・情報」を持ち前のバイタリティーと企画力でクリアーしていった人物として、SKE48に今も燦然と輝く唯一無二の星座を描いてきた人です。
 ただ、人間としての魅力もとてもあり、人情に厚く、メンバーやファンのことまで考えられる想像力のリーチがとてつもなく長い人でした。
 それは、後輩達に対してもそうです。
 特に6期生たちは、研究生時代から娘のように手をかけ、昇格してからも気にしていたのではないでしょうか?

 ちょっと、2016年9月27日に行われた彼女の生誕祭で読まれた手紙を読んでみましょう。

「なっきーへ

 なっきー、お誕生日おめでとう。初めてお手紙を書くので緊張しています。
 なっきーとは今はチームも違うし、昔に比べて一緒にいる時間は少なくなってしまいましたが、なっきーにとってはとても重要な一年だったと思います。将棋のお仕事ができたこと、本当に凄いよね。おめでとう。
 SKE48として将棋のお仕事をしたメンバーは今までいなかったし、なっきーが新しい道を開いてくれました。そしてそのきっかけはTwitterとかで発信してきたから、きっかけやチャンスはどこにあるかわからないけど、小まめに自分からきちんと伝えていたから将棋のお仕事が出来たんじゃないかなと思います。なっきーにとっては大きな出来事だったんじゃないかな。

 そして私が個人的に悔しかったのは今年の選抜総選挙。正直もっと順位が上だと予想していました。だからすごいビックリした。なっきー自身もショックだったと思います。なっきーのファンの方は投票するやつとかの結束力がとても強いイメージがあるから。でもね、嬉しいこともありました。

 今回のシングル『金の愛、銀の愛』ではネクストポジションに選んでもらったこと。
 ネクストポジションという名前の通り選抜メンバーまであと一歩の位置まで来ているということです。どうなるかはここからの一年の過ごし方にかかっていると思います。
 なっきーはちゃんとしているから、自分自身が一番わかっていると思うけどね。

 頑張ってくださいとは気軽に言えないけど、昇格もしたし選抜メンバーに選ばれることも近くまで来ているからこそ頑張り時だと思います。後悔がないようにたくさんいろんなことに挑戦して新しいチャンスをつかんでください。そして、ダイエットはしっかりやってね。私みたいにリバウンドしないように気をつけてね。いつかまたアップカミングメンバーでご飯に行きましょう。

 かおたんこと、松村香織より」

 もう、鎌田さんとチームは離れても彼女の実績を認めて、最後の一段落の辺りでは心に火をつけるメッセージをくれるかおたん。
 最近、SKE48の映像作品のリリースは減ってきていますが、かおたんを始めとするベテランメンバーがオーディオコメンタリーに居た時の「ああ、こんな一面がこのメンバーにはあるんだ。流石はかおたん」という発見は非常に貴重で、彼女のリクアワでのオーディオコメンタリーを参照にしなければ書けなかった記事もありました。
 この頃の鎌田さんは、目指すべき目標に対して、少しずつ結果を出している頃ではないかと思います(翌年の生誕祭では、初の有言実行が出来なかったことを悔いていますが、翌々年には結果を出しています)。
 それでは、鎌田さんから見た先輩のかおたんはどうだったんでしょう?

(鎌ºωº田)<お寿司は鯛と光り物が好き❤️♡ #松村香織卒業コンサート | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 これまでのSKE48のカラーから見たら異端の存在だったであろう鎌田さん。
 本人は「問題児」と表現していますが、それまでのSKE48研究生のカラーとは違う何かがあったのではと思います。かくいう僕も鎌田さんが入ったばかりの頃は、彼女に対してかなりネガティブな印象がありました。
 しかし、かおたんという自分流のやり方でのし上がるロールモデルがあったからこそ、今のファンの人たちとの出会いがあったのでは、と鎌田さん自身も分析しています。
 理解者であり、先駆者でもある。
 パイオニアになることを恐れない。 

 それは、かおたんと鎌田さんの共通点かもしれません。
 燃える心に水をかけずに、ちゃんと理解をしてあげる。
 それでは、先輩としての鎌田さんはどんな存在なんでしょう?
 まず、彼女自身のブログを読んでみましょう。

(鎌ºωº田)<お腹へりました | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 衣装を通して感じる時間の経過と後輩たちへの想い。
 このブログでもかおたんを始めとする先輩からもらったものについて書いていますが、今の自分に厳しい評価をしていますね。

 次はこちらのブログを読んでみましょう。

(鎌ºωº田)<たーのしーーーーーーい。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)


 鎌田さんの素晴らしいところは、後輩が増えて来て先輩側になってきても、謙虚なところです。後輩の凄さをきちんと認めて、自分も努力をしていく姿勢。これは先輩として素晴らしい姿だと思います。というのも、丁度、昨夜(2021年11月13日)放送の「オードリーのオールナイトニッポン」で若林さんが語っていた後輩をダメにしていく先輩、努力せずに時間を吸い取っていく先輩の話をしていましたが、そちらの方向にならずに進んでいるなあ、と感じます。
 

 そして、これまでのSKE48のパターンではいない後輩への理解も深いです。
 ちょっとこちらのブログを読んでみましょう。

(鎌ºωº田)<カホリウムとは。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 一見タイプは違う二人ですが、SKE48に新しい色を描いてきたという意味では同じかもしれません。
 

 これまでと違うという意味では、同じくチームEの菅原茉椰も同じかもしれません。
 SKE48だけでなく、AKB48の選抜にも選ばれ、ノリに乗っていた状態からの休養期間。
 心のケアは簡単なことではないと思います。
 かくいう僕の職場でも心因性で長期期間休養することになった新卒の女の子がいました。
 僕と同年代の方(30代)でも、「これからあの子に仕事振りにくいわあ」と平気で言う人もいました。
 多少心に傷を負っても続けるのが当たり前、というのが昔の価値観なのかも知れませんが、その価値観に引きづられずに菅原を理解しようとした、当時の運営の方やメンバーの方々は本当に素晴らしいと思います。
 じゃあ、具体的にはどのように菅原に鎌田さんは寄り添ったのでしょう?

