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2020年12月11日金曜日

衣装から伝わる世界観と可能性

 SKE48像の構築と可能性


 2019年から2020年にかけて「D2C」がアパレル業界を中心に広がり始めました。「Direct to consumer」の略で自社で企画や生産をした商品を仲介業者や流通業者を通さずに自社のECサイトで直接、お客さんに販売するビジネスモデルですね。
 このビジネスモデルは、ECサイトにおいて、いかに商品やブランドの世界観を伝えるのか、この商品に関するドラマが語れるかが勝負の分かれ目になってきます(他にも店舗なで営業できたり、陳列などの自由度が高いとか、他にも面白い要素が沢山あるんですけどね)。それを考えると、ユニクロが2018年にファッション雑誌の「POPEYE」の編集長の木下孝浩さんを執行役員にとして引き抜いたのは先見の明がありすぎだな、と思います。
 ちなみに僕はフレッドペリーのカタログが好きで「今季はこういうコンセプトで行くからな!ルーツはこれだ!」と出した後に、各界の著名人が「わしはこう着ておる」というインタビューが載っているので、ブランドの世界観を外と中から楽しめます(近頃のは観られてないので、変更があったら申し訳ないです)。

 「モノ」からブランドの世界観が伝わってくるというのは、なかなか面白いと思うんですが、これってハイコンテクストの状態がないと厳しいと思うんですね。
 リテラシーが必要なものが沢山あります。
 たとえば、若い頃の僕は、フレッドペリーで「何故ポロシャツをこんなに出すんだ。何故、テニス用品みたいなモチーフが混ざるんだ」という疑問はカタログを読むまで分かりませんでした。
 だから、ECサイトでは一つ一つの商品の説明が長いのか、とか考えさせられましてね。日本でいうと、これが一番成功しているのは、糸井重里さんが運営している「ほぼ日」のような気もします(無職には少し高いぜ!)。

 コロナ禍のおかげで「モノ」に関する「世界観」について、少し立ち止まって考えたりじっくりと眺めたりする時間が、僕らには出来たのかも知れません。
 ただ、さっきも書きましたが、全部が全部、自分で気づけるとは限らないので、ファッションブランドにおけるカタログのようなものが必要になる時があります。
 

 今回は、「SKE48 衣装図鑑 全力制服」を読みながらSKE48の衣装における世界観と、そこから見えてくるものについて考えていきたいと思います。
 ただし、僕自身が服を考えていく上での言葉を持ち合わせていないので、まずは、2つの要素に切り分けさせてください。端と端を決めるということですね。

「静かさ」と「賑やかさ」。

 この要素で分けてみたいと思います。
 「なんだ、コイツ。いきなり主観が反映される言葉で語ってきたな」と思われるかもしれませんが、どうか読まれている皆さんの中でしっくり来る言葉に変換して読んでください。たとえば、「静かさ」を「清楚さ」とかに変えると、別の切り口も見えてくるかもしれません。

 それでは早速、見ていきましょう!
 レッツゴウ!(スカイライダーのOP風)





 まずは、シングルを見てみましょう。
 1stシングルの「強き者よ」の衣装には、「静かさ、清楚さ」と48グループの制服における「クラシック」感があります。まだ、ダンス重視のグループというコンセプトが定まる前だったので、「AKB48の妹分」ということから、少しおとなしい感じがしますね。

 ここから2stシングルの「青空片想い」では、アクティブな方向に今度は行っていますね。曲の振り付け自体もより動的なものになっています。どうでも良い僕の情報ですが、初めてダウンロードしたのが、この曲で、当時は珠理奈と玲奈は分かっていたものの、まだSKE48にハマる前で、木下有希子を見て、「うわっ、めちゃくちゃ綺麗な子いるじゃん」と驚いていたものです。

 3stシングルの「ごめんねSUMMER」では、「青空片想い」と比べると、「静かな」デザインになるものの、動きやすいコットン素材を使っており、アクティブな要素も残しています。日常生活の中にあっても違和感がない衣装もあって、個人的には珠理奈の衣装がお気に入りです。他のメンバーのパステルカラーも美しいです。


 4stシングルの「1!2!3!4!ヨロシク!」は、メンバー人気も高い衣装だそうで、松井玲奈ひょんもお気に入りだったそうです。3stシングルと比較すると、より動的な方向に衣装のコンセプトが変わっていますね。この頃は、シングルごとに衣装のコンセプトを動かしながら、少しずつSKE48の世界観を確立していった途中だったのかも知れません。1stシングルとは違う制服のアプローチでもありますね。動いた時にふわりと広がるスカートも動的なイマージを助けます。

 5stシングルの「バンザイVenus」は4stと比較すると、より明るい色使いで「バンザイ」の振りができるように少し余裕のある仕上がりになっています。ちなみに、コンセプトが「王子様とお姫様」というのは、初めて知りました。このジャケットを脱いだ時のネクタイと青いシャツの珠理奈の王子様感は確かに!

