人気の投稿

2021年7月31日土曜日

未来で待っている

 彼女が帰ってきたこと


 2019年4月21日。
 あるメンバーが活動の休止を発表します。
 彼女の名前は菅原茉椰。
 SKE48のドラフト2期生です。
 彼女は、2015年のSKE48のチームEがドラフトで獲得。
 同年8月31日に行われた松井玲奈の卒業公演にもバックダンサーとして出演、2015年11月25日発売のSKE48の派生ユニット「ラブ・クレッシェンド」の僅か7人の枠に選ばれ、2016年3月30日発売の「チキンLINE」で初選抜。しかし、そこから暫く選抜からは離れ、2018年1月10日発売の「無意識の色」で選抜に復帰します。SKE48の10周年という記念すべき年の始まりを告げる曲で選抜復帰した彼女は、このグループが再起するために重要なファクターになるのではないか、と考えさせられました。

 同年の「いきなりパンチライン」での大人っぽい曲調との相性の良さ、「Stand by you」でのチェックのロングスカートの衣装が映えるスタイルと、この年はリリースされる作品作品で彼女の魅力を発見させられることが多かったです。個人的な体験になりますが、「Stand by you」のリリース時に大阪のTSUTAYA戎橋店にSKE48のメンバーが来ることがありました。この時観た菅原の笑顔がとても素敵で、彼女がいるだけでメンバーやファンの方の幸福度が上がるんだろうな、と感じました。

※くわしいレポートはこちら!

栄、覚えていてくれ SKE48の曲と映像の魅力: 2018年12月11日 TSUTAYA戎橋店 お渡し会 イベントレポート (oboeteitekure.blogspot.com)

 菅原の目を細めて「んー!」みたいな顔で美味しい物を食べる笑顔なんかも好きですし、「ストレートな純情」などで見せる静かな表情も素敵な彼女ですが、次作の2019年7月24日発売の「FRUSTRATION」では、活動休止期間に入っていたため、選抜から外れてしまいます。それから彼女は、約2年間選抜から外れます。
 ちなみに、彼女が活動休止を宣言したのが、2019年4月21日。活動を再開したのが、同年の8月18日。数字にしてみれば約4か月の休養かも知れません。ただ、この文章を書いている私はSKE48の10期生、五十嵐早香を推しているので、推しが活動を休止している間の時間の長さは、もの凄く長く感じました。
 SKE48に帰ってきた彼女は、選抜にこそ選ばれることはなかったものの、活動を続け、「ああ、やっぱり菅原がいるチームE、SKE48っていいな」と思わせるのと同時に「彼女がもう一度選抜に選ばれる可能性は?」と考えさせられました。
 なにせ、彼女は2018年の最後の総選挙では29位にランクインしましたし、同年のAKB48の「NO WAY MAN」の選抜にも選ばれていました。ファンの方々からも運営からも「この子には何か期待できるものがある」という実績だったのではないか、と思います。

 さて、それではここまで色々な人を惹きつける菅原の魅力とは何でしょう?
 ルックスやスタイルの良さがあるかも知れません、僕も後藤楽々や谷真理佳と一緒にふざけている様子とか大好きです。でも、彼女の魅力の芯にあるのは、人柄ではないか、と思います。

 2019年1月10日に行われた菅原の生誕祭(活動を休止する前の生誕祭です)。
 その時に読まれた須田亜香里が書いた手紙が、ヒントになりそうなので読んでみましょう。

「菅原へ

 誕生日おめでとう。

 須田さんです!

 今日一緒にお祝い出来ないのが寂しいけど、ファンのみんなへのサプライズプレゼントにするって張り切っていたおニューの髪型でキラッキラに輝いていることを心から願っています。

 菅原の第一印象は自分のことよりも仲間を大切にする子、です。だって菅原、ドラフト候補生の中でめちゃめちゃダンスが下手なのに、他の悔しくて泣いている子につきっきりで慰めているんだもん。

 普通なら人にかまっていられるほどの余裕もない状況で、しかもライバルだらけの中で優しさを当たり前に周りの人に注いでいる姿を見た時に「魅力的だな」って思いました。

 そして、菅原はたくさんのチャンスとタイミングに恵まれたり、恵まれなかったり、とにかく壮絶なSKE48人生を送ってきたよね。

 でも、表からは恵まれているところのほうがやっぱり注目されがちで、処理しきれないほどの思いと戦いながら、ここまで来た姿を見てきた。

 だから、そんな菅原が去年AKB48の「NO WAY MAN」の選抜に抜擢されたこと、これは本当に凄いと思った。

 もちろん、悔しさを感じたメンバーもいたと思うけど、選ばれたのが菅原だったからこそ、みんなもその気もちを刺激に変えて頑張れているんだなと思う。

 歌番組の空き時間にはたくさん一緒に出かけたね。なかでも印象的だったのはスカイツリー。私がなんとなく思いついて修学旅行に行こうと誘ったら、菅原がめちゃめちゃ喜んで、子供みたいにはしゃいでくれた姿が忘れられません。嗚呼、この子はSKEのために色んなものを我慢して頑張ってきたんだなってジーンとしました。

 そんな「NO WAY MAN」のリリース期間が終わったけど、あの場所に堂々と違和感なく、しかも祝福されながら存在した自分に自信を持ってね。

 まさか、これでAKB選抜の期間が終わったなんて思ってないよね?
 例えゆっくりでも、時間はかかっても選抜常連になろう。

 それから、どんなに振りが難しくても、端だからあまり映らなくても、忙しすぎる時だってあったけど、弱音も不満も言うことなく、本当によく頑張った。そこも菅原の凄さと信頼される理由なんだろうね。

