歴史の中に立てるものの強み
突然ですが、皆さんはいまハマっているドラマはあるでしょうか?
地上波だと大河ドラマの「鎌倉殿の13人」と「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」が面白くてですね。どちらも1年間かけて観ていく長編なんですが、毎週日曜日に観るという昭和な視聴形態を自分が取っていることに驚きつつも「リアタイ」の楽しさを味わっています。もうね、源氏の皆さんってなんであんな方々ばかりなんでしょう( 大河ドラマ『平清盛』大好き人間 )?
そちらに対してサブスクでは、Netflixのドラマシリーズが面白くてですね。今は、韓国の「二十五、二十一」にどハマりしていましてね。1998年を舞台にフェンシングの韓国代表を目指す主人公と家が破産した大学生のロマンスを描いています。毎回、主人公は部活や学校生活の中で選択を迫られる場面があります。
第5話で親にさえ否定されているフェンシングで試練が待ち構えています。しかし、もう会えなくなった大学生の言葉を思い出し、「私を信じてくれているあなたを信じる」というシーンがめちゃく良くてですね。まだスマホとかもなかった頃なんで、電話の録音サービスにかけてその言葉を何度も聞くというのが切なくてですね( 遠い目 )。
さて、なんでまあ、こんなに多様なドラマを持ってこれるんだ、とNetflixのドラマについて調べてみると、北谷賢司さんの「エンタメの未来2030」(日経BP)の中でNetflixのポリシーについて次のように書いています。
恐ろしいぐらい雑に説明すると、映画プロデューサーのエリック・ニューマンは、映画製作の今後の参考にするために「ネットフリックスの視聴者データを参考にさせてくれないか?」と同社にお願いしたそうです。
すると「数字に囚われすぎると、同じものを何度も作ることになる。データはあくまでも過去に行われたことで、未来がどうなるかを知らせてくれない」と答え、データは開示してもらえなかったそうです。そういや、デイル・ドーンの「仕事は楽しいかね?」( きこ書房 )の老人も同じこと言ってましたね。「コア・コンピタス経営 未来への競争戦略」( 日本経済出版社 )でも似たようなことを書いてた気がしますね。こちらはより応用的で必要な過去のデータと必要ない過去のデータをもとに、ソニーが「小型化」というコア・コンピタスを持ち、新しいプロダクトを生み出していった前例が挙げられています。
ドラマの話から偉く話が広がっていったなあ、と読者の皆さんは思っているでしょう( 慣れ慣れしい文体 )?
実は、Netflixのドラマ「二十五、二十一」を観ながら思い出したメンバーがいます。
それは、SKE48の9期生であるえなたんこと、鈴木愛菜さんです。
皆さんは、彼女のことを説明する時にどんな言葉で説明しますか?
カミングフレーバーの曲の中に「We are カミフレ!!!!!!!!」という曲があります。
メンバー一人一人の説明をしている曲で、ちょっと聞いてみましょう。
ううむ、「足長、舌足らず、内臓担当」という謎の紹介に、なんとなく外的な要素が伝わってきた後で、「泣き虫だけどみんなの太陽」、「甘え上手な笑顔が可愛い」というみんなから愛される人物なのかな、というのが歌詞から伝わってきます。この曲って朝聞くのに丁度良いんですよねえ。
あとは、先輩との関係でいうとどんちゃんから凄く愛されている子というのが、以前どんちゃんのSNSから伝わってきたり、荒井さんからも愛されている印象があります。
さらに彼女のことを知るために、2020年1月10日、「青春ガールズ」公演で行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「愛菜へ
16歳のお誕生日おめでとう。
ファンの皆さん、スタッフの皆さん、メンバーの皆さん、いつものお世話になっています。この場をお借りして御礼を申し上げます。
こうして手紙を書きながら、これまでの愛菜を思い返しています。
このような機会がなければなかなか思い返すこともなかったかな。
愛菜が私たちの元に生まれてきてくれてから16年間はあっという間でした。
生まれてすぐの検診で足の異常が発見され、小さな体ながら何度も手術を体験し、それから最近まで病院へ通うようになりました。私たち家族に訪れた初の試練でした。
『なぜ愛菜が? 申し訳ない。代われるものなら代わりたい』そんな思いで考え込んだこともありました。
そんな時、『人は平等に苦労と幸せがある』と自分に言い聞かせて期待していたことを思い出しました。
それからはとにかく元気なら何でもいいと思って育ててきましたが、お姉たんの入園式で先生の出欠に対して付き添いの愛菜が全て返事をしていたり(苦笑)、スーパーでお菓子を買わなかったら床に寝そべって大声で泣いてママたんがお客の冷ややかな視線を浴びてみたり、壁に取り付けたタオル掛けにぶら下がって壁ごと引っ張り抜いてみたり、『何考えとるの?』が家族の口癖になるほど常に驚かされっぱなしでした。
めちゃくちゃなことをする度に説教しようとして真剣な顔で愛菜と向き合ってみるものの、つい愛菜の笑顔で怒る気もなくせられました。これがえなたんスマイルの始まりだったのかな?