 6stシングルのパレオはエメラルドは、1stの「強き者よ」とは違った制服のアプローチで、ショートベストの組み合わせがカッコいいんですよね。MVの中でメンバーたちが巻くパレオの色味も本当に綺麗で、色使いが素敵な衣装の一つです。そして、紅白に出場した時の衣装は、選抜メンバーの海をイメージしたブルーのグラデーションが本当に素敵でしたね。最後のハンカチをするための仕掛けもあり、こちらもSKE48のアクティブなイメージにぴったりな衣装になっています。

 7stシングルの「オキドキ!」の衣装は、もうとにかく「賑やか」でしてね。料理でいえば、多国籍料理のように見えるんですが、初期のデザインを見てみると、1stの「強き者よ」のようなシンプルな制服にそれぞれが布やワッペンを重ね合わせて作ったという設定だったんですね。ちなみにこのページの「髑髏のデザインをつけて無敵感を演出」という一文が、この本の表現で一番好きです。ちなみに、MVの制服の方は、ベロア地で次の「片想いFinally」の匂いも少ししますね。

 8stシングルの「片想いFinally」では、えんじ色をベースにしたジャケットに思い思いのファー飾りが付いているんですが、このファーに「嫉妬心」や「劣等感」のメタファーだったとは。この制服な上品な感じが好きな方も多いと思うんですが、この衣装であの激しいダンスを踊るからこそ、外面の静けさと内面の爆発がリンクするのかも知れません。

 9stシングルの「アイシテラブル」は、カラフルでパステルカラーが素敵な明るいデザインです。実は靴にも衣装と同じヒラヒラが付いていたのは、知りませんでした。一人一人の肩のあたりについた花の違いも見ていくと面白いですね。全然、関係ないですが、ガイシ2012で初披露したのに、きちんと対応していた現場の方々の凄さですよ。

 10stシングルの「キスだって左利き」では、再び制服へのアプローチをするんですが、今度はワンピースのブルーのデニム地風の制服です。昔の女学校をイメージした要素もあるそうですが、これがMVの世界観とマッチしていて、素敵なんですよね。「静けさ」と「クラシック」方向の衣装だと思います。この辺りのシングルでも曲調にあわせて、動と静のイメージを交互に試していた感じがしますね。
 コンサート用の赤いチェック衣装もカッコいいんですが、僕は制服バージョンが好みです。

 11stシングル「チョコの奴隷」では、SKE48劇場でのMV撮影を意識してメタリックな生地とスパンコールを合わせ、光の乱反射を生むという「そういう使い方もあるのか!」とただきらびやかなだけではない、様々な遊び心が混じった衣装です。
 個人的には、歌番組で披露する際の襟の板チョコの柄にメンバーの名前があったとは!もし、握手会で着られることがあれば、誰の衣装か見てみるのも楽しいかもですよ。

 12stシングルの「美しい稲妻」は、透け感のあるワンピースやジレの下に水着という衣装なんですが、模様が全てオリエンタルだったり、エスニックだったりの要素が混じっています。世界観という意味では、かなり曲の世界観を拡張した衣装だと思います。全然、関係ないですけど、これガンダム系のロボットアニメの主題歌になりそうな気がしませんか?
 日産スタジアムでの衣装もスカートのどこかに金のラインが入っていて、遠くからも目立ちますし、近くから見ても楽しめる衣装になっています。


 13stシングルの「賛成カワイイ!」は、カラフルなタイダイ柄で、先ほどの「美しい稲妻」の南洋的な世界観とは違う、MV撮影時のタイのパタヤでも映える賑やかな色になっています。ちなみに、メンバーがジャケットを脱いで全国握手会に出ていた時に、ジャケットの下の袖にまでちゃんと柄が入ってるんだなあ、と感心したものです。珠理奈の着てた衣装のネクタイが未だに夏場は欲しくなります。
 今、思うと、ガイシ2013を挟んで、動的なSKE48のイメージに様々なモチーフを重ねて思考錯誤していた過程なのかも知れません。