 チャンスが巡ってこない怖さも知っていて、選ばれるプレッシャーも知っている。そんな菅原の器の大きさを近くで見られて私も凄くパワーをもらいました。ありがとう。

 それから、菅原にとってファンの方の存在が凄く大きな支えだってこと。それをわかっているからこそ、菅原はいつも「これをしたら菅原のファンの人はどう思いますかね?」とじっくり考えたり、相談してくれるよね。

 今回、髪を切るという大きな変化に挑戦した菅原を、変わらず愛してくれる人がいることで、菅原のビジュアルだけじゃなく、中身も魅力的だと思ってもらえることを再確認して、これからの一歩の自信にしてね。
 

 菅原がMCで一緒になった時の安心感、私は凄く感謝しているよ。

 菅原がいるSKEが好き。

 改めて宮城県から愛知県に来てくれた菅原の決意に感謝しています。

 たまにブスとか言ってくるけど、本音じゃないこと分かってるよ。

 可愛くて頼りになるチームEリーダー須田亜香里さんより。 」


 当時の菅原の置かれていた状況、そして、彼女の魅力として、「ライバルだらけの中で優しさを当たり前に周りの人に注いでいる姿」とだーすーは表現していますが、まさにその通りで、彼女のメンバーへの優しさは、素晴らしいものがあります。
 アイドル、しかも48グループという競争社会において、個人戦が主流になりつつある中でのこの姿勢は貴重だと思います。
 そんな菅原の人柄が伝わる手紙を2通ほど続けて読んでみたいと思います。
 まずは、2018年2月16日に同期である一色嶺奈に送った手紙です。

「嶺奈ちゃんへ

 16歳の誕生日おめでとう。

 初めて嶺奈ちゃんにお手紙を書くので緊張しています。

 嶺奈ちゃんとは第2回ドラフト会議で出会いましたね。

 バイトAKBと聞いたので『この子踊れる子だ』って思ってたけど、なかなかダンスが踊れなくて、ずっと3軍で頑張ってきたよね。

 そんな嶺奈ちゃんが東海テレビのスタイルプラスさんで『Escape』を踊っているのを見て嬉しかったし、自分も負けてられないなって思えたよ。

 なんか、自分も踊れないけど、嶺奈ちゃんがだんだん踊れて行く姿を見ると嬉しいよ。

 去年の選抜総選挙の速報で嶺奈ちゃんの名前が呼ばれた時は嬉しいと思う反面、悔しい、負けたくないって思ったよ。

 嶺奈ちゃんはよき仲間であり、成長し合える関係、ライバルだと思います。

 一緒に関西コレクションに出たり、一緒にダブルセンターしたり、一緒にラブ・クレッシェンドに入ったり、『Passion For You』のファッションCM選抜で1位になったり。

 ファッションCMのことで悩んでて相談してくれたけど、最終的には自分の意思でやるっていることをちゃんと決めて、「嶺奈ちゃん!」ってなったよ。

 嶺奈ちゃんは自分がしたいこと、意思をハッキリ言えばいいし、周りの目を気にせずにアイドルをやってほしいです。

 そばには嶺奈ちゃんのたくさん思いを受け止めてくれる優しいファンの方がいます。嶺奈ちゃんのことが大好きな人たちしかいないから、周りの目とか凄く気にしちゃうかもだけど、ファンの方もいるし、菅原もいるよ。

 そんな人がいたら菅原がボコボコにします。できるかわかんないけど。

 マジ、誰目線?って思うかも知れないけど、のびのびSKEを楽しんで欲しいです。

 Twitterのテンション高い嶺奈ちゃんがステージでも出るぐらい。SKEを楽しんでやってほしいです。

 どんな嶺奈ちゃんでもみんな好きだよ。

 いつかまた嶺奈ちゃんとダブルセンターができる日がくることを願って、これからも頑張りたいと思います。嶺奈ちゃんも頑張ってね。

 今回お手紙を書かせてくれた生誕委員の皆さん、最後までお手紙を聞いてくださった皆さん、ありがとうございました。

 嶺奈ちゃんの16歳の1年が素敵なものになりますように。

 改めて誕生日おめでとう。大好きです。

 P.S.

 自分の誕生日忘れないでください。

 SKE48チームE 菅原茉椰」

 繊細なひゅーさんのことを思って書いた言葉から、菅原の声が聞こえてきそうな文体。先ほどのだーすーの手紙に出て来る、自分もダンスが踊れないのに仲間のことを思える彼女の優しさを感じます。菅原とれなひゅーのダブルセンターも、もっと見てみたかったですね。

 もう一通、菅原の優しさが分かる手紙があります。

 2021年1月27日に行われた白井琴望の卒業公演で読まれた手紙です。

「 こっちゃんへ

 卒業おめとうございます。
 まさか自分より先に卒業すると思わなかったし、永遠にアイドルでいると思っていたので悲しいです。

 卒業発表してから今日が来るまでの時間が長くて、本当に卒業するのかなって思ってたけど、この手紙を書いてて今日一緒に公演に出て卒業することを凄く実感しています。

 可愛い妹みたいで、隣にいてくれたこっちゃんがもういないんだ、家族ぐるみでよくご飯とか遊びに行ってたのがもうないんだなって。

 実際ここまで仲良くなるとは、本当に思ってなかったです。だってSKEに入るまではちゃんと喋った記憶ないし、ご飯とか食べた記憶ないです。

 でも、こっちゃんのことはオーディションの時から覚えています。オーディションからすごくアイドルだな、気合が他の人と違うってめっちゃ思ってました。

 確かオーディションの3次審査が一緒で、歌唱審査の前にこっちゃんが歌い始めたと同時に動きだして、端から端まで使って踊って審査会場が一気にステージみたいになったことがめちゃくちゃ印象に残っています。