小学生に入ってからはどちらかと言うと内向きで、人一倍照れ屋で、演劇をしてもちょい役だったり、授業参観の発表でも手が震えているような子がまさか『アイドルを真剣にやりたい。SKE48のオーディションを受ける!』と言った時にはこれまでは何をやっても長続きしなかったし、厳しい世界だからと、期待しつつも軽く落とされるものと思っていました。
でも結果は見事に9期生研究生となりました。
これが遅れなせながら愛菜!鈴木家にやってきた幸せだと思い、自分のことのように喜んだことを覚えています。
SKE48に入ってからは外に出ていることが多いので、スタッフさんやメンバー、同期の皆の前ではどのような態度で接しているのかわかりませんが、家では基本的にツンデレ、負けず嫌いで、なかなか外であった出来事を話さないので、SHOWROOMやモバメで知ることも多々あります(苦笑)。
戦場である劇場公演では年齢の関係で年上の同期より制限がある中で本当は悩んでいたり、悔しい思いもしていると思いますが、今日からはそんな言い訳も通用しないと思います。
今まで以上に同期の皆とどんどん刺激し合って目標に向かって突き進んでください。
愛菜は言葉たらずの子なので常に心配になりますが、今の愛菜が劇場をはじめ、表舞台でキラキラできているのは応援しているファンの方をはじめ、SKE48のスタッフの皆さん、メンバーの皆さんや愛菜に関わってくれた全ての方々のおかげだよ。皆さんに心から感謝してください。
感謝は表現しないと伝わらないので、しっかりと自分の言葉や態度で伝えてください。
最後に、公演のダメ出しが厳しいDMM最前が指定席のママたん、常に愛菜のことを一番に思ってツンデレの愛菜にうざ絡みするシスコンのお姉たん、1時間おきにスマホでタイマーをかけて、オートでほぼ大貧民ながら大富豪をやって応援してくれるじいたん、ばあたん、皆で愛菜を全力応援しています。
この1年でわかったように一瞬で時間は過ぎていきます。1秒後、明日でも、来年でもなく、たった今から始めよう。
愛菜は待っているだけじゃダメなんだ。愛菜の可能性こそが鈴木家の未来。努力することを常に忘れず頑張れ。
愛菜にズッキュンされたいパパたんより」
手紙の中の「感情は表現しないと伝わらないので、しっかりと自分の言葉や態度で伝えてください」という言葉が印象的です。この頃のえなたんは、お手紙の中にあった通り「言葉足らず」な印象をご両親に与えてしまったのかも知れませんが、それは誰よりも長くえなたんのことを見ている人たちだからこその言葉だと思います。
ただ、彼女は、SHOWROOMや公式ブログでは、わりと表現が豊かな方ではないか、と思っています。たとえば、研究生時代に書いた2020年2月20日のブログでは、昇格できなかったことの悔しさでと情けなさで涙が出たエピソードが凄く良くてですね。年齢制限に甘えていたと自己反省しつつ、先輩たちの「大丈夫だよ」や「チームで待ってるね」という言葉を胸に目標を設定して頑張るところとか、本当に素晴らしいと思います。
さて、話を戻すと、DMM最前が指定席のお母さまのエピソードも良くてですね。
朝日新聞デジタルの2021年9月21日号の「SKE48のfor you」でも、お母様のことをスーパーヒーローと語っていますね。SKE48のオーディションを見つけてくれたのもお母様で、アイドルとしての自分も私生活の自分も支えてくれています。
でも、彼女を支えてくれているのは、ご家族だけではありません。
それが伝わるエピソードがあります。
2022年2月10日のチームK2公演で行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「えなたんへ
18歳のお誕生日おめでとう。
頼もしいチームK2の最年少です。
えなたんがいなかったら、もっとチームK2の平均年齢は高かったよ。だから本当にありがとう(笑)。
愛菜はK2の末っ子なのに誰よりも落ち着いていて、周りを観察できて、細かなところに気づける優しい子です。
私の愛菜への第一印象は友達のるんるんとゆきちゃんが溺愛してる子。
プライベートで何度も二人から愛菜の名前を聞いてたし、『とってもいい子なの』って2人が熱く語るから私もどんどん気になってきて、その当時はるんの所に行くと横にひっついてるなって印象だったけど、いつの間にか我らがK2に昇格してきて、個人的に気になってるえなたんをようやく私も堪能できるな~と密かにワクワクしてました。
そんなきっかけから愛菜のことが気になって、色んな話をしていくうちに愛菜の人懐っこさに私もメロメロになりました。