 14stシングル「未来とは?」は、「未来」へはばたくという意味で蝶のモチーフがついていて、淡い色使いと軽い素材が特徴的です。蝶の羽にSKE48の文字が隠されているというのは、言われるまで知りませんでした。名古屋ドームで初めて見た衣装の美しさは、それまでが賑やかなモチーフが続いていたので、久しぶりのシンプルなデザインに何故か「おっ、王道に戻ってきたか」という感想がありました。でも、今改めてみると、様々なしかけがあったんですね。山田みずほさんが似合ってましたね。

 15stシングル「不器用太陽」のMVは、私服中心なので、ギンガム衣装と水色チェック衣装、そして、コルセット衣装、更に紅白衣装と様々なバージョンがあるんですが、僕はコルセットバージョンのクラシックと上品さが融合した感じが好きでしてね。SKE48における上品さのイメージが一つ更新された気がします。

 16stシングル「12月のカンガルー」は、コートとマフラーという珍しい冬をイメージさせる衣装です。ポイントはじゅりれなとは違うコンセプトを出せるかだったそうで。カラフルでポップなイメージになっています。衣装部の方の「ダブル松井だったらクールなトレンチコートになっていたのでは?」というコメントも気になりますね。そのバージョンも見たかった!メンバー人気も高い明るくてかわいい感じの衣装です。

 17stシングル「コケティッシュ渋滞中」では、グレンチェックのシンプルな制服なんですが、襟やポケット、袖口もそうなんですが、ネクタイ付近のワッペン・スカーフが遊び心全開です。Mステ出演時の衣装も、シンプルですが、上品な色使いで好きです。この頃は、新しいSKE48で四季を作っていくのかな、と考えていました。


 18stシングル「前のめり」は、松井玲奈卒業シングルで、「かすみ草」がグラデーションになって衣装の中に散りばめられていますが、個人的に大好きな花柄です。特に襟元の花柄が短いスペースにグラデーションが散りばめられていて素敵なんですよ。MVの制服は、みんなお揃いなんですが、沖縄の海とこの制服姿のダブル松井が良いんですよね。未だにこの衣装を見ると、珠理奈の背中を思い出します。


 19stシングル「チキンLINE」は松井玲奈がいなくなったSKE48で、どんな新しい世界観を生み出していくのか、と思っていたんですが、近未来的なデザインの黒地にシルバーのラインやメッセージが入った衣装になっています。今までのSKE48だと、「GALAXY of DREAMS」のハード路線に近未来的な要素を加えた感じが素敵です。ちょっと浮世離れした感じのこういう衣装も、たまには見てみたいですね。


 20stシングル「金の愛、銀の愛」では、「チキンLINE」の黒地を残しつつ、シックな感じの仕上がりになっています。曲の荘厳な感じと喪服のような衣装が見事に世界観を作り出していて、個人的に好きな衣装の一つです。
 この頃のSKE48に関して「暗黒時代」という言われ方もしますが、選択肢を増やしていた頃だったのでは、と感じています。ただ、決定的な何かがまだ見つかっていない感じでしょうか?

 21stシングル「意外にマンゴー」は、爽やかな白地に青のラインが爽やかな色使いが印象的です。長めのリボンが特徴的で、「静かさ」や「賑やかさ」とは違う「爽やかさ」を感じさせる衣装で、曲を含めて新しいSKE48の世界観を生み出していると感じます。茅野しのぶさんがデザインに加わったのも大きいかも知れません。小畑優奈の彼女なりの解釈でもあると思います。
 MVでは、白と黄色の水着が出てきますが、「パレオはエメラルド」や「美しい稲妻」ので登場した水着と比べて、よりシンプルな感じがします。
 これから新しいSKE48が始まると感じさせてくれた衣装でした。

 22stシングル「無意識の色」は、「オレンジ×ブルー×スポーティー」からスタートしたデザインで、SSAでのコンサートで多くのメンバーが着ていた時もカッコ良かったですね。
 そして、MVで登場するワッペンを付けた白衣装も斬新でして、「自分で歴史を纏うのか!」と衝撃を受けました。このシングルの衣装ではSKE48における新しい「カッコ良さ」を拡張したのではと思っています。