 オーディションからのプロ意識が凄くて、ドラフト受かってからもそのプロ意識が途切れることなく、最後まで駆け抜けててかっこよかったです。

 常に自分にストイックで、自分を覚えてもらうために、ファンの人に喜んでもらえるようにたくさん考えてアイドルしてたよね。

 それって本当に凄いことだし、難しいこと。
 SHOWROOMで毎日アイドルをして、でも毎日違うことをして。パンダをジャグジーで洗ったり、とびかかったり、15時間連続でSHOWROOMをしたり、色んな工夫をして毎日ファンのことを楽しませてたよね。

 ファンの人以外でも話題になってたりして、発想力が他の人と違うから色んな人に見てもらえたと思います。

 YouTubeもそうです。自分にはそれをやろうというのがなかったので、新しいコンテンツを使ってアピールしたりして、自分の道を切り開く姿が年下とは思えないぐらいカッコ良いと思いました。それにこういう仕方もあるんだなって、たくさん気づかせてくれました。

 表では凄くキラキラしたアイドルだったけど、裏ではつらい思いもたくさんしてきたと思います。

 これから言うことは失礼なことかもしれないけど、許してください。

 こっちゃんはどちらかというと、運営から推してもらえるタイプではなく、自分からチャンスを掴み、自分で何かをして推してもらう努力型タイプだったと思います。

 その努力は色んな面で発揮されてて、「Passion For You」で自らゲームに取り組み、ファンの人と親身になってCM選抜に4年連続で入ったり、SHOWROOMをして更にパンダキャラを知ってもらって、それで「有吉反省会」に出たり、じゃんけん大会で3位になりソロ曲をゲットしたりして、自分から推してもらう機会を作って行ったと思います。

 自分的には、こっちゃんの頑張りに対して全てが報われる結果にはならなくて、もっと評価されてもおかしくないと思ってました。

 でも諦めずに最後まで信念を曲げずに突き進む姿にファンの人は心をつかまれ、応援する人がたくさんいたし、先輩後輩関係なく全てのメンバーが尊敬し、憧れてました。

 これからはアイドルの道から離れるけど、今までのアイドル生活で経験してきたことは、これからの人生にも活きることなので、どうかそのままのこっちゃんでいてください。そして、今まで通りに菅原と仲良くしてください。

 色々と収まったら、宮城にも行きましょう。

 今まで本当にお疲れさまでした。そして、本当にありがとう。

 大好きです。

 P.S.

 お手紙を書いている時に出会ってしまって、サプライズじゃなくてごめんね。

 SKE48チームE・菅原茉椰」

 こういうブログを書いているとメンバーの魅力について書くことが多いんですが、こんなに的確なこっちゃん評はなかなか無いんじゃないでしょうか?
 宮城から出てきた彼女に、優しく接してくれた白井家の皆さん。
 僕らファンが知らないこっちゃんの姿も沢山みてきたかも知れません。
 そして、近くにいたからこそ、より鮮明に見えるこっちゃん像。
 これだけ、人のことが見えているからこそ、人に優しくできるんでしょうね。

 彼女は、2019年4月30日のアメブロに「Stand by you」選抜として最後のブログを更新します。

 おやすみします(ma¯﹀¯ya) | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

  少し寂しいですが、また帰ってくるという彼女の気持ちを感じる文章ですね。

 復帰後の彼女の活躍については、また時を改めて触れたいと思いますが、復帰した彼女は選抜に入らないものの存在感を公演やイベントで示し続きます。

 そして、「あの頃の君を見つけた」での再選抜。
 ※思えば「無意識の色」で再選抜になった時のブログも印象的でしたね。そして、選抜落ちしても優しさを感じる「チキンLINE」のブログも。

 菅原茉椰、復活(ma¯﹀¯ya) | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 予感(ma¯﹀¯ya) | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 先日の追加情報の配信での菅原の叫びが忘れられません。


 「あの頃の君をみつけた、あん時に私は言ったんですよ。お前は選抜に戻れる。そしたら、戻ってこれました!みなさんのおかげです!ありがとうございます!」

 2019年の4月30日の菅原は、この未来が見えていたのか、信じていたのか、それは彼女にしか分かりません。でも、それだけの実力を彼女は持っていました。
 2度目の選抜復帰はSKE48の歴史の中でも珍しいのではないでしょうか?
 そして、一度は選抜から外れてしまったメンバーの希望にもなります。
 今、活動が辛くて休養をしたいと思うメンバーの未来への不安が、少しだけ軽くなるとも思います。

 今のSKE48の状況は決して良い状況とは言えません、コロナによる影響だけでなく人気メンバーたちの卒業もありました。しかし、若いセンターへのバトンタッチや新しい形のファンの方々との交流の形も模索しています。きっと上手くいくことばかりではないでしょう。
 そんな時、ファンやメンバーの心を癒してくれるのが菅原の優しさや洞察力かも知れません。彼女がいる組織の空気は違うと僕は思います。これまで挙げてきた彼女の本質とポテンシャルを知っていれば、今回の選抜復帰は納得のものだと僕は思います。
 また、全国放送の音楽番組で菅原の雄姿が見られることを願ってこの記事を終えたいと思います。
 