 2021年の10月21日に行われた鎌田さんの生誕祭で読まれた手紙を読んでみましょう。


 「ママ、25歳の誕生日おめでとうございます。

 今回の手紙は誰からだと思いますか?そうでーす、よくこの呼び方をする娘、菅原茉椰です。

 ついついママと言っちゃうぐらい面倒見がよくて、聖母のように優しく、頼りがいがあり、美味しいご飯を作ってくれて、周りを見てくれる先輩です。

 ちょっと長くなります。

 具合が悪かった時に何も言わずに薬を渡してくれたりと、ママです。

 ご飯行ったりしたら食べ物を分けてくれるし、食べさせてもくれます。ママです。

 今はそういう機会があまりないですが、食べたいものが2つあったりして悩んでいたら『茉椰はこっちにして、私のをあげるよ』と気を使ってくれます。

 あとお腹空いてたら自分が食べる用に買ってきた食べ物を分けてくれるんです。優しい。

 悲しいことやつらいことがあった時は肯定してくれて、自分の気持ちが軽くなるような言葉を投げてくれます。

 菅原が一時期病んでいた時期があって、なっきぃさん達の前で大号泣したことがあり、その時も慌てることとかなく優しく抱きしめてくれて、たくさんの言葉で励ましてくれました。

 『嫌だ』っていうことがあって、そういう話をしたら一緒に共感してくれて気持ちに寄り添ってくれました。優しい。


 大人の人に言いにくいことや聞きにくいことがあったらその時に空気を読み取ってくれて、代わりに聞いてくれるかっこいい先輩です。気づけるのって凄いですよね。優しい。

 優しいでいっぱいなんです。

 なっきぃさんから優しさをたくさんもらってるのに自分は何かしてあげれてるのかなって不安に思うこともあるけど、この前二人で話した時に悩み、不安を聞くことができて個人的に嬉しかったです。

 いつも聞いてもらってる立場だからこそ、そういう話を聞けて頼られてる気がしました。だから、これからも頼ってほしいです。うまく返事を返せないかもしれないけど、話は聞きますから。なっきぃさんの味方ですから。何があっても味方です。

 なっきぃさんってとっても大人で、周りが見え過ぎちゃってるんです。この人はどういうものを求めてるのかをしっかり見据えて、それに対して仕事をするから本当に尊敬してます。

 求められてることを理解し、100返せるのが凄くて。でも、それはなっきぃさんの見せない努力と、当たり前になっているのが普通で、普段のホワワンという雰囲気から何も感じさせずにやってくるから、なおさらカッコいいです。

 自分にはできないことをできてしまうなっきぃさんの姿にいつも尊敬させられます。だからこそ諦めることもあると思います。

 さっきも言った通り、求められてるものを理解しているからこそ自分にはこれを求められてないとか、これをしてもと言って、客観的に見て諦めてしまうことがありませんか?これは菅原の勝手な解釈だけど、そう思ってしまう時があります。

 求められてるものをこなすのもいいと思いますが、なっきぃさんが求めてるものを、個人の仕事はそうですが、グループ内の仕事でも手に入れて欲しいなと思っています。

 夢に向かって頑張るなっきぃさんを近くで応援したいので躊躇しないでくださいね。何度も言いますが、なっきぃさんの味方なので。

 手のかかる娘の世話焼き、いつもありがとうございます。

 生意気な後輩だけど、ちゃんと面倒を見てくれて、近くにいてくれて、楽しい時間をいつも作ってくれてありがとうございます。これからも一緒にいてください。

 改めて25歳のお誕生日おめでとうございます。

 今年1年いや永遠に素敵な年になりますように。

 大好きです。

 SKE48チームEの菅原茉椰より」


  読みながら、思わず泣きそうになりました。
 菅原が書いている自己像は、鎌田さんがかおたんについて書いたブログの自己像にとても似ています。
 周りのことをよく見て、求められているものも気づける鎌田さん。
 でも、そんな鎌田さんだからこそ、我慢してしまうこともあるのかも知れない。
 だからこそ、もっと自分の求めるものに正直になって欲しい、頼って欲しいという思いが菅原の中に芽生えていったのではと思います。
 鎌田さん自身も菅原について「妹に似ている」とこちらのブログで書いていましたね(タイトルも素晴らしいです)。

(鎌ºωº田)<人生を1日に置き換えるなら私たちはまだ朝。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)


 僕の勝手な妄想ですが、この手紙を読んでいると、かおたんから鎌田さんに受け継がれた思いは、鎌田さんから菅原に受け継がれていくのではと思います。
 

 菅原だけではありません。
 もうすぐ始まるSKE48のユニット曲特別公演では、普段はチームの違う後輩たちとも触れ合うことになります。きっとこの他者への理解はこれからも連綿と受け継がれていくのでは、と思っています。
 そう、きっと心の火を守ってくれる先輩たちがいるからこそ、新しい価値観を理解できる先輩やファンの皆さんがいるからこそ、SKE48は若手も熱く活動できるんだと思いながら、この記事を終えます。


※鎌田さんとはたごん、まーやん、谷の関係について書いたnoteはこちら!
vol.8 君がみてくれていた|栄、覚えていてくれ|note

※鎌田さんの最近の動画だとこちらが本当に凄かったです。