ただ人懐っこいんじゃなくて、絶妙な空気の読み具合で、絶妙な距離感で、心地の良い感じでなついてくれるなって私は思いました。
嬉しい時は少し照れながら喜ぶし、悲しい時は最初強気なのに話しているうちにしょぼんとしちゃうところ、素直ってわけじゃないけれど感情が見えるところが可愛いなと思います。
SKE48でもあり、カミフレでもあり、学生でもあるえなたん。全部の両立が大変そうで心配になります。
10代なのにカミフレでの経験もあって、アイドルとしての姿にただ夢を見てるだけじゃないえなたん。
えなたん推しの皆さんにお願いです。愛菜のことをどうかこれからも応援よろしくお願いします。
今更当たり前のことを、と思うかもしれませんが、SKE48の愛菜とカミフレの愛菜、どっちも存在するのは当たり前じゃなく幸せなことです。
愛菜はSKE48のオーディションを受けた子です。だから、SKE48としての夢も見させてあげてください。しっかり者の愛菜だからあまりわがままを言わないかもしれないけど、若手コンで『悔しい』と話してくれました。余計なおせっかいしてごめん、えなたん。
でも私はえなたん推しに愛菜が昇格したての頃、たくさん『愛菜をよろしくね』と言われました。
そして、私はもう卒業します。だから今度は私から皆さんへのお願いです。愛菜をよろしくお願いします。
えなたん、甘えたい時はたくさん甘えていいんだよ。嫌だって思ったことは伝えてもいいんだよ。ファンの皆はとっても頼もしいです。なんかあって助けを求めたら全力で助けてくれます。わがままなくらいが丁度いいんだよ。
ファンの皆様には負けますが、私もアイドル歴12年。人生もうすぐ30年。きっと少しは役に立てると思います。
もうすぐ離れ離れになっちゃうけど、くだらない話でも、悩み事でもいつでも聞いてあげるし、たまには遊ぼうね。
5月からは18歳と29歳のお友達です。だからこれからも仲良くしてね。
お誕生日おめでとう。
るんぴより」
ううむ、えなたんの理解者の一人であるみなるんの愛が伝わる手紙ですね。
「素直じゃないけど、感情がみえる」という表現が良いですね。
カミフレとしての彼女とSKE48としての彼女。
みなるんの手紙の中にある「SKE48としての夢」は、ここに書くのは野暮なので書きませんが、新世代コンサートの「悔しい」とも通じるあれではないか、と僕は思っています。
さて、彼女は2年ぶりの生誕祭で、まず、K2のあったかさについて語ります。
そして、「今でも心の中で思ってることがあるけど、自分じゃ無理だなって思ったりして消極的になることが多いんですけど、18歳で変えられたらいいなと思ってて」と語ります。そして、「なんだか口下手だから凄い上手には話せないんですけど、何となく感じ取ってくださったら嬉しいです」と信頼するファンの方々とのコミュニケーションについても語ります。
そんな彼女のスピーチの中で、印象に残った部分が一つあります。
「なんかこれから目の前のことしか見えないから未来のことを考えて未来の自分が困らないようにひとつひとつの決断に、何て言うんですか、何て言うの、決断に、自信を持って、あの、責任を持ってできたらいいなと思うので、正しい道に進めなくなりそうになったら皆さん、どうか引き戻してください。私は意思が弱いので、すぐ皆に言われたらきっと戻る人なので、助けてください」
これは、簡単に言えることではないと思います。
未来に責任を持ちつつも、こんな不確かな世界にいると道を間違えるかも知れない、でもファンの方々なら引き戻してくれる。そんな信頼感を感じます。
そして、「二十五、二十一」で登場した「自分を信じているあなたの言葉を信じる」という想いに通じるものがあると僕は思います。どうしても、自分の決断に責任を持つというと、意固地になって選択を変えられなさそうですが、きちんと他の人の意見に耳を傾けられる柔軟性が彼女にはあります。
SKE48の良いところの一つは、歴史があるところだと思います。
えなたんが持った目標や夢によっては、過去の素晴らしい成功例がSKE48には沢山あります。そういう意味ではキャリアが長く、多ジャンルで活躍できるメンバーの多いチームK2に居るのは、理想的なのではと思います。
その中でNetflixのように過去のデータが全てじゃない、新しい選択肢をどんどん増やすというのも良いと思いますし、コア・コンピタスのように未来を想像しながら過去の戦略を更新し続けるのも良いと思います。
どちらを選んでも、えなたんには頼もしいファンの方々がいます。だから、えなたんが次に言葉にする目標がどんなものか、楽しみです。
SKE48の歴史の中にえなたんが、ファンの方々と一緒に新しい実績を残す日が近いと僕は予想してます。