 

2021年7月25日日曜日

サングラスデイズ

 視線の行方について

 2021年7月24日。
 STU48の1期生と3期生が歌う「サングラスデイズ」のPVが公開されました。

 
 まずは、歌詞の世界から見て行きましょう。
 1番のAメロでは、クラスメイトと砂浜に来ている暑い夏の場面から始まります。
 大人しいタイプだと思っていた普段の「君」とは違って、少し攻めた水着は制服の印象とは違います。
 1番のサビ前では、「僕」の視線から見た「君」が違うということは、「君」の視線から見た「僕」が違うことに気が付きます。普段と違う姿を知ること、あるいは、気づくことが「恋のはじまり」ではないか、と僕は気づきます。
 サビでは、「サングラスデイズ」というタイトル言葉が出てきますが、夏の日差しを遮る為のサングラスと君の眩しさをちゃんと見られなかったから、という二つの意味が明らかになります。
 「グローイングアップ」には様々な意味がありますが、ここでは「大人になる」という訳が一番ぴったりではないか、と思います。あっという間に大人になっていく青春のひとこまが、ここで描かれていますね。

 2番では、名前を「くん」付けで呼ばれる恋人になる前の二人の関係が、垣間見えます。1番の「攻めた水着」の「君」について、「いやらしい目」で見てないように思われるにはどうしたらいいか、考えます。ここでも視線について考えさせられる歌詞がでますね。
 2番のサビ前では「いつのまにか」という時間の経過を表す言葉が繰り返され、二人が大人になっていったことが表されます。
 2番のサビでは、どうやら「僕」がサングラスをかけていることが描かれます。エイティーンがずっと先と言っていることから、かなり若い「僕」のようにも思えますが、ティーンズの頃の1年って凄く長く感じるので、ひょっとすると、17歳の可能性もありますね。
 個人的には、突然ドンっと変わるんじゃなくて、グラデーションのように些細な変化が起こっているという2番のサビが歌詞が好きです。サングラスもその一つなんでしょうね。
 大サビでは1番のサビが繰り返され、この夏が青春だと感じさせる終わり方をしています。「Lalala」の繰り返しが夏の余韻のようで良いですね。

 さて、次はメロディーについてなんですが、ギターの音が印象的なイントロから、どんどん音が広がっていくんですよね。個人的には「Everydayカチューシャ」を思い出しました。全体的に48の夏曲を思わせる爽やかな感じが良いですね。
 歌詞のように夏のおでかけに聴きたい心地よいメロディですね。
 
 PVについては、初見の際は「予算、あんまりなかったのかな…」とも思ったんですが、そんなことを思った僕に瞬獄殺を丁寧におみまいしたいぐらい、この曲はSTU48号との想い出が映像として残されているんですよね。一人一人のメッセージが出るところで「ラララ」と流れたら泣きそうになりますよ。そして、STU48号で公演をしていた日々も、もう戻らない青春であると意識させられます。
 メンバーそれぞれのサングラスと夏服も素敵です。
 4分20秒頃からの全員が映るところでは、曲の主人公と違った意味で、目のやり場に困ります。メンバーみんなそれぞれの魅力を発揮していて、どこを見れば良いんだ!となります。勿論僕は左下の方を観ていました。ええ、兵頭葵さんのいる左下の方ですね。あと、甲斐心愛ちゃんも偶然、たまたま、奇跡的に左下にいましたね。もう、どっちを観れば良いんだ、となったのは僕だけじゃないはずです!
 PV化することで、曲にSTU48号の思い出が重なって、いつまでも曲の中で思い出が残っていく素敵な計らいだなと思います。
 ううむ、SKE48の夏曲といい、今年の夏は良曲が多いですね。
 STU48の次のシングルがどんなものが来るか、楽しみにしています。
  
 
 

可能性をくれる二称的自由について

 「あなた」がくれるもの


 分析哲学者の青山拓央さんの著作の中に「時間と自由意志」という著作があります。その中に出て来る「二人称的自由」という概念が凄く面白くてですね。形而上学や哲学を専門にしている山口尚さん(京都大学講師、最新刊の『日本哲学の最前線』が超分かりやすいのでおススメ!)の例を借りると分かりやすいので拝借するとこんな感じです。
 タリーズコーヒーで僕がつまらないブログを書いたり、本を読んでいたりする。周りのお客さんはいますが、お互いに干渉しません。ちょっと賑やかな席があれば離れた席に移動することで解決します。僕は自由を満喫できます。そして、僕にとって他のお客さんは「彼や彼女」であり、第三人称の知らない人たちなんですよね。
 それに対して、突然、「あなた」と呼べる知り合いが僕に気づいて席に座ってきたとしましょう。「やあやあ、紅條さん。またつまらないブログを書いてるんですか?」とか言って。僕はブログを書く手を止めたり、本を読む視線を「あなた」の方に移さなければいけません。
 「あなた」が僕に話しかけてくる自由が、僕の自由を制限してしまう。「あなた」が僕に関わることで得られる承認感や自己肯定感は、ひょっとすると、誰かの不自由につながるかもしれない。自由論と不自由論が重なった「二人称的自由」を着想に、自由意志、そして自由でも不自由でもない「無自由」という凄まじい着想に青山さんが辿り着くんですが、僕はこの着想点が凄く興味深くてですね。
 これをアイドルの世界にあてはめると、SNSや握手会で「あなた」と「彼や彼女」の間にいる人達から沢山の関わりを持つことになるなあ、と思いましてね。