 23stシングル「いきなりパンチライン」では、名古屋ドームの開票前コンサートで観た時は、す、すげえ衣装が来たと思ったもんです。1色で単調にならないための工夫がカフスや肩章など、様々な工夫があったと知りました。
 ちなみに、このジャケットを脱いだ時の衣装がまたカッコいいんですよ。ネクタイした珠理奈やだーすーもカッコいいんですよね。
 「賑やか」なアプローチの極致ではないかと思います。


 24thシングル「Stand by you」は歌番組やMVでは、青地にチェックのバージョンと白とオレンジを基調にしたバージョンが二つあるんですが、青地のワンピースの方は、坂道的な上品さをSKE48で試してみたように僕は感じています。白とオレンジの方は初見で「科学特捜隊っぽいな」という印象だったんですが、MVの世界観と合っていて好きです。
 上品さと動性の両方を持ったイメージだと僕は思っています。

 25thシングル「FRUSTRATION」では、センターが古畑奈和に変わり、衣装もファッションブランド「LAGUA GEM」さんとのコラボになっています。これまでの衣装のイメージと比べるとアクティブなものになっており、「動的なイメージ」を古畑奈和というフィルターを通すとこうなるという、SKE48というグループに新しい色が加わったと僕は思っています。MVでの衣装も珠理奈のサイリウムカラーの服と惣田さんの服が素敵でした。


 26thシングル「ソーユートコあるよね?」では、黄色とベージュを基調にしたチェックの衣装が特徴的です。ロングスカートには、それぞれ別の位置に文字が入っていて、「Stand by you」をアップデートした感じで、須田亜香里という大人センターに似合う落ち着いた上品さと遊び心の融合が見られます。


 はあはあ、ちょっと衣装によって、SKE48の世界観って変わってきて面白いよね、みたいなゆるい記事を書こうと思ったら、シングル全部について、書いてしまっていましたよ。そりゃ、日も暮れるって話ですよ、お侍さん。
 さて、ここまで衣装の流れを観てきて感じるのは、イメージを掴もうとしていた前期、新しい価値観を試そうとしていた中期、そして、様々なセンターでイメージをアップデートしていった後期。
 その中で今のSKE48の世界観を衣装を通して、僕なりに語るとするならば、「上品でアグレッシブなグループ」でしょうか。
 次のセンターは、松井珠理奈なので、上記のイメージは変わらないと思いますが、次のセンターによって、また少し世界観が変わるかも知れません。その時、どんなイメージが重なるのかが楽しみです。


 で、ここまでが前半です。
 タイトルの「歴史」の方ですね。
 ここからは、「可能性」についてです。
 

 哲学者のスピノザが「エチカ」の第4部において組み合わせとしての善悪について語ります。
 「音楽」を「憂鬱の人」に組み合わせると、その人は力が湧いてくるそうです。
 それに対して、「悲傷の人」に組み合わせると邪魔な音になるそうです。「音楽」自体は、そこにあるだけで、善でも悪でもないのですが、何と組み合わせるかによって変わってくる。更に「善」の組み合わせは「活動力を増幅させる」と語っています。「喜びをもたらす組み合わせを探す」ということを語っています。

 じゃあ、SKE48の衣装でも「喜びをもたらす組み合わせ」があるはず!と思いましてね。

 それぞれのシングルの要素を観てきた今、どんな衣装が自分の推しメンや気になるメンバーと相性が良いか考えてみようじゃあ、ないかということですよ。

 ひとまず、僕は10期生の五十嵐早香推しなので、彼女に似合いそうな衣装は何かなあ、と考えてみたんですが、「Darkness」や「いきなりパンチライン」とかどうでしょう?同じ路線で、竹内ななみさんとかも似合いそうな気がしています。

 また、反則技かも知れませんが、秦佐和子さんの「Stand by you」衣装みたくないですか? 菅なな子の「無意識の色」とか、観たくないですか? 柴田阿弥の…。いかん、思い出に飲み込まれそうになったぜ。

 今回はシングルの表題曲中心にSKE48の世界観と、衣装とメンバーの組み合わせについて書いていきましたが、皆さんは衣装からどんな世界観や組み合わせを感じたでしょう?