 これが上手に機能している例はないかな、と考えていると、SKE48の鎌田菜月さんのブログを思い出しましてね。
 ちょっと読んでみましょう。

(鎌ºωº田)<やばいやつ。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 高校卒業に必死だった鎌田さん。
 「鎌田のアンダーが見たい」という「あなた」たちの声。 
 高校を卒業するという視点から見れば、「あなた」たちの声は一人称の「私」を困らせる声になります。しかし、その声があったからこそ、アイドルとしての鎌田さんにチャンスが訪れたわけです。
 これは「二人称的自由」が良い方に機能した例ではないでしょうか。勿論、その背景に鎌田さんの努力があったというのもあると思います。
 また、このブログで印象的なのが、「でも勘違いしないでほしいのは、求める型や結果を押しこうもうとするお説教は別!」というのも、この「あなた」が関わることで生じる「不自由」を未然に防ぐ感じがして素晴らしいですね。丁度、新センターが発表されたSKE48ですが、「センターはあの子じゃないとダメだ!」とか「センターたるものこうあるべき!」という枠に収め過ぎるのは良くないですね(急に反社会的なことをし始めたら話は別ですが)。思えば、握手会でもメンバーの為を思って気になったところを言って下さる方もいれば、自分の考えるアイドル像で居て欲しいという支配欲が高い「あなた」もいるかもしれません。
 

 更に「あなた」と鎌田さんとの関係を感じられるブログを読んでみましょう。


 (鎌ºωº田)<お手紙の続きも。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 読みながら、泣きそうになりました。
 まだ滑走路だった頃から握手に来てくれた人。
 そして、「ちはやふる」を教えてくれた人。
 この場合のファンの方は、名前を知らないどこで何をしているかは分からない「あなた」でありながら、それを超えた影響のように感じます。
 そして、このブログを書く鎌田さんの一人一人のファンの方への思いも感じられます。そういえば、2017年の生誕祭スピーチでは「皆さん一人一人、応援して下さる方の代わりって、誰一人いなくて、きっと一人でも欠けたら、今の私はいません」と語っていましたね。
 たとえ、名前は知らなくても、自分の中の一部を作ってくれた人達がいる。
 上記のブログや生誕祭のコメントを見ると、それがおべんちゃらじゃなく、本当にそうなんだな、と考えさせられます。だって、極端なことを書けば、握手会で何をおすすめされようが、アドバイスされようが、ガン無視することもできるわけじゃないですか。SNSへのコメントやアメブロへのコメントも。でも、一人一人のことを大事に思える。それを飲み込める、取り込める器がある。鎌田さん推しじゃない僕から見ると、鎌田さん推しの方々は、推してて楽しいだろうなあ、と思います。

 これからも、自分に良い影響をあたえられる「あなた」に鎌田さんが恵まれ続けますように。そして、鎌田さん自身が実は我々に素敵な影響をくれる「あなた」ではないか、と気づいたところで、この記事を終えます。


2021年7月23日金曜日

あの頃の君をみつけた

今とあの頃が交差する場所


 2021年7月22日12時。

 SKE48の新曲「あの頃の君をみつけた」のセンターとMVが発表されました。
 新センターは、10期研究生の林美澪。まだ12歳です。今、このブログを書いているのが、7月23日の14時頃なので、発表から24時間でもうすぐ6万再生に迫る勢いです(多いと感じるか少ないと感じるかは、前作のデータと照らし合わせれば良いんですが、前作の24時間後の数字を取ってなかったので、比べられないんです。トホホ)。

 まずは、MVを観てみましょう。

 
 まずは、歌詞の世界から見て行きましょう。
 1番のAメロでは、曲の主人公である「僕」が、ある通学路で夏の制服を着た「後輩たち」を見つけます。ここでのポイントは「懐かしい」という感情を「僕」が抱いていることです。主人公はもう「通学路」を利用していない大人なんだということが分かります。
 だからこそ、自転車を押した距離が青春だと気づくということを考えられるんでしょうね。
 
 サビ前では主人公の「僕」が、好きな気持ちを伝えられずに、友達のままで居た過去が回想されます。
 
 そして、サビです。
 「僕」は「あの頃の君」を通学路を歩く後輩たちの中に見つけます。
 しかし、それは見た目が似ているわけではなく、シチュエーションだということが2番の歌詞から分かります。場所から起因される切ない思い出の記憶。
 個人的には、かなり純文学的で秋元康文学の中では、久々に力が入ったのが来たなあ、と思っています。

 2番のAメロでは、通学路の後輩達の制服に目を移し、そこから感じる眩しさは太陽の光ではなく、未来の可能性による輝きだと語っています。ここも面白くて、制服の後輩たちが可能性のある未来へと時間軸がおそらく進んでいるのに対して、「僕」は反対に過去である「あの頃」を見ているんですよね。
 2番のサビ前では、時間の経過の早さをリュックサックの重さで分かると語っています。このことからも、「僕」はもう学生ではなく大人なのではないかと考えられます。
 そして、2番のサビです。
 「あの頃」ではなく「目の前」にいた「君」は一瞬でいなくなり、「思い出」に変わります。この辺りは1番の歌詞や2番のサビ前の歌詞ともリンクする大人だからこその感覚ですね。今を生きている「後輩たち」にはまだ実感できない。
 そして、「思い出」だからこそ、「永遠に好き」なんですね。

 大サビ前では「あの頃」の自分によく似た「彼」を見つけて、応援したくなります。
 「君」だけではなく、「僕」も自分で見つけたんですね。
 
 大サビでは、1番のサビを繰り返し、最後のフレーズに進んでいくんですが、ここで、場所に関する心情の歌詞であることが明示されます。誰にでもある好きな人と通った思い出の場所。
 歩く人は変わっても、気持ちや思い出は変わらない。
 なんだかこの辺りは深読みすると、秋元康の2021年のSKE48観を聞かされている気にもなりますが、深読みだと思います。

 メロディに関しては、凄くサラッとした爽やかなもので、サビのフレーズが頭に残ります。
 新センターの林美澪ちゃんにも似合う清涼感のあるものになっていますね。

 MVに関しては、初めて観た時の印象では、「いや、天気違いすぎだろ!」でしたが、一人一人のバストショットでのシーンが良いものが多いですね。こっちは凄く天気が良くてメンバーに当たる光も明るいんですがね。
 個人的には、古畑奈和ちゃんの空を見上げるような角度で目を閉じているところがお気に入りです。
 あと、選抜に復帰した菅原の笑顔が眩しかったです。
 「意外にマンゴー」の上空からの映像だったり、「前のめり」の桟橋だったり、多分、「あの頃」を沢山持っている人にはレイヤーがいくつも重なるものになっているのでは、と思います。
 でも、新センターの林美澪ちゃんやこれからSKE48を作っていくまだ期の若いメンバーには、「あの頃」を超える「今」を見せつけて欲しいと思います。
 
 ちなみに、この曲を秋元康の曲の系譜で言うと、「君はメロディ」に近いかなと思います。思い出が起因されるのが場所である「あの頃の君をみつけた」に対して、「君はメロディ」は懐かしいメロディなんですよね。思えば、あの時は、前田敦子が限定復活、今回は珠理奈と同じシチュエーションのセンター。
 分かりやすいと言えば分かりやすいんですが、場所や音楽という変わったり流れたりしていくものに対して、思い出だけはそこにある、という文学性が好きです。
 
 いつか、林美澪さんが卒業する時、僕らはこの曲を聴いて「あの頃の君」をみつけるのかも知れません。

2021年7月18日日曜日

静かに流れる言葉

 受け継がれていく意志


 

 皆さんは、自分が組織の中で一番最年少だった経験はあるでしょうか?
 その時、先輩からかけてもらった言葉で印象的なものや、自分の指針になったものがあるでしょうか?
 僕は新卒1年目の時に、上司が何故か「潜ってきた修羅場が違う」ということを言っていたせいで、やたらと「修羅場に行ってみたいなあ」とバカ丸出しな影響を受けていました。


 SKE48が生まれて早くも12年の月日が過ぎました。
 その中で何人もの最年少メンバーが加入してお姉さんになり、次の最年少メンバーが入ってきます。センターを長年務めた松井珠理奈もAKB選抜の中で多くのお姉さんたちの中で過ごしながら、沢山のことを学んで行ったのではないか、と思います。


 ドラフト2期生の上村亜柚香も加入した時は、まだ11歳で最年少メンバーでした。
 チームSにはまだ宮澤佐江もいましたし、矢方美紀や竹内舞という公演の空気を作ることが出来るお姉さんたちが沢山いました。
 その中で彼女は、少しずつSKE48に成長していきます。
 加入から約3年が過ぎた頃の2018年1月28日に行われた上村亜柚香生誕祭の手紙を読んでみましょう。

 「亜柚香へ

 亜柚香と初めて出会った時、『なんだこの子供は』とその時、15歳で子供だったちかも思いました。

 先輩にたくさん甘えていて、ちかが先輩といた時、横から『ちかさん、ちかさん』と来て、ちかが話してた先輩はみんな『亜柚香可愛いねー』って言われ、いつも嫉妬していました。

 そんな亜柚香も今はたくさんの後輩がいます。

 でも、最近の亜柚香を見ていると、どこを目指しているのか正直分からないことがあります。

 亜柚香は今、自信を持って、これだけは誰にも負けへんってことがあるかな?もしあったとしてもちかから見て、伝わらないなーって感じる時もあります。あなたはもっと殻を破れます。楽屋のあの亜柚香をステージでもっと出してほしいです。

 他のチームにいるメンバーに『チームSに私がいたらもっと前に立てる』って言われること、めちゃくちゃ悔しくない?

 ちかが今一番伝えたいことは、もし組閣があって、した時に、今与えられているポジションには絶対に立てへんし、立つにはめちゃくちゃ時間がかかるし、相当な努力が必要です。だから、今を当たり前と思って欲しくないし、チャンスを無駄にしないでほしいです。

 でも、これは亜柚香だけじゃなくて、チームS一人一人そしてちかこも自覚を持たないとダメです。

 亜柚香は今自分が思っている以上にもっと頑張らないとダメだよ。でもね、焦り過ぎないでほしいです。焦ってしまうと周りが見えなくなっちゃったり、ファンの人も不安になってしまうからです。亜柚香は亜柚香のペースで進めばいいんだよ。

 そして、亜柚香は可愛いんだから、もっとツインテールをしなさい。
 

 ファンの皆さんはツインテールに弱いんだよ。
 

 『年齢が』とかよく言ってるけど、もっと周りを見てみな。亜柚香より年上の人なんて、やってるんだよ。


 誰とは言いません。

 ツインテールに年齢なんて関係ないよ。ちかはもっと可愛い亜柚香が見たいです。

 

 まだまだ大人っぽくなんてならなくていいし、今しか出せない上村亜柚香をこれからも出していってほしいです。困った時はいつでも頼ってね。

 ちかは卒業された『らりるれりーん』の先輩にこの言葉を言われたことがあります。あの時、ちかがたくさん支えてもらったように、今度はちかが亜柚香のことを支えられるように頑張ります。

 もちろん、亜柚香に負けないようにちかももっともっと頑張ります。

 改めて亜柚香、14歳のお誕生日おめでとう。

 亜柚香のことが大好きな松本慈子より」


 思えば、松本慈子がチームSに加入した時には、最年少メンバーでした。
 そして、手紙の中に出て来る「らりるれりーん」の先輩は、2017年にSKE48を卒業した後藤理沙子さんのことだと思います。
 ごりさ自身もSKE48の3期生の最年少メンバーとして入ってきましたし、チームK2時代には沢山のお姉さんたちの仲で活動していました。加藤智子さんや秦佐和子さんといった先輩たちの中で、沢山の言葉をもらって沢山の気づきがあったのではないか、と思います。
 本線から少しそれますが、ごりさが名言をブログのタイトルなどに様々な言葉を書き残していますが、最初は背伸びしたい年頃なのかな、と思っていましたが、加入した頃から学校とは違う社会の中に身を置いて、年上の人達と触れ合ってきたからこそ、見えてきた見識なのかな、と最近は思っています。きっと、彼女もお姉さんたちから、色々な言葉をもらって、それを同じように年少のメンバーとして入ってきた慈子にも伝えておきたいと思ったのではないでしょうか。

 そして、慈子も成長していきながら、後輩が出来、かつての年少組だった自分と上村亜柚香を重ね合わせたのかも知れません。
 彼女が伝えてくれた言葉は、その後の上村亜柚香のイベントや公演での写真を見ていると、きちんと伝わっていたのではないか、と思います。
 やがて、彼女はチームSの副リーダーとなります。
 2020年2月4日に行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。

「あゆかぴょんへ
 

 16歳のお誕生日おめでとうございます。

 

 手紙を書きながらこの場面であゆかぴょんが驚いていると想像しています。


 あゆかぴょんファンの皆様、私に手紙を任せていただき、ありがとうございます。

 お話をいただいた時はただ不安でいっぱいで、頭の中が真っ白になってしまいました。


 でも、あゆかぴょんのファンの皆様にも、私とあゆかぴょんの仲を認めてもらえたのだから、立派な文章を書かなければいけないけれど、今の私の気持ちを素直に伝えたいと思います。なので、引き受けさせていただくことに決めました。


 最初のあゆかぴょんの印象は、ほとんど話したことがなかったけど、笑い方がやかましいと思ってたし、話しかけづらい感が満載で絶対に仲良くなれないと思っていました。


 私がチームSに昇格させてもらって、同い年ってこともあって、いつの日か二人でお出かけしたりできるくらいに仲良くなれてとても嬉しく思っています。


 お出かけしてもいつも笑っていられて、先輩なのに友達みたいな感覚で、いつもめちゃくちゃ楽しいです。また電車でどっか行きましょうね。


 あゆかぴょんは先輩に自分から積極的に甘えたり話しかけるのが凄く上手で、特に写真を撮る時の距離が凄く近いので絶対私には真似できないから凄く羨ましいです。


 そして、私が一番あゆかぴょんに伝えたい感謝の気持ちは、私が参加したTCG静岡のSHOWROOMイベント最終日のことです。

 あゆかぴょんに『最終日の前日、一緒に出て欲しい』ってLINEしました。そしたら「いいよ」ってすぐに返事をくれて、気を紛らわすためにその前に映画に連れて行ってくれたりして、たくさん笑わせてくれましたね。

 長い配信にも関わらず、ずっとそばにいてくれて、何度も何度も励ましてくれたり、頭を撫でてくれましたね。

 残念な結果でしたが、私はあゆかぴょんからとっても大切なことに気づかせてもらいました。それは人のために何かをすること、人の気持ちを考えること、自分のことよりもファンの皆さんのことを考えることです。本当にありがとうございます。


 この気持ちを大切にして、これからも同じチームの仲間として、同じ歳の仲間としてお互いの良いことも悪いことも言える仲になりたいです。


 こんな私だけど遠慮なくガンガン頼ってください。よろしくお願いします。


 最後にあゆかぴょんにとって素敵な1年になりますように。


 あゆかぴょんのことが大好きなチームSの石黒友月より」

 

 加入した頃は、先輩に可愛がられる側だった彼女が、同い年とはいえ、後輩を支える側に回っていますね。
 先輩たちからもらった優しさや厳しさをきっと、後輩たちにも自分なりの味付けで受け継いでいるのではないか、と思っています。
 彼女の言葉が次は、誰に受け継がれてどんな成長を遂げて行くのか。
 ついつい、センターや選抜メンバーの継承の物語に目が行きがちですが、最年少メンバーたちの価値観やドラマもSKE48という大河の中で静かに流れ続けているのではないかと今回思いました。

2021年7月3日土曜日

他者と誠実に向かい合うこと

 さあやの視線


  

 先日、「三島由紀夫対東大全共闘 50年目の真実」というドキュメンタリー映画を観ました。


 こちらは、東大の900番教室で左翼的東大生1000人と右翼的天皇主義者であり文豪の三島由紀夫の議論と13人の当事者の証言を元に、作られた映画です。
 この映画の中でフランス文学者で神戸女学院大学名誉教授である内田樹さんは、「三島由紀夫は一言も相手に対して、困らせてやろうとか、相手を追い詰めてやろうとか論理的な矛盾をついてやろうとか言っていない、誠実に向き合おうとしていた」というところが印象的でした。
 人と人の間に存在する「言葉」が通じ合う関係の中で、次第に立場は違うものの目指すものは同じだったのではないか、と誠実に「言葉」を通してお互いを認め合うプロセスは、本当に勉強になりました。そして、それとは逆に自衛隊の駐屯地で彼が絶望した原因の一つとしては、東大で感じたような「言葉」による通じ合いがなかったからではないか、とこの映画を観ると感じました。
 僕自身も近頃のインターネット空間で広がっている「論破」という文化にうんざりしていて、論理的にきちんと道筋を立てて相手の論を上回る実証をしなくても、論破しているように見せる技術はあります。たとえば「おおまかにはAである」ということの議論をしている時に「Bという例外がある」ということを持ち出しても「おおまかにAである」立論を崩せないのに「B」を提示した方が頭がよく見えることもあります。そもそも論理の厳密性という観点にたった時、これは正しい「論破」なんでしょうか?僕は最近、こういう人をなるべく相手にしないようにしています(たとえそれが近しい人であっても)。むしろ、一緒にテーマについて悩んだり、間違っていても自分なりの考えを提案したりする人達と付き合っていきたいと思っています。


 さて、話を戻しましょう。
 この議論の中で、様々なテーマが飛び交います、個人的には「天皇とは何か?」とか「何故、国と自分を結び付けることに快感を覚える人がいるのか?」とか「何故、三島作品は一瞬の快楽を目指している人物が多いのか?」とか、書き出したらきりがないんですが、僕は全体を通じて、「誠実なコミュニケーションを通せば、全く違う他者との理解も成り立つ」ということでした。
 このドキュメンタリー映画の中では異なる立場の人間同士での理解でしたが、じゃあ、人間以外ではどうでしょう?

 SKE48の9期生、入内嶋涼がその答えを教えてくれます。
 彼女は、動物愛に溢れているメンバーで、飼っている猫ちゃんたちの可愛い写真も素敵なんですが、出会いまでのエピソードも素敵でしてね。詳しくはこちらのブログをチェック!

✓ 入内嶋 涼 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 「ハッピーさん」の名前の由来が素敵ですよね。ハッピーさんのお世話についてのことや、自分で働いたお金で生き物を飼うというのは、とても読み応えがあります。誠実に向き合うことで、相手も少しずつ分かってくれるというのも良いですね。
 さらに、彼女が飼っているカブトムシに関するブログとても素晴らしいです。

✓ 入内嶋 涼 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 猫と比べると、カブトムシの方が意志の疎通が難しそうですよね。
 それでも小学4年生の少女は、じっと見つめて自分とは全く違う時間軸を過ごす虫とのコミュニケーションをとっていきます。最初はうっかりストレスを感じるようなコミュニケーションを取る不器用さも良くて、そこから徐々に愛情を注いでいき、命の儚さや尊さを知って行くという体験が本当に素晴らしいです。

 さらに、彼女のカブトムシの幼虫ちゃんたちに関するブログも素晴らしいです。

✓ 入内嶋 涼 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 最初に出て来る写真を見したら、うわっ、と思われるかもしません。しかし、さあやが、幼虫ちゃんたちを世話する過程や、穴に潜った幼虫ちゃんたちへかける声を読んだ上で、もう一度同じ写真を見ると小さな価値転倒が起きた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。その背景には彼女の生き物と誠実に向き合う姿勢だと思います。人間と違う時間軸で生きるカブト虫たちは、きっと彼女に違う時間軸や価値観の持ち方を教えてくれるでしょう。それは、ひょっとすると、メンバーやファンの皆さんとのコミュニケ―ションにも反映されているのかも知れません。

 Twitterでたまに出て来る同居人たちに関するツイートも毎回、見る度に心がほっこりします。


 


 最後のツイートが印象的で、多分、虫によっては「キャー(怖い無理)」という見た目の種類の虫もいるでしょう。僕なんかも見た目が苦手な虫が居ます。でも、「キャー(可愛い)」と思える視点を持っている彼女の本質を見る素晴らしさは決して「カワイクナイ」ことはないと思います。むしろ、さあやのブログを読むことで、カブト虫の幼虫に対する価値を少し変えてもらえました。彼女のその視点はとても大切な視点だと思います。「怖い無理」ではそこで終わりの気がしてしまいます。
 そんな風に生き物の見方が変わる人が少しずつ増えて行くと面白いな、と思います。幸い、彼女の生き物好きが少しずつSKE48の外にいる人達にも知られるようになってきました。


 人間とは違う「他者」と触れ合うことで、普段の僕らの暮らしとは違うルールや時間軸を知る。それは、毎日を少しだけ豊かにしてくれるのではないか、と僕は思っています。
 もうすぐ、梅雨が明けます。
 カブト虫たちが夏の夜に元気に羽化して飛び立ち始める頃です。
  さあやもこの夏、さらに羽ばたいて欲しいなと思います。
 カブト虫たちの居る樹液の匂いがする森を思い出しながら、この記事を終